モンテーニュエセー抄 (大人の本棚)

  • みすず書房
3.45
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本棚登録 : 133
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622048428

作品紹介・あらすじ

モンテーニュは、自分をはじめて見つめた人、人間が生きるための元気を鼓舞してくれる人である。「エッセイ」というジャンルの水源たる古典を、読みやすい新訳で。

感想・レビュー・書評

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  • ・運命がいかにいい顔をしてみせてくれても、人生の最後の日がすぎないうちは、自分は幸福だったなどといってはなりませぬ。人間の身におこることがらは不確かで、うつろいやすいから、ほんのわずかなきっかけで、正反対の状態にがらりと変わってしまうものなのです
    ・あなたが臆病で残酷なのか、あるいは忠実で献身的なのかを知っているのは、あなたしかいない。ほかの人たちに、あなたは見えない。あやふやな推測によって、あなたのことをおしはかるだけで、あなたの本性ではなく、技巧を見ているだけにすぎないのだ。だから、彼らの判断など気にせずに、自分の判断にこだわればいい
    ・自分を高く評価することも、低く見ることも、たいていは、同じ傲慢さに由来する
    ・ところで法律が信用を維持しているのは、それが正しいからではなく、ひたすら法律であることによる。それこそ法律というのは権威の不思議な根拠なのであって、ほかになんの根拠もない。そのことが法律にも有利に働く。法律というものは、しばしば愚者の手で作られる。たいていは、平等を憎み、公正を欠くような人々によって作られる。とにかく、からっぽで、無節操な人間によって作られるのだ
    ・「彼は人生を無為にすごした」とか、「今日はなにもしなかった」などというではないか。とんでもないいいぐさだ。あなたは生きてきたではないか。それこそが、あなたの仕事の基本であるばかりか、もっとも輝かしい仕事なのに
    ・人間にとっての名誉ある傑作とは、適切な生き方をすることにほかならない。統治すること、蓄財すること、家などを建てることといった、それ以外のすべては、せいぜいが、ちっぽけな付属物とか添え物にすぎないのである
    ・のんびりしていて、気さくであることは、強く、寛大な心の持ち主にとっては、きわめて名誉でもあるし、よりふさわしいことであるように思われる

  • 生きているうちにいつか読まなければならない本というのが存在する。
    というのは、一種の強迫観念なのだが、そういう本の一つとして、モンテーニュの「エセー」がある。
    というわけで、気になっていたのだが、全訳は6冊で、これを読むのは、ちょっとした決心がいる。

    で、最近、なんとなくアマゾンを検索していて、この抄訳版にであった。
    全訳版にトライする前のお試しとして、読んでみることに。

    うーん、面白いことは面白いんだけど、話しがどんどんずれて行く感じで、まさに「徒然なるままに書いてました」的で、今ひとつ、ピンと来ない。

    多分、このユルさ、ずれを楽しむべき本なんだろうな。きっと、若いときに読んでいても、全然、分からなかったと思う。

    で、今、読んでも「それで結局なんなの?」と思ってしまう自分がいる。
    と同時に、より気になってきていて、そのふわっとした引力圏に引込まれそうな感じも。

    そのうち、ヒマになったら、全訳版を読みます。(いつのことやら)

  • 『エセー』は、16世紀のフランスを代表する哲学者・モラリストであるモンテーニュが、37歳で法官を辞任した後、農園経営の傍ら執筆をはじめ、1580年に初版が刊行された作品である。モンテーニュ自身が「わたしのとりとめのない夢想の結果」と語る本作品は、体系的な哲学書ではなく、自分自身の経験やプラトン、アリストテレス、セネカ、プルタルコスなどの古典からの引用により、現実の人間の生き方が綴られており、随筆(エッセイ)という作品形式を生み出すとともに、各国に影響を与えたという。プライバシーの観念などほとんど存在しなかった16世紀において、書斎での読書と思索に身を捧げたモンテーニュは、「知的生活」者の先駆けとも言える。
    本書は、107の随筆の中から、編訳者が11章を選んだものである。
    「精神の価値とは、高みにのぼることではなく、秩序正しく進んでいくことにある。魂の偉大さは、高い場所ではなしに、むしろ月並みさのなかで発揮される」
    「わたしがいやいや受け入れたことは、なんでも害になるが、飢えたようにして、喜んですることは、どんなことであれ、害にはならない。自分に多くの喜びを与えてくれたような行為からは、一度も害を受けたことはないのだ」
    「避けられないことは、それを耐えしのぶことを学ぶ必要がある。対立物によって世界の調和が構成されているのと同じように、われわれの人生は、耳にやさしい音や耳ざわりな音、高い音や低い音、やわらかい音や荘重な音からできているのだ。片方の音だけが好きな音楽家は、どういうつもりなのか。音楽家は、それらをともに用いて、組み合わせることを知らねばならない。われわれもまた、善と悪という、ともに人生の実質をなすものに関して、同様の義務がある。人間存在は、両者を混ぜ合わせることなしに成立しないのだし、片方の部類は、もう片方におとらず、必要なものにちがいない」
    「人間にとっての名誉ある傑作とは、適切な生き方をすることにほかならない。統治すること、蓄財すること、家などを建てることといった、それ以外のすべては、せいぜいが、ちっぽけな付属物とか添え物にすぎないのである」等
    モンテーニュの思索のエッセンスが味わえる一冊。
    (2010年2月了)

