- Amazon.co.jp ・本 (90ページ)
- / ISBN・EAN: 9784634349599
作品紹介・あらすじ
十九世紀末、「文明の使命」の名のもとに繰り広げられたヨーロッパ列強による分割競争。運河の開削や鉄道の建設により開始された植民地化はアフリカ諸王国の抵抗を武力で圧倒し、大陸各地で進められた。土地の収奪や理不尽な徴税に対する抵抗運動やマフディーやチレンブエなどの宗教結社による抵抗運動はやがて、脱植民地化をめざすパン・アフリカ運動にいたり、二十世紀後半のアフリカ諸国の独立へと結実する。アフリカの植民地化と人々の抵抗のプロセスをたどる。
感想・レビュー・書評
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テーマ史
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範囲は19世紀のイギリスによるエジプトの保護国化やベルリン会議でアフリカ分割のルールが決定される1880年代からになります。ヨーロッパ列強のアフリカ分割に対抗し、高校世界史でも出てくるスーダンのマフディー、西スーダン(今のマリやギニア、コートジボアールなど)のサモリ=トゥーレ、「エジプト人のためのエジプト」を唱えたオラービー=パシャの他にも、ケニアのマウマウ戦争、タンザニアのマジマジの乱など資料集でちょっとでてくるもの、絶対に高校世界史では出てこないようなものまでアフリカ各地で発生した反植民地闘争を簡潔に分かりやすく説明してくれます。この本を読んで一番に感じたことは、当時のヨーロッパのアフリカ分割も単に「ヨーロッパにおける帝国主義政策の一環」として捉えるのではなく、世界史的な視野に立って(世界の動きの中で)捉えていかないといけないかなということです。例えばエジプトにおいて綿花栽培が盛んになった背景に1860年代のアメリカ合衆国で起こった南北戦争による綿花供給の減少があり、この綿花ブームに気をよくした当時のムハンマド=アリー朝エジプトの君主イスマーイール=パシャによる綿花のモノカルチャー(単一栽培)化と積極財政(当時イギリスとともに共同支配していたスーダンへの派兵など)が結局国家財政の破綻を導き、イギリスの経済支配を招いたということはその代表例だと思います。とにもかくにも、この時期のアフリカを巡る動きは私は知らないことばかりだし、だからこそ非常に面白く知的欲求を刺激してくれます。大変参考になる一冊でした。以下この本で知ることのできたちょっとした授業ネタにできるものを備忘録代わりに書いておきます。
インド・・・「大英帝国の長男」
※ちなみに「大英帝国の長女」はカナダです
オラービー=パシャ・・・明治時代東海散士の詳説『佳人之奇遇』に登場(東海散士や『佳人之奇遇』は高校日本史Bに出てきます)
鉄道・・・19世紀のイギリスの小説家ディケンズ(『クリスマスキャロル』『二都物語』『オリヴァー・ツイスト』で有名)は「鉄の恐竜」と表現。また中国の義和団は「鉄の蛇」として西洋物質文明による征服の道具として敵視し、破壊活動の対象となった(これに関する論述問題が数年前の東京大学の入試で出てました)
落花生・・・19世紀「セネガルの黄金」と呼ばれ、フランスで落花生油脂が石鹸の材料になる。とくに産業革命で工場の石鹸需要が増大すると輸出が爆発的に増えた。
ケープ植民地・・・フランス王ルイ14世によるナントの王令廃止後のプロテスタント迫害から逃げてきたオランダ人らによって入植。
マウマウ戦争・・・「マウマウ」という言葉は、逮捕された農民労働者が「マウンドゥ・マウ(あれこれのこと)は絶対に教えられない」と書かれた裁判の記述を読んだ記者が間違って結社の名前とし「マウマウ団」と表現したことから。
マフディーの乱へのイギリスの対応・・・ハルトゥームの戦いで戦死したゴードン将軍の弔い合戦は遅れていたが、アドワの戦いでイタリアがエチオピアに敗北し、イタリアの代わりにフランスやロシアがエチオピアをねらってくるのを警戒してキッチナー将軍を派遣 -
アフリカの植民地化への抵抗運動なんて日本の学校じゃ世界史の授業でもほとんど出てこないからな。
それにしても黒魔術な世界だな。
魔法の水の威力のタンザニアのマジマジ反乱とか、非近代的だ。