愛着障害と修復的愛着療法:児童虐待への対応

  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (490ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623043668

作品紹介・あらすじ

愛着は人生初期の子どもと養育者との間に形成される深くかつ持続的な絆です。もし、実父母あるいは養父母と子どもとの間に葛藤にみちた関係が起こったときその修復は早いうちにされなければなりません。本書は専門家による修復的愛着療法の実践的なテキストです。「ホールディング」の技法、「インナーチャイルド」による技法、ロールプレイなどのセラピーの実際や早期介入、家族への支援、予防プログラムなどを含む有効な解決方法を徹底的に検討しています。

感想・レビュー・書評

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  • アタッチメント関連の本は、特に翻訳本は読みにくく理解しにくいところが多いのですが、この本は比較的読みやすく訳されています。修復的愛着療法という日本語タイトルはあまり適切な訳語ではないと思います。いろいろなテーマについて網羅的に書かれています。アセスメントは少し古い感じもするし治療技法はどちらかというと分析的なのはやむを得ないかなとも。

  •  愛着障害について知りたいと思い、あれこれ探した末やっと辿り着いた本。

     入門書としてはヘネシー・澄子氏の 「子を愛せない母 母を拒否する子」(学習研究社)の方が分かり易く手っ取り早い。

     この本はどちらかといえば、系統的に詳しく学ぼうとする専門職向けの本だ。

     著者名を見たら、7月にCAPNA主催の研修会の講師だった2人だ。会費が4万円もする上に、平日は自分の立場上、休みは取りにくいので諦めたのだったが本当に惜しいことをした。アメリカから著者が来ることなど滅多にないことだ。

     ヘネシー・澄子氏の「子を愛せない母 母を拒否する子」(学習研究社)も、この本が底本になっているような印象を受ける。


     この本の主要部分である「修復的愛着療法」は、里親、児童養護施設、児相等でしか使えない(多くの子どもたちは、その原因となる親たちと生活している。そして今も愛着障碍の傷口に塩を塗り込まれている。たとえ最悪であっても実の親なのだ。)。
     しかし、その他の部分、愛着の起源、子育てにおける愛着形成の過程、愛着障害のある子どもたちの特質と原因などは資料としての価値は非常高い。

     また、この本を読む中で、多くの母親がごく自然に日常的にやっていることが、子どもと母親にとってとても大きな価値を持つことも再認識できた。

     500頁に迫る厚い本である。その上、訳語が固く文章もこなれていないのでやや読みにくい。
     だが、お薦めの本だ。「愛着障害」についてだけでなく、母親にとっては自分の子育てを再点検する機会になるし、これから母親になる人にとっては、自分のこれからする一つ一つのことの意義を知ることになる。

     厚さの他に難点がもう一つ。

     価格が高い。この一冊で2日分の飲み代が消えた。これは相当に辛かった。もちろんこの本で得たものはそれ以上だったが。

  • 臨床関係と研究の参考になるかと思って、結構高い金を払って購入したのだが・・・はっきり言って、この額を払うほどの価値はないな。ほんともったいないことした。

    まず第1に、誤訳が多い。本来は成人愛着面接と訳すであろうところを「大人愛着面接」と訳していたり(間違ってはいないけど・・・)、かと思うと、最後の方ではきちんと成人愛着面接と訳されていたり、分離苦悩における抵抗、絶望、脱愛着のプロセスの記述についても、抵抗の所を「防衛」あるいは「抗議」(これはあっているのかもしれないが、そもそも同じ本の中で術語に一貫性がない)としていたり、ほんとに愛着研究をキチンと知っている人が翻訳したのか?と思わされてしまう。したがって、文章も直訳的であり、きわめて読みにくい。

    第2に、その理論的背景にもあまり納得できない。おそらく、文化的な背景の違いが大きいものと思われるが、この「修復的愛着療法」では養父母に子どもを抱っこさせてアイコンタクトしながら会話をさせたり(小学校高額年齢でも!)、哺乳瓶を持ち出したり、虐待を行った実際の父母の写真を突きつけて子どもの攻撃性を発散させたり・・・などなど。
    それと、修復的愛着療法にはfiringという技法があるらしい。これは、セラピストから子どもへの治療中断通告だそうだ。子どもが身体攻撃を向けてきたり、動機づけが低かったりすると、この方法がとられる事があるらしい。身体攻撃に対する中断通告はわかるのだが、動機づけに関しては、いささか疑問がある。そもそもBowlbyは不適切な養育態度として子どもを見捨てると「おどす」ことを上げているが、このfiringはそれこそ「おどし」の域ではないだろうか?これで動機づけが高まったとしても、それは治療者への従属化であったり、見捨てられ不安が喚起された結果としての治療継続でしかないのではないだろうか?それに、もし、そのまま中断になった場合、見捨てられ不安をくすぐられながら、そのまま中断してしまった子どもは、それこそ「大人って奴は言う事を聞く子どもしか可愛がらない」とか言う事になるのではないのか?
    あとがきではキチンと日本でのこの療法の適用の際には慎重にならなければという注意書きもあるが、常識のある人なら、あとがきを読まずとも、この療法をそのまま日本で応用出来るのはきわめて困難であろうし、その治療効果も怪しいものだと思う事だろう。

    日米の違いなのかもしれないが、やはり西欧圏では「言語」でのやりとりが非常に重視されるのだなとここでも思った。
    以前紹介した<a href="http://guchogucho.blog102.fc2.com/blog-entry-77.html" target="_blank" title="ランドレスのプレイセラピーの本">ランドレスのプレイセラピーの本</a>でもやはり言葉でのやり取りが中心だったし。
    実際にプレイセラピーの経験からは、子どもが言葉で表現したりセラピストとやりとりするよりも、非言語的な面でいかに子どもと情緒的に繋がる事ができるのかが個人的には大切なことなのではないかと思っているのだが、これもやはり文化的な違いなのか?それとも僕の勝手な思い込みか、オリエンテーションの違いなのか?よくわからないけど。とにかく僕が志向している子どもへのアプローチと「修復的愛着療法」とは大きく違っていることはよくわかった。

    ところで、実際に虐待した親の写真を見せながら攻撃性を発散させたりなどして、その後の情緒的な揺れの処理に失敗でもしたら、下手すると大変なことになってしまうのではないのか?それはやっぱりセラピストの力量次第でなんとかしなさいってことなのかな?だとすると、相当なトレーニングなり経験なりが必要なのだろうな、きっと。

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