日ソ戦争 南樺太・千島の攻防――領土問題の起源を考える

著者 :
  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622095262

作品紹介・あらすじ

『日ソ戦争1945年8月』(2020年)で記述できなかった南樺太・千島戦とその後の占領を、続編として刊行。ヤルタ密約後のソ連の参戦動機と米ソの角逐から、日本人捕虜や居留民の実態、ソ連による南樺太・千島の占領と併合、現在まで、ロシア側資料もふんだんに使用し、日本軍・ソ連軍・各兵士の多様な記録から戦闘の全貌と詳細をしるす最新研究である。北方領土問題を考えるためにも重要な書。

感想・レビュー・書評

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  • 秘密外交と軍民の悲惨な記録 [評]黒岩幸子(岩手県立大特命教授)
    <書評>日ソ戦争 南樺太・千島の攻防 領土問題の起源を考える:北海道新聞 どうしん電子版
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/726330/?rct=s_books

    日ソ戦争 南樺太・千島の攻防 | みすず書房
    https://www.msz.co.jp/book/detail/09526/

  • 戦後処理をめぐって米国とソ連の拮抗があったことは想像に難くないが、北方領土は、主としてスターリンの意向が優先されてようだ。
     スターリンは、1945年8月16日、①満州・北緯38度線以北の北朝鮮、樺太に全クリル(千島)を含め-日本軍対ソ降伏地域、ヤルタ密約に基づき、ソ連の領有に移すべきである、②この降伏地域に、宗谷海峡に接する北海道北半部(釧路市と留萌市を結ぶライン)を含めるべきで、日本軍は1919-21年にソビエト極東全域を占領したので、ロシア軍が日本全土の一部でも占領地を持たなければ、ロシアの世論は心から憤るであろう、と。
     ②は、米国との関係、日本の無条件降伏文書調印までクリル全島を占領することも危うくなったと判断して断念したという。
    ロシアがウクライナ侵攻に続いて、北海道への侵攻も考えているらしいという噂話が聞かれ、こういった歴史的事実があったことは驚かせる。

  • 東2法経図・6F開架:210.75A/To58n//K

  •  本書の大半は戦況や民間人も含めた証言の一次資料の引用であり、自分には読みにくい。読者を選ぶ本だと思う。
     ソ連参戦の動機として著者は、太平洋への出口確保目的だとする。また、「南樺太や占守島での奮闘が『北海道上陸作戦』を阻止したという思い込みに反駁し」と述べ、北海道作戦の断念には対米関係や全千島占領の優先があったとする。
     更には後書きだが、第五方面軍が大本営停戦命令を徹底し、米海軍に要請して直ちに択捉島まで退いていたら膨大な犠牲を払わず今日の領土問題も生じなかったかもしれない、「自衛戦闘」が認められたことで停戦を長引かせより多くの犠牲者を出した、と述べる。この点に関し自分は知見はないが、それでも、米海軍が直ちに日本軍の輸送を認めたか、また無抵抗の日本軍を前にソ連軍は何をしただろうかと考えると、著者の「提言」には疑問を感じる。

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著者プロフィール

1945年福島県生まれ。成蹊大学名誉教授。専門はロシア・ソ連政治史、日ソ関係史。東京大学法学部卒業、同大学院社会学研究科博士課程満期退学。予備校講師、大学非常勤講師などを経て成蹊大学法学部教授、同法学部長などを務める。著書『歴史としての東大闘争――ぼくたちが闘ったわけ』(ちくま新書、2019年)、『スターリニズムの統治構造――1930年代ソ連の政策決定と国民統合』(岩波書店、1996年)、『戦間期の日ソ関係――1917-1937』(岩波書店、2010年)、『シベリア抑留』(中公新書、2016年、アジア太平洋賞特別賞受賞)など。

「2022年 『ものがたり戦後史 「歴史総合」入門講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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