南アルプス山岳救助隊K-9 レスキュードッグ・ストーリーズ

著者 :
  • 山と渓谷社
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本棚登録 : 87
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635171915

作品紹介・あらすじ

標高3193m。日本第二の高峰・北岳。そこに南アルプス山岳救助隊があり、山岳救助犬を伴うK‐9チームがいる。山岳救助、犬との交流、親子の絆のほか、「南アルプス山岳救助隊K‐9」シリーズの転換点となる「相棒(バディ)」、単行本未収録作品「夏のおわりに」を含むバラエティあふれた全12編を収録した本格山岳小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 発売順から言うと、今作の方が先のようだけど、「白い標的」から読んでしまった。
    今作は12篇からなる短編集。
    短編だと、サスペンスの様相が減るから、従来の山岳救助隊の様子が描かれる。
    どの作品もいいが、作者自身「ターニングポイント」と言う「相棒」は展開が読めていても、なけてしまう…
    こういう人気シリーズになると、時間軸を止めてしまうものもあるが、今作はきちんと時間軸を追っていて、悲しいけど、それが現実だと思うと受け容れない訳にはいかない。

  • K-9シリーズはこういう短編集の方が好き。個人的な好みだが、このくらいのボリュームでほのぼのする感じが似合う。
    夏実、静奈、進藤、深町という主要メンバーだけでなく横森や曽我野という若手メンバーにもスポットを当ててくれて良かった。次は江草隊長やヘリ部隊もお願いしたい。ついでに山小屋メンバーも。
    山にいると人間は生かされているということをより感じられる気がする。動物、植物、自然の脅威とも共生し、だからこそ超自然現象のようなことも受け入れられるのかも。
    ハンドラーと救助犬との絆が対等で良い。怪我をしたメイが捜索に連れていって貰えずプライドを傷つけられた感でふてくされ、それを宥める夏実の図。
    病を推して救助に駆け回るカムイと最後まで一緒にいる進藤。あー、カムイ!
    このシリーズを読むたびに山に登るのではなく登らせてもらう、くらいの謙虚で真摯な気持ちを持って入らないと、と気が引き締まる。それでも事故は起こる。
    山は美しい景色を見せてくれるが、それだけではない。
    救助隊のみなさんに感謝。
    夏実と深町が良い感じになってるのが嬉しい。静奈は誰とお似合いかな、なんて思いながら読むのも楽しい。

  • 短編はあまり好きじゃないけどこの本は同じテーマだからなのかサクサクと読める。テロを扱った小説より面白かった。
    遺書
    仕事、人間関係の煩わしさから単独登山に目覚めある日遭難。登山計画を出していなかったため救助される見込みもなくケガをしたため動くこともできない。遺書を離婚した妻に書くがその妻から救助要請がくる。遭難した事で家族を見直すきっかけとなる。
    山の嫌われ者
    五十六と言うおじいさん。我が強く皆の嫌われ者。北岳56回挑戦の最後の誕生日の日。あと少しで登頂というところでケガをした人に遭遇。歩ける状態ではないが今日、記念となる登頂の日。どっちを取るか。。。救助をとった五十六は次の日登頂し、救助隊は五十六のためにお祝いをする。
    晴天の霹靂
    雷が嫌いな山岳救助隊の横森。名誉挽回のため雷雲の中山頂目指して曽我野と2人無茶な行動をする。
    そしてそのために命を失うことになりかねない事故が起こり恐怖心も大切だと身をもって知る。
    神の鳥
    雷鳥が絶滅する原因の一つに犬のフンなどが挙げられる。山岳救助犬もやり玉に上げられ存続の危機。
    密猟が原因だったが自然形態がおかしくなっているのは事実である。
    霧の中に
    自分を家族の元に返して欲しくて山岳救助隊に現れる幽霊の話。
    帰ってきた男
    山で事故に遭い顔が判別できない状態になって亡くなる。山小屋の人も家族も服装で本人と判断し葬式の途中で帰ってくる。持ち物も血液型も一緒の死人は同じ職場の人で不正操作を知られて計画犯罪をしようと同じ服を購入し山に登るが途中で滑り落ちるという間抜けな話。
    父の山
    深町は仕事一徹で苦労を重ねた母親が亡くなった事で父親とわだかまりが生じていた。定年退職した父が山に登った事を知り探しにいく。親子の絆を深める話。
    サバイバーズギルト
    生存者の罪悪と言う意味の題名のように冬山に登る途中、相方が足を凍傷。動ける状態ではなく携帯も悪天候で濡れて使えなくなる。1人下山し助けを求めるがなくなってしまう。 罪悪感に家庭も崩壊の危機。山に登った事を知った神崎は仕事とは別で探しにいく。
    辞表
    リニア新幹線トンネル工事反対のデモを鎮圧するために女性や子どもを相手にしてほしいと要請。本当はそういう訓練を受けていないので拒絶できるが断りきれず神崎と星野が行くことに。あまりの横暴さに星野は止めるが逆らうなと殴られ大事となる。
    周りに迷惑をかけたため辞表を提出。深町は星野が傷ついている事を知り慰める。愛が芽生えたような書き方に今後が知りたい。
    向かい風ふたたび
    北岳以外の山岳捜査。休暇中の星野はメイの母犬災害救助犬の理事宅へ遊びに行く。そこで要請を受けて行くが行方不明になった状況、情報が皆無のなか
    捜索を開始する。

