小津安二郎と戦争 新装版

著者 :
  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622089216

作品紹介・あらすじ

「支那の老婆が部隊長のところに来て云ふ〈自分の娘が日本のあなたの部下に姦された〉部隊長〈何か証拠でもあるのか〉老婆 布を差し出す/〈全員集合〉部隊長は一同を集めて布を出し〈この布に見覚えがあるか〉〈ありません〉〈次〉〈ありません〉一人づゝ聞いてまわる。最後の一人まで聞きおわると静に歩みより〈この部隊には御覧の通りいない〉老婆 頷く/抜き打ちに老婆を切りすてる。おもむろに刀を拭ひ鞘に納める。全員に分れ」(「陣中日誌」より)

1937年9月-1939年7月、一下士官として中国大陸で従軍。1943年6月には軍報道部映画班としてシンガポールに赴任、終戦の日を同地で迎える。これは小津安二郎が戦争と直接関わりをもった時間の総量だが、いわゆる「支那事変」時の「従軍日記」が生涯の日記のなかでもっとも緻密で濃密な記述に満ちていることは、ご存じの方も多いだろう(「戦地からの手紙」とともに小社刊『小津安二郎「東京物語」ほか』に収録)。「しかし、彼はじつは日記のほかにもう一冊のノートを残していた」。本書第II部で全文公開の「陣中日誌」である。
山中貞雄の遺文に触発されて書き綴られた戦場スナップ「撮影に就ての《ノオト》」、火野葦平『土と兵隊』を批判した読書ノート、対日本兵工作員用のパンフレットをまるごと筆写した「対敵士兵宣伝標語集」ほか、「戦争という人間の頽廃の危機」のただなかで、非人称のカメラさながらすべてを記録にとどめようとする強靭な意志に貫かれている。しかも「従軍日記」とは「重ならない内容のほうが多い。日記と相補う形で、戦場の小津安二郎軍曹の見聞と思考を記録し、体験を伝える貴重な資料」なのである。

戦場とは何か。軍隊とは何か。小津安二郎の「戦争体験」とは何だったのか。新資料を発掘・提示しながら解き明かされる人間ドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • 小津安二郎と戦争。映画に触れる部分や戦争が映画にどう影響したのかの考察はおもしろかった。戦場で書かれたノートにはゾッとする記述もあって、確かに戦地で地獄を見た1人だったということがわかる。
    それでも写真を撮ったり記録を取ったり、根っからの映画人であったこともうかがえる。

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著者プロフィール

1946年、北海道に生まれる。慶應義塾大学文学研究科修士課程修了(国文学専攻)。映画・文化史家。著書『小津安二郎のほうへ——モダニズム映画史論』(みすず書房 2002)『小津安二郎周游』(文藝春秋 2003/岩波現代文庫 2013)『小津安二郎と戦争』(みすず書房 2005)『ふるほん行脚』(みすず書房 2008)『本読みの獣道』(みすず書房 2013)、編著『小津安二郎・全発言 1933-1945』(泰流社 1987)『小津安二郎戦後語録集成 昭和21(1946)年—昭和38(1963)年』(フィルムアート社 1989)『全日記 小津安二郎』(フィルムアート社 1993)『小津安二郎「東京物語」ほか』(みすず書房 2001)ほか。2011年12月死去。

「2020年 『小津安二郎「東京物語」ほか【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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