- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784641227965
作品紹介・あらすじ
日本国憲法の誕生は急ごしらえの舞台上での一幕の乱舞劇であった。国民抜きの国民主権劇をだれが振付をして,だれが踊ったのか。これまで歴史のひだに隠されていたもうひとつの憲法物語を,制定記念グッズや祝賀行事,公式記録などの深読みを通してひも解く。〈4色刷〉
感想・レビュー・書評
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あたらしい憲法の基本的な柱は「民主主義」「国際平和主義」「主権在民主義」だと教科書で教えることは、当時の政府の姿勢そのものであったが「基本的人権の尊重」が含まれなかった。どことなく当時あたらしい憲法を全国民と共有していく過程が、本書にも登場するコロナ禍の「マスク」郵送を連想させます。憲法のお誕生と「新しい生活様式」のお誕生が私の中で切り離せないです。「新しい生活様式」はいろいろな立場の人が自分の利益・主張を実現することを通じてより良い社会にする共有装置になりえるのか、しばらく悩む日々が続きそうです。
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コレクター気質な憲法学者の先生らしく、かるたや記念切符などのグッズ類から憲法公布を取り巻く空気や思惑をたどる、面白い本でした。発布と公布の意味の違いを当時のGHQ(及び忖度する政府)がかなり気にしてたとか文化勲章の生き残り方とかも面白かった。
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日本国憲法制定を記念した当時の様子を、当時に配布されたグッズ、発行された切手等で描いた本。GHQの監視を気にしながら国家的行事を実施しようとした滑稽さのような親しみのようなものを感じる。
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日本国憲法制定史に関する普通の歴史書を書いておきたかった、という著者の言葉が端的にこの本の特長を表している。
「護憲派の神話か…改憲派の逆神話か…そういう類の歴史ではなく、ごく普通に、自分の政治的立場の色眼鏡越しにではなく、客観的に、史実に基づいて、日本国憲法の生誕を語ることが憲法学の専門研究者のあるべき姿ではないかと思っていた。」
「物品史料という従来見逃されてきた沈黙のエビデンスから見える歴史を書いてみたいと思っていた。」
というのがあとがきに書かれている。
沈黙のエビデンスとして、日本国憲法を記念した、紙芝居、レコード、カルタ、章牌、メダル、ブローチ、帯留、バックル、メダル、銀杯、朱塗木杯、記念切符、絵葉書、切手、テキスト・パンフレット、映画、「皇室の御寫眞」、祝賀行事、といった事物とその背景を説明しながら憲法がどのように受け入れられたかを述べている。
記念切符に基本的人権のイメージを図案化しようとして、でも基本的人権がよくわからないので国会議事堂の上に自由の女神が乗っかっているデザインがなされてしまう、というようなことが紹介されている。
あるいは、政府は「憲法発布」ではなく「憲法公布」だとして新聞などはそれに従っているが地方では「発布」が使われていることが物品からわかる(発布は主権者が行うものなので「天皇による改正憲法の発布」を表に出したくなかった)。
GHQと政府、あるいは保守派勢力がそれぞれの思惑で動いていることも書かれている。11月3日(旧明治節)に新憲法を公布することをGHQに認めさせるために半年後の5月3日を施行日とすることを先に決めたとか。
いろいろ興味深い内容が多いのだが、なにげに面白いのは
「自社への辛口のコメントも多いのに発表の機会を与えてくださり、いままた書籍化に尽力してくださった有斐閣編集部」に謝辞を述べているところ。
初出については知らないが、本書に関しては、わざわざ書かなければ、辛口のコメントだとは気づかない読者も多いだろうに。 -
東2法経図・6F開架:323.14A/E12n//K