    この題名と話の意味する向かい風とは何なのかわからないまま話は終わる。
    相棒
    進藤の山岳救援犬が末期の癌。ショックの進藤は有給を取って北岳に登りに行く。心なしかカムイが少し元気になった気がして体調をみながら登っていく。途中雪崩に遭遇し人影が見えた希がしてカムイと捜索にあたる。カムイは吐血しながらも救助し帰ろうとした矢先に進藤らに雪崩が直撃。カムイは吐血しながらも単独で登りにきていた松戸に助けを求める。カムイ最期の仕事は一緒に働いた進藤を救援する事だった。
    夏のおわりに
    中年の釣り人に出会う星野。その人はこの川で妻を亡くし失望の中釣りで気を紛らわしていると知る。気にはなりながらもその後会う事もなかったが川で人が死んでいると通報を受け星野は自分が行くと挙手。違う人でホッとするが余計に気になりまた出会った場所へ行くとその人の妻愛用のマグカップが。そこには星野宛に手紙が添えられていた。もしかしたら届かないかも知れない手紙に感謝と海外で働くことがしたためられていた。
    出会いによって人生が大きく変わるその手紙の後に作者の後記に漫画家の偶然の出会いとその人からもらったプレゼントのナイフ。そこでキャンプを思いつき、登山にのめり込むようになり今の自分がいる。
    人生に無駄はないとはこのことかも知れない。

  • カムイ・・・!

  • シリーズ5作目。特別収録を含む12編を収録した山岳小説集。
    5作目にして短編集とは意外でしたが、イメージや雰囲気を損なう事もなく良作でした。
    「約束の地」とのコラボ作品もあった。こういう遊び心、読者は嬉しいかぎりです。気付けたのがまず嬉しい。
    懸命な救助活動、仲間達との絆、相棒(救助犬)との信頼関係。胸が、目頭が、熱くなります。
    やっぱりと言うか、まんまと泣かされました。犬好きさんは感涙必至。

  • 大好きなK-9シリーズ 今回は短編集
    相棒(バディ)に涙 カムイ~

  •  ん~、星野さんが自信の表れなのか、嫌なキャラになってませんか?・・・と、思いながら読んでいたら、やられました、進藤さんとカムイに。進藤さんとカムイがやっとクローズアップされたと思ったのに!!

  • シリーズ最新作は連作編集。雄大で美しく厳しい北岳を舞台に人間ドラマが展開され隊員と救助犬の絆が描かれる。『相棒』は泣かせる,『夏の終わりに』はほのぼの。一歩間違えると陳腐なお涙頂戴になるストーリーを本当に心に響く短編に仕上げる作者さんの力量と自然の力に感服。

  • 山にテロが入り込んだりするよりも、こういう日常的なカンジの方が好きです。

    しかし、カムイ~ 泣けたよぉ

  • 「天空の犬」北岳のレスキュードックシリーズ。
    長編ではなく「山と渓谷」に連載されていた作品を集めた作品集。
    ひとつひとつの作品は、こじんまりとまとまっているが、そこはさすがの樋口さん どの作品も読ませてくれます。
    最後に、悲しい場面が....
    でも、それは犬と人間が付き合うときに、最初に覚悟しなければならないこと。
    いや、人と人が付き合うときにも、必ず直面することでもあります。

    後記にわれらがS編集者さんの名前がでてきたのも、見逃してませんよ。

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著者プロフィール

1960年山口県生まれ。明治学院大学卒業。雑誌記者を経て、87年に小説家デビュー。2008年『約束の地』で、第27回日本冒険小説協会大賞、第12回大藪春彦賞をダブル受賞。2013年刊行には『ミッドナイト・ラン!』で第2回エキナカ大賞を受賞。山岳救助犬の活躍を描く「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズの他、『狼は瞑らない』『光の山脈』『酔いどれ犬』『還らざる聖地』、エッセイ『北岳山小屋物語』『田舎暮らし毒本』などの著作がある。有害鳥獣対策犬ハンドラー資格取得。山梨県自然監視員。

「2022年 『南アルプス山岳救助隊K-9 それぞれの山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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