- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622087045
作品紹介・あらすじ
〈人間の欲求や人間が必要とするものはさまざまだ。ある人にとっての救済は、ある人にとっては監獄である。正常性や適応に関しても同じことが言える。現代の心理に、普遍妥当の処方や規範などというものは絶望的なまでに存在しない。存在するのは多種多様な要求を持つ個々の事例だけである〉
フロイトの精神分析、アードラーの個人心理学、のちの認知行動療法の萌芽となる行動主義心理学。ユングが生きた時代、今日まで受け継がれているいくつもの心理学理論と、それに基づく心理療法が生まれた。
さまざまな学派が心のモデルを作ろうと競い合う混沌のなかでも、ユングは治療の個別性を徹底的に重視し、決して他学派の存在を否定することはなかった。心というものが複数の側面、複数のリアリティを持つということを、そして心には複数の接近法が必要であることを、ユングは知っていたのである。
心理療法とは何か。他者の心に近づきたいと切実に願い、それを叶えたとき、〈近づいた者〉の心には何が起きるのか。「現代の心理療法の問題」「心理療法実践の現実」ほか、希少な臨床論9編から追体験する、心理療法家・ユングが見た世界。
感想・レビュー・書評
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すごいな。いろんなことが詰まっている。
ユング派というのを知るために、
ユングの本を一回しっかりと読んでみたかった。
本書が「はじめてのユングだ」という読者向けに、本書を読み勧めるための最低限のガイドして、横山さん大塚さんによる「解題」が最後の方にあり、それがまず素晴らしい。
ユングの当時の時代性。
ユングとフロイト、アドラーとの違い。
「逆転移」「弁証法的過程」についての文章はとてもわかりやすかったし、まさに何が起きていたのかずっと探していた答えをもらったような文章だった。
「解題」をまず読んでから読み始めるのもよいと思う。
ユングでさえも観察から始まったことを知る
患者の行為や言葉に込められた意味を理解することの重要性を、ユングはすでに直感的に理解していた。
言葉から言葉を連想するまでの時間に着目し、なんでこの間が必要だったのかに思いを巡らす。
印象に残ったユングの言葉
・誰もが知るとおり、人は強烈な体験が持つ情動的価値が失われるまで、その体験のことを何度も繰り返し語らずにはいられない、というやむにやまれぬ欲求を感じるものである。
箴言にあるとおり、「心を満たすものは、口から出てくる」のだ。
・「患者」がどの世界からやってきているのか、そしてどの世界で適応していかなければならないのか
・いかなる変化も必ずどこかで始まらなければならない。したがってそれを引き受け、やり抜くことになるのも、一人の個人なのである。変化は一人の個人と共に始まらなければならない。それは私たちの中の誰かのことかもしれないのだ
・自分自身の傷つきの分しか、治療者は治すことができない
もう一回読み直すのは大変だけれど、もう一回じっくり読みたい気もする。それぐらい詰まっている。詳細をみるコメント0件をすべて表示