- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622071655
感想・レビュー・書評
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荒川洋治のエッセイが気に入っているという記憶があって本書を手に取る。読み始めてこのエッセイがその記憶とどう繋がっているのかが解らなくなる。
本書の中で、荒川洋治は具体性の人である。どこに落ち着かせるべきかがあいまいな事柄を、そのままに放っておくことができない。人口や地名が内包しているかも知れない隠された真実が気になる。そんな人であることが強烈に伝わってくる。あれれ、こんな感じのエッセイを書く人だっただろうか。
しばらく読み進めると、荒川洋治がことばについて語り出すのを目にする。ああこれだ。この感じが気に入っていたのだろうな。
時に荒川洋治の評は厳しすぎるように思えるときがある。ことばに対する真剣な態度の為せる業だろうか。厳しすぎるとは思うけれど、同時に、その切り口のまっすぐなことに魅せられずにはいられない。そのことが記憶に残っていたのだ。
しかし、本書で見せる荒川洋治の異常に具体性にごたわる姿勢と、ことばに対する感覚には何のギャップもないのだろうか。そんなことを思いながら読み進める内に一篇のエッセイに辿りつく。曰く「行間はない」。
およそ詩人のことばとも思えない発言のようであるが、目にすることばの奥へ、そこにある文字の持てる意味を通して向かっていく態度に、ああそういうことなのだな、そうであれば何のギャップもないのかも知れないなあ、と思い直す。
ことばを決してあいまいな感覚で弄ばないこと、それが恐らく荒川洋治の真骨頂なのであろう。
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荒川洋治が読書家であることは言を俟たないが、同時にこの書き手はそうした安直な形容を諌めないだろうかとも思う。読んでいると、荒川の美点も欠点もそんな「こだわり」の強さにあることに気付かされるのだ。あえてこの時代に古典を丹念に読み(のわりに多読しているから、この書き手の読書に俄然興味が湧くのだが)、そこから得たものを自分の平たい言葉で実感に忠実に、素直に書きつける。この書き手の読書はしたがって「無節操」「なんでもあり」な懐の深さを良かれ悪しかれ感じさせず、燻し銀の職人芸にも似た美学を匂わせる渋さがあると感じる
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2016/9/29
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2010.2.22~挫折
2009.11.13 読みたい -
2009/10/17購入