ローカルガバナンスと現代行財政

制作 : 山本 隆 
  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623050239

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  • ガバナンス時代における地方自治のあり方について、財政の点を踏まえながら解説している。論文集のような印象を受けたが、いくつかの示唆的な内容を含んでいた。

  • 卒業研究の資料として、ゼミの先生から借りて読んだ本。
    1章から終章までの全13章のうち、自分の卒論に関連しそうな6章分しか読んでいないので、全くまとまっていませんが備忘録としてメモ程度に。

    経済のグローバル化の進展は、国際的な経済発展の地域格差や貧富の差の拡大にとどまらない。それは日本という一国内でも同様の状況がみられる。大都市にヒト・モノ・カネが集中し、一方では地方の多くの自治体が財政悪化に直面し、住民サービスをまともに提供できないという地域格差が深刻なものとなってるのである。

    このような状況にあって従来型の「統治(ガバメント)」に代わって、社会の多元的なアクターによる社会・経済的調整のあり方を示す「ガバナンス」という考え方がローカルレベルでも注目されてきている。


    <ローカルガバナンス登場の背景にある自治体の変化>
    ①自治体はグローバル化、都市化といった社会経済や政治環境といったマクロ環境の変化に見舞われている
    ②自治体はコミュニティの変化というミクロな環境の変化に直面している
    ③公共領域に関する市民の考え方が変化してきている


    <欧米でのローカルガバナンス理論(ストーカー、ジョン・スチュアート)>
    ローカリズム(地域主義)…地方自治体の施策はあくまでコミュニティのニーズから出発する
    コミュニティ政府…地方自治体は、自らを統治するコミュニティとして、コミュニティが求める諸活動を実施する権利を持つ。
    こうした考えに基づき欧米諸国において地方自治体に課される義務は、日本のような役割の拘束ではない。包括的権能なのである。つまり、特に禁じられていなければコミュニティのためにいかなる活動もとることができる。そうであるから住民のニーズに応答的な自治体は、地域の様々なアクターを巻き込んで職務を遂行できるのである。


    <自治体広域化に関して>
    自治体の役割を政治と行政という二つの要素に分け、「政治=意思決定」「行政=サービス実施」と理解すると、自治体の適正規模という考え方はジレンマに陥る。
    それは政治(意思決定)の単位、行政(サービスの実施)の単位それぞれで適正規模は異なるからである。つまり、規模を大きくすればより広域的な問題に対処できることや資源を大規模に動員して問題に対処することが可能になる、といったメリットがある。
    しかし、自治体が広域化すればその分自治体機構と住民との距離は拡大することになる。住民の声が自治体の政策に反映されにくくなり、政治参加が難しくなるのである。
    この点から考えると、日本で繰り返されてきた「市町村合併」の歴史は、自治体の行政(サービス供給)能力という観点から行われてきたものであり、政治参加という観点はあまり考慮されてこなかったということができる。


    <自治体内分権>
    「基礎的自治体内の狭域の単位に、一定の権限を移譲すること」であり、日本の自治体広域化政策に欠けていた「政治参加」の視点をいかに取り戻すかという議論に対する一つの考え方である。
    そのためここで言う「分権」は、サービスの実施権限を地域出先機関に分かつという意味ではなく、狭域の単位に政治的自己決定機能が分かたれるという意味である。
    つまり、自治体内に地域組織を作り、人々により近いところでサービスを供給するということではなく、人々が地域における政治的決定の場に参加しそこで意思決定を行う正当性と権限を持つ単位(組織)を構築することが求められるということ。行政的分権を行わないという意味ではなく、その実施に関する政治的決定の権限から委譲するということ。
    政治的決定の権限の移譲は、自治体の制作過程に一定程度の影響を与えることを意味する。その際に重要なのは地域組織の意思が自治体の意思をどこまで拘束しうるかという点である。地域組織の決定を自治体が尊重しないのであれば、政治参加の意味は薄れてしまうのであり、意思決定の「拘束性」も十分に考慮されなければならない。

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