- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784634152359
作品紹介・あらすじ
プーチンはなぜ侵攻の理由に「ウクライナの非ナチ化」を掲げたのか?東西ウクライナの地政学的対立はなぜ生まれたのか?・・・その答えは「歴史」のなかにある。キエフ・ルーシの時代からリトアニア・ポーランド支配、ロシア帝国とハプスブルク帝国の支配を受けたウクライナ領域の人々。ソ連構成国を経て独立を果たした多民族国家の歩みをロシア・ウクライナ戦争まで、日本を代表する研究者が多様な視点から論考する。
感想・レビュー・書評
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ウクライナ史に関する日本語の書籍としては、これまで、中公新書の『物語ウクライナの歴史』(黒川祐次著)が最もよく知られていた。しかし、この度出版された本書(『講義ウクライナの歴史』)は、それよりもはるかに質の高い書籍であると感じた。何よりもまず、『物語〜』が歴史家ではなく一外交官による書籍であるのに対して、本書は第一線で活躍する研究者らによる講義集であるからだ(加えて『物語〜』の出版から20年を経過した今、21世紀の歴史的展開もカバーする本書のほうがより信頼できることも否定できない)。これだけの研究者たちによる論考をまとめることができたのは、編者・編集者の尽力によるものであろう。
ウクライナが一体の国家として成立するのが近代になってからのことである以上、ウクライナの歴史を前近代も含めて通史として描くことには必ず何らかの困難が伴う(これについて、詳しくは、『歴史学研究』2023年7月号所収の橋本伸也「ウクライナ史とはなにか?」を参照)。本書は、かつて北米のウクライナ人ディアスポラのあいだで広まっていた亡命史学やウクライナでの戦争が勃発して以降、一層勢いを増している民族史学に陥らないよう十分注意を払いながら、論じるべきポイントはきちんと抑えて論じている、といった印象を受けた。
初学者にとって最も参考になるのは、やはり第1講の概論(黛)であろう。記述も非常にわかりやすいので、この章を目を通すだけで、全体像を大まかに掴むことはできるはずだ。次に、より詳しく知るために、各章をじっくり読み進めていくとよい。さらに、もっと深掘りしたい場合には、各章の著者による別の著書を手にとってみるよいだろう(例えば、正教会に関する第9講(高橋)→高橋『迷えるウクライナ』、独立後の政治に関する第10講(松里)→松里『ポスト社会主義の政治』および『ウクライナ動乱』、といった具合に)。
本書は、ウクライナの歴史を学ぶにあたってまず初めに読むべき一冊であり、ウクライナの歴史に関心をもつすべての読者が手にとるべき書籍であると感じた。 -
238.6||Ma
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TEA-OPACへのリンクはこちら↓
https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=9784634152359 -
知る限りにおいてであるが、いまウクライナの歴史に関して、最も総合的にわかりやすく紹介した書ではないだろうか。しかもウェブ講義を採録したということであるおかげか、文章も読みやすい。
現在のウクライナの状況を生み出した直接的な政治的経緯についても、簡潔にまとめられている(松里公孝氏による第10講)。
よく売れていて手軽な中公新書を読むよりも、こちらのほうがおすすめである。 -
一般向け連続講義の書籍化。20世紀からの章を中心に読む。
ウクライナの歴史自体への知識が深まったが、特に興味を持ったのが、池田と浜の両論を中心に、歴史の捉え方、歴史認識や「物語」という視点。独立後の、民族的「ウクライナ人」を主役にした公的「ウクライナ史」の妥当性。中央政府と庶民は抑圧・非抑圧二元論か。スターリン指導下の社会主義建設、大量餓死はウクライナ「狙い撃ち」か。「ナチ協力者」バンデラへの評価。現代になって歴史認識が政治争点化することもある。
国民国家建設にあたり「物語」が必要なことは他国でもある。また特に近隣国で歴史認識が異なるのもよくあるが、少なくとも日韓で戦争の原因とはならない。日中とて、歴史認識を直接の原因とした武力紛争は考えにくい。
ではなぜ今回の戦争は起きたのか。ウクライナの急速な「ウクライナ史」構築のためか、武力への露のハードルの低さか。松里の論では(同氏のちくま新書と趣旨は同じ)むしろ「ウクライナ国家建設の挫折」とあるのだが、イデオロギー的「ウクライナ史」の強行が却って国民分断を強めたという指摘のようだ。 -
13世紀後半、モンゴルの襲来によりキエフ・ルーシの中心であったキエフは陥落して荒廃し、中心はウラジーミルに移った。ウラジミールはモスクワの東方約200kmの古都。
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東2法経図・6F開架:238.6A/Ma98k//K