夕暮の緑の光

著者 :
制作 : 岡崎 武志 
  • みすず書房
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本棚登録 : 39
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622089049

作品紹介・あらすじ

「一番大事なことから書く。それは、野呂邦暢が小説の名手であるとともに、随筆の名手でもあったということだ。……ちょっとした身辺雑記を書く場合でも、ことばを選ぶ厳しさと端正なたたずまいを感じさせる文体に揺るぎはなかった。ある意味では、寛いでいたからこそ、生来の作家としての資質がはっきり出たとも言えるのである」(岡崎武志「解説」)
 1980年5月7日に42歳の若さで急逝した諫早の作家、野呂邦暢。
故郷の水と緑と光を愛し、詩情溢れる、静かな激しさを秘めた文章を紡ぎ続けた。この稀有な作家の魅力を一望する随筆57編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 「端正な文体に秘めた人生への熱い思い」と帯にあったけど、本当に端正で力強い文章で素敵だった。良い本を読んでいると文章と踊っているような気分になるが、この本はしっかりと手を握って、リードされているような心地よい安心感があった。
    古本への愛、故郷への愛。「平明な語りが散文として体をなすには、作者の胸の裡に何か熱いものが蔵されているのでなければ意味がない。『何か熱いもの』とは人生に対する愛情といいかえてもいい。」と書かれているが、まさに愛に裏打ちされた文章は読む側の胸の裡へも呼応して熱をもって響くのだ。
    書かれている長崎や諫早の情景は、見たことがないのににおいと光をともなって頭に浮かんでくる。私の生まれる前の時代、本に封じられたその空気感まで伝わってくるように思うのは愛と文章の力としかいいようがない。すごい。
    「モクセイ地図」、「土との感応」あたりの水や土の話は特に好き。

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著者プロフィール

野呂邦暢(のろ・くにのぶ)
1937年長崎市生まれ。戦時中に諌早市に疎開、長崎被爆のため戦後も同市に住む。長崎県立諫早高校卒業後上京するもほどなく帰郷、1957年陸上自衛隊に入隊。翌年除隊し、諌早に戻り家庭教師をしながら文学をこころざす。1965年「ある男の故郷」が第21回文學界新人賞佳作入選。1974年自衛隊体験をベースにした「草のつるぎ」で第70回芥川賞受賞。1976年、初めての歴史小説「諌早菖蒲日記」発表。1980年に急逝する。著書に『愛についてのデッサン』(ちくま文庫)、『野呂邦暢ミステリ集成』(中公文庫)、『野呂邦暢小説集成』(文遊社)、などがある。

「2021年 『野呂邦暢 古本屋写真集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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