  • 「わたしは踊るときは踊るし、眠るときは眠るのだ。」

  • とにかく読みやすい。くだけた訳で、こんなにすらすら読めていいのかしらと思うほどである。実は前から一度は読んでみたいと思っていたのだが、名にしおうミシェル・ド・モンテーニュ、ちょっと尻込みしていたところもある。何しろ、堀田善衛が『ミシェル 城館の人』で書いていたモンテーニュは、ナントの勅令で知られる後のアンリ4世を自分の城館に招いて投宿させるほどの大物でありながら、その公人としての役目もほどほどに、早々と城館の一室に隠遁し、せっせと運び入れた古典籍を読むことに余生の楽しみを見出した、いわば憧れの人でもあった。

    「抄本」であることも、とっつきやすさの原因のひとつだろう。長短取り混ぜて12編、行間を比較的広くとったゆったりした版組み、訳者による改行や一行あけの工夫も「大人の本棚」と銘打ったこのシリーズならではである。それにしても、この本を通じて見知ったモンテーニュその人の肩肘張らぬ気さくな人となりはどうだ。何もかくすことなく胸襟を開いて、まるで十年来の知己のように自室に招き入れ、自分の思うこと考えることを語り尽くす。しかも難しいことは何ひとつ言わないで。

    「エッセイ」の語源となったのが『エセー』である。読んだ本の欄外に、覚え書きのように自分の考えを書き入れているうちに、そちらが本編となった、いわば自分の考えを試す「試論」であると聞かされていたから、もっと堅苦しいものを想像していたが、食べることから排泄すること、性に関することまで、実におおらかに開けっぴろげに語るそのあけすけさ。歴史家リュシアン・フェーブルは、王から庶民に至るまで16世紀人はプライバシーなど持たない「吹きっさらしの人間」だと言ったといわれるが、この風通しのよさは半端でない。

    『エセー』の愛読者であったパスカルでさえ「モンテーニュの欠陥は大きい。みだらなことば。(略)彼はその著書全体を通じて、だらしなくふんわりと死ぬことばかり考えている」と書いているそうだが、この自然な放恣さが、この本の魅力である。功成り名遂げた人物だから、当然といえば当然なのだが、徹底的に自分を材料にしつつ、あるがままの自分を肯定し、自分の身の丈にあった生き方を通すことが、けっきょく生老病死のいずれに対処するにしてもいちばん適ったことなのだという考え方に至るというのは並大抵の人間のできることではない。

    せちがらい世の中である。俗事を嫌って書斎にこもり、本ばかり読んで暮らしていたとしても、書き手も読み手も時代から自由でいることはできない。時代や世相というものはその紙背を透して入り込んできて、読む者の息を苦しくさせる。ときには、開けっぴろげな時代精神に触れ、風通しのよい空気を胸一杯深呼吸してみるのも悪くない。モンテーニュの『エセー』は、どんな時代にあっても生きること、そして死ぬことについての対処法を教えてくれる妙薬のような書物である。モンテーニュの言葉をみごとなまでに平易な現代日本語に移し替えた宮下志朗の訳業に感謝したい。

  • 171ページ
     想像力をに手を貸して、うまくけしかけ、だますことも必要である。
      ◆想像力をに→想像力に

  • [ 内容 ]
    モンテーニュは、自分をはじめて見つめた人、人間が生きるための元気を鼓舞してくれる人である。
    「エッセイ」というジャンルの水源たる古典を、読みやすい新訳で。

    [ 目次 ]
    読者に
    悲しみについて
    われわれの幸福は、死後でなければ判断してはならない
    一方の得が、他方の損になる
    みずからの名声は人に分配しないこと
    匂いについて
    年齢について
    さまざまの書物について
    われわれはなにも純粋には味わわない
    なにごとにも季節がある
    後悔について
    経験について

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • フランスの思想家、モンテーニュ(1533-92)のエッセイ集。現代に通じるものが多く共感できる部分が多い。モンテーニュが生粋の運命論者であることや、読書観も私と似ていておもしろかった。ただ、「経験について」の章は長くて途中で飽きた。あのみすず書房で、しかも「大人の本棚」シリーズに分類されているわりにはぐいぐい読める。

  • 今となっては。

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