- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784635510301
感想・レビュー・書評
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岳の漫画を読み始めてから、こんな人達がいるんだって知り、実際に山小屋で救助活動をしている人のことが気になり読んでみました。岳でも感じたけど、凄まじいし山では本当に人が呆気なく死ぬんだと思いました。
登山が趣味だけど、山で遭難しないよう、死なないよう準備を含めたリスク管理と、慣れてきても油断しないようにしようって肝に銘じました。どんな山でも登山をするかぎり危険は伴うけど、まずは遭難しないようにすることが、登山者として何よりも大事だと思いました。
特に雪山での大量遭難の現場が凄まじすぎて、心がぎゅっとなった。登山客の医師と看護師も救助に加わったらしいけど、自分がその壮絶な現場に居合わせたとして何も出来ないと思った。本当にすごい。ヒーローみたいな人達がこの世界にいることが知れて良かったです。
山での遭難の時に助けてくれる方々の仕組みについて知れるのも良かったです。山小屋の方をはじめ、ヘリや警察など多くの人達が関わっていることを改めて知りました。岳の三歩みたいに1人で助けに行くことはなく、チームワークを発揮して、チームで助けに行く。本当にヒーローに思えた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
彼をよく知ったのは亡くなられてからで、生前小屋を訪れた時にお話し聞いておけば良かったと後悔です。レベルの差はあれ、山をやる者の社会からの疎外感、そして「人はなぜ山に登るのか」の腑に落ちる考えが圧巻でした。それはあくまでレスキューの立場であり、アルピニストを客観的に見ていたからでもありますが、長年の同じ現場で、自分の考えに磨きがかかったかもしれません。
7年前に穂高岳山荘の前で雪掻きをしている人達の写真を撮っていました。たぶんその一人が宮田さんだと思います。そんな微かなすれ違いであっても、いまこうやって本を読み終えると、自分の中にいつの間にか彼の居場所ができているのが不思議です。 -
高所恐怖症なのに山が好きです。ドキッとしたことも何度かありますが、あの達成感は何物にも変え難いと思います。だけどやっぱり怖い。"岳"よりもずっと怖さのリアリティがありました。そんなに生き急ぐことはなかったのに。残念です。
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昨今、山の番組は結構あって、日本百名山とかグレート○○とか、BSでは毎日何かしらやっているので、全部はチェックしないのですが、先ごろなんとなくついていたテレビで山の番組が始まり、見るとはなしにみていると、宮田八郎という人の特番らしく、途中からしっかりと見入ってしまいました。
山を愛するあまり10代で神戸から出てきて穂高岳山荘の小屋番をされています。
小屋明けや小屋仕舞やその日常(いえ私たちにしたら大変な非日常)の中で生き生きと動き回る宮田さんにくぎ付けです。
丸いひげ面のお顔にくりくりとしたまん丸い目、人懐こい笑顔、ほっとする関西弁、誰もがそんな宮田さんを慕って小屋に通うのは納得です。
とはいえ、穂高岳山荘という小屋は、北には槍ヶ岳反対側は西穂高岳がある穂高連峰のちょうど真ん中あたり、涸沢岳と奥穂高岳の真ん中あたりのコルにあり、誰もがおいそれと行けるところではありません。
どこから行っても難所につぐ難所の連続で、一歩間違えば命がないというようなところだと思います(私も行ったことはありません)
当然、毎年遭難事故が発生します。
本書はそういう遭難事故のレスキューの話です。
遭難事故の一報が入れば、どんな悪天候でも、何をおいてもとにかく駆けつける、「自分の命はかけられへんけど助けられる命は助ける」その精神で、山岳救助隊、エアレスキュー・防災ヘリと一丸となり力の限りを尽くす姿勢には頭が下がります。
遭難者の中には、師と仰ぐ人、友人、そんな人たちも含まれていて、その心境はいかばかりかと。
2年ほど前、友人と登山口で車中泊をしているとき、さあ寝よかと横になると、スマホを見ていた友人が、「○○さんが、シーカヤックやってて伊豆で行方不明やて!知ってる?」「えっ、そうなん?知らんけど・・・」となんとも愛想のない返事をしたのを思い出しました。
これが宮田さんのことだったんだと今確信しています。
友人は山の知識も技術も豊富なので、穂高にも幾度も足を運んでいるでしょう。宮田さんとも面識があったのかもしれません。そんな彼女につれない返事をしてしまって、ごめん。
そうです、宮田さんは海の事故で無くなってしまわれました。番組の途中からこの方は今はおられないのかなという気がしていましたが。
山で自然の脅威をいやというほど知らされていたのに、海という環境は違えど、やはり自然には抗えなかったんですね。
小屋番を亡くした穂高岳山荘も穂高の山々も、今日も変わらずにその存在は偉大であると思います。
宮田さんの遺志を忘れずに、心して入山したいものです。 -
3000メートルを超える穂高岳の山小屋支配人を務めた宮田八郎。彼の仕事は山小屋の運営、客のもてなしに加えて、山での遭難救助。本書は多くの遭難救助に立ち会った宮田氏の活動の記録。
山での遭難について、よく言われるのが自己責任論。本書の記録の中には登山者の無謀、無知が原因による遭難も多い。が、宮田氏はそんな救助活動についても決して登山者を責めないし、恨まない。関西弁でツッコミを入れて、笑い飛ばす。彼にとって、救助とは自分の役目であり、助けることができるのあれば助けるし、助けてあげたい。それだけで彼は行動する。
そんな境地に達したのは、山で彼の師や友の死に何度も接したからだろう。どんなに注意しても、経験を積んでも人は山で死ぬ。それを理解したうえで、彼は第一に自身の安全を確保することを心がけてから、救助活動をこなす。
そして、当然自分の死についても考えていただろう。2018年、彼は海で遭難死する。山で死ななかったことは彼のプライドだったのだろうか。追卓のあとがきは彼の妻が記す。 -
岳をよんで、この本を読んで命の重みを感じます。
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久々に涙がこぼれた。
丁寧な文章で淡々と書かれているが、ブレることのない信念や山という非日常のなかでの人間の絆の強さを感じました。
著者のご冥福をお祈りします。