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本 ・本 (344ページ) / ISBN・EAN: 9784622096016
作品紹介・あらすじ
人類はいま史上最長の自由時間を手にしている。労働など生命維持のために必要な時間は1800年の48%から11%に減った(フランスでの統計)。先人には夢のようなこの時間が向かう先は、スマートフォンなどの画面である。そこでは正統な学知とデマが対等となり、世界を単純化するストーリーや、注意を惹くためだけに設計された広告が人の認知を奪い合う。AIが人間の仕事を代行するようになれば、自由時間はさらに飛躍的に増えるだろう。しかしそれは意味のあるものを生むために使われるのではなく、認知の争奪戦が繰り広げられる市場でただ蕩尽されて終わる可能性が高い。
高度な文明の源泉は人間の脳である。気候変動などの危機を乗り越える可能性も、人間の脳からしか生まれてこない。この頭脳を働かせることのできる時間が最大化している現在、それを貪ることで利益を上げる経済モデルにわれわれは直面しているのである。この状況は、生存可能性を高めるものとしてヒトが具えてきた生物学的特徴が、テクノロジー社会とミスマッチを起こした結果でもある。
この規制なき認知市場を放置することの意味を、われわれは真剣に考えなければならないだろう。現下の問題は、フェイクや陰謀論や反知性主義などすでに指摘されてきた弊害よりずっと根深く複雑だ。人類史上かつてない課題に、認知科学と社会学からアプローチする異色の試論。
感想・レビュー・書評
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圧巻。現代世界を「認知市場」という観点から社会的分析を行うブロネールの筆致に面食らう。
不安や心配という人間の根源的な感情を取り込みながらソーシャルネットワーク世界は無限に肥大化していく。
ナチュラルでピュアな失われた黄金時代を求めるルソーを源流するとする一派への批判、トランプを筆頭とするネオポピュリズム的言説をまとう人々への分析など、非常に多角的で鋭い論考を堪能できる。主権を持った政府側の一方的な上からの意図的な支配、それに対する素朴な民主主義を掲げる人々の被害者視点からの下からの反抗、両者の分かりやすい対立では収斂しない短期的な利益へと傾倒してしまう「人間」という種に対する批判的分析。
構造の中に絡め取られる人々。
フィクションは累積された人々の願望であり、それゆえ時代の風波に適した作品は神格化され、未来を先取りした傑作と称される。
スマホを使うことはやめられないがどう上手く使うかは考えることができる。
大きく自由になった人間の精神は瑣末なことに向かうが、その余剰を活用しなければいけない。 -
スモンビー増えたよね、日本も。
著者プロフィール
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