生きがいについて

著者 :
  • みすず書房
4.25
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本棚登録 : 193
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622006312

感想・レビュー・書評

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  • 生きがいについてここまで深く考えられた本にあったことがなかった。長くて最後まで読めなかったがもう一度じっくり最後まで読み返したい。

  • 精神科医であり、愛生園でハンセン病患者たちに献身的な介護をおこなってきた著者が、そこでの経験などを踏まえつつ、人間の「生きがい」についての考えを述べた本です。

    恐ろしい病に冒されて絶望に陥った人びとのなかに、新しい生きがいを見つけて充実した日々を送っているひとが存在していることを知った著者の感動が伝わってきます。

    藤井淑禎が『純愛の精神史』(新潮選書)の中で、昭和30年代を「人生論の季節」と形容し、武者小路実篤や亀井勝一郎、加藤諦三らの人生論が広く読まれた時代だったと論じていますが、本書もその流れに位置づけることができるように思います。藤井の本で紹介されている『愛と死をみつめて』の著者の大島みち子も、愛生園のような施設で働きたいという希望を語っており、そうした時代精神のなかで本書が受容されたことにも興味を覚えました。

  • 生きがいとは何なのか、どのように奪われ、獲得されるのか、精神への影響はどうか、ということについてハンセン病の療養所での調査や様々な文献をもとに考察する。柔らかく、読みやすい文章でありながら、経験に基づいた深い洞察による奥行きがあり、読み進めるにしたがって心が澄んでいく。引用される数々の詩や文にうたわれる生への叫びに共鳴するようになる。
    人間が生まれてくることに理由はあれど意味はないけれど、人生において意義が見つけ出せなければその生は死んでしまう。生物として、個々の人生に意義なんて無くたっていいはずなのに、とても不思議だ。いままで「生きがい」というのはあまりピンとこない言葉だったが、「夜と霧」や「自由意志の向こう側」などを経て、やっと私も焦点が合ってきた感じがする。

    今までの生の基盤が根こそぎ取り去られることで、闇の中で生きがいという問題に否応なしに対峙させられる人々のどす黒い苦しみ、そしてそこから立ち上がってくる光の眩しさ、持続する強さというのが非常に面白い(語弊がある)し、すごく理解できてすとんと心に落ちた。闇、穴、光、稲妻、という異なる文化圏でも共通するモチーフというのも興味深い。
    宗教について書かれたくだりは特に納得できるもので、宗教的な要素が日常においても普遍性を持つことの指摘、「非合理的な気休めと慰め」に終始するものではなく(それだけでも苦悩する人々には多大な価値があるとも認めつつも)、「『意味への欲求』という人間の心の根づよい渇望にこたえるもの」として、人格と世界観の骨組みとなる積極的な意義を認めているのは感銘を受けてしまった。

    「死刑囚にも、レプラのひとにも、世のなかからはじき出されたひとにも、平等にひらかれているよろこび。それは人間の生命そのもの、人格そのものから湧きでるものではなかったか。一個の人間として生きとし生けるものと心をかよわせるよろこび。ものの本質をさぐり、考え、学び、理解するよろこび。自然界の、かぎりなくゆたかな形や色や音をこまかく味わいとるよろこび。みずからの生命をそそぎ出して新しい形やイメージをつくり出すよろこび。……」

    生への意欲が完全に失われ、見つからず、暗闇に沈む人の中から浮かび上がるこうした衝動の美しさには目を見張るものがある。内省的な人のエッセイが好きなのだが、それはこうした繊細でありつつ力強い感性に触れたいからだと思う。
    この本もまた読むと思う。

  • 朝の礼拝で紹介された本です。

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • もうひとつ幸福感と違うところは、生きがい感のほうが自我の中心にせまってくる 愛に生きる人は、相手に感謝されようと、相手の生のために自分が必要とされていることを感じるときに生きているはりあいを強く感じる 人間はみな自分の生きていることに意味や価値を感じたい欲求があるのだ 生きがいを失った人間が死にたいと思うとき、一番邪魔に感じるのは自己の肉体であった 日本の軍隊のために犠牲になったと思えば死にきれないが、日本国民全体の罪と非難とを一身に浴びて死ぬと思えば、腹も立たない

  • 難しかった。ためになった部分もあるが、概ね理解するのに難儀した。

  • ★2013SIST読書マラソン推薦図書★ 図書館長推薦
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  • 生きがいについての本。

    新型うつを予見しているかの先見性。
    神秘体験、広義の意味での宗教に対する洞察と理解は、非常に好感が持てた。

    良本。

  • 三葛館医学 490.4||KA||1

    保健看護学部 志波充先生
    (ちょっとネタが古いのですが)新入生の皆さんが、これからの進み行きのなかで何を生きがいとしたら良いかと考えたときに、色んな人の色んな生きがいについて書かれていて、ためになる本だと思いま~す。著者は美智子皇后が心労から体調をくずされた時カウンセリングを担当された人です。

    保健看護学部 水主千鶴子先生
    著者は、学生時代に多摩全生園を訪れて、ハンセン病に苦しむ人びとの存在を知った。そして医師となることを決意し、生涯にわたり精神科医としてハンセン病の人びとを支え続けた。生きる目的や意味、価値を考え始めたあなたにぜひ読んで欲しい書物である。

    和医大OPAC →http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=28551

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著者プロフィール

1914-1979。岡山に生まれる。1935年津田英学塾卒業。1938年渡米、1940年からコロンビア大学医学進学課程で学ぶ。1941年東京女子医学専門学校(現・東京女子医科大学)入学。1943年夏、長島愛生園で診療実習等を行う。1944年東京女子医専卒業。東京大学精神科医局入局。1952年大阪大学医学部神経科入局。1957-72年長島愛生園精神科勤務(1965-1967年精神科医長)。1960-64年神戸女学院大学教授。1963-76年津田塾大学教授。医学博士。1979年10月22日没。

「2020年 『ある作家の日記 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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