福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと

著者 :
  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (114ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622076445

感想・レビュー・書評

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  • 山本義隆 「福島の原発事故をめぐって」 将来に負の遺産を残さないために脱原発を行うべしの論調。

    著者の主張「原発周辺の住民に対して、原発という未完成技術の発展のために捨石になれという権利は誰にもない」


    著者の主張に同意するが、これまでの原子力政策を否定し、脱原発を実現すると、安全保障や外交面で問題(核について 日本の国際的発言力が低下して 核なき世界が遠のくこと)もありそう。


    原子力問題は 経済産業だけでなく 外交、安保、環境、憲法解釈など、それぞれの意見を知りたい。メディア、選挙、国会で争点化してくれないだろうか。


    これまでの原子力政策
    *原子力技術は 産業利用のみでなく、軍事利用も選択肢
    *どちらを利用するかは政策による
    *核兵器を持つことができなくても、原子力技術を持つことで、潜在的に 核兵器を保有していることになり、核についての国際的な発言力を維持できる



  • ボリュームはあまりないし、内容も悪くはないのだけれど、ちょっと退屈だったかなぁ。期待が大きすぎたかも。

  • 立ち位置がぶっちゃけ曖昧。

  • 原発停止による電力不足が日本経済に与える影響があることは分かっていても、原子力発電に関しては再考すべきだと思います。どんなに安全だと言われても、無害化まで数万年かかる放射性廃棄物の処理すら人間にはできていないのです。

  • 原子力平和利用推進に関する政治的な背景については、やや著者の記述は一面的であるように感じた。

    確かにロケット技術も原子力発電技術も軍事転用することは可能である。しかし、実際には国際関係の中での交渉力を高めるという側面がゼロではなかったにせよ、経済を急速に発展させる必要があった中で、水力・石炭から石油、そして天然ガスとエネルギーミックスを構築していく中に原子力を取り込まないという選択肢は、当時においてはなかったのではないかとも感じる。外交政策とエネルギー政策の相乗りのもとに進めてられてきたのが原子力の平和利用なのではないかと感じた。

    もちろん、このような相乗りによるあいまいな政策決定は、それ自体批判されるべき側面があるし、また、これからのエネルギー政策を考えるときに「原発ゼロ」はあり得ないということではないが。

    一方、科学技術に関する筆者の議論は、さすがに科学史の著作を数多く著されているだけに、非常に感銘を受けた。

    原子力工学が非常に大規模かつ組織的に開発されてきた経緯から、必然的に個々の科学者の関与が限定的になり、そのことが技術全体の進む道を固定化したということが、この技術の安全性、透明性といった部分での課題を大きくした。

    このことは、福島での事故の被害を拡大させてしまった大きな要因であると思う。

    原子力に限らず、ますます大規模化、組織化された科学技術が実社会に不可欠な形で取り込まれている現在において、我々が認識しておくべき事柄であるように感じた。

  • <読んだ日>
    120322

    <概要>
    国内最高峰の頭脳を持つ山本義隆氏の原発に対する見解をまとめた書籍。下記の3つの理由により原発依存社会より脱却すべきという主張。

    1.原発は人類の科学技術史上初めての、「経験則の効かない、100%理論に基づく技術」であり、今後も「想定外の事故」は起こり続けることを前提とせざるを得ない

    2.事故が起こった際の影響を考慮すると原子力技術は「現状では」明らかに「人間に許された限界」を超えた技術

    3.原子力発電は、開発・建設から稼働まで政治・軍・企業を巻き込んだ巨大プロジェクトとしてしか成立できず、それは各種の判断の合理性を奪う


    <感想>
    定性的な議論に終始しているものの、感情論を排し、純粋に「科学技術」と「原発という産業の成り立ち・構造」について議論を進めている点が興味深い。
    特に科学技術の、「経験と理論」及び「人間に許された限界」という視点についてはいろいろと考えさせられて面白い


    <行き先>
    Amazon

  • 原子力と核兵器の関係、とくに核燃料サイクル政策の不自然さへの指摘は、広く共有されるべきだと思う。それにしても、財政赤字の子孫への負担を憂う人々が、万年単位の放射性廃棄物という負の遺産に鈍感な現実は理解に苦しむものがあります。

  • 20120122

  • 間違いなく慧眼である。著者は、長い間政治に関わりそうな問題については頑固に沈黙を守ってきた。それだけに深く考え抜いた結論であると思う。
    しかし、惜しむらくは、こうした本にするには、与えられた情報量があまりに少ないのでは無かろうか。原子力村だって一枚岩と推断できない様々な考え方があるに違いない。もう少し丁寧にそうした部分が拾えたらなあと無い物ねだりをしてみたくなる。
    このタイミングでこのたぐいの本を出すとすれば仕方ないのかもしれないが。

著者プロフィール

山本義隆(やまもと・よしたか)
1941年、大阪府生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程中退。科学史家、駿台予備学校物理科講師。元東大闘争全学共闘会議代表。

「2022年 『演習詳解 力学 [第2版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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