日本国憲法のお誕生 -- その受容の社会史

著者 :
  • 有斐閣
4.50
  • (1)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 29
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641227965

作品紹介・あらすじ

日本国憲法の誕生は急ごしらえの舞台上での一幕の乱舞劇であった。国民抜きの国民主権劇をだれが振付をして,だれが踊ったのか。これまで歴史のひだに隠されていたもうひとつの憲法物語を,制定記念グッズや祝賀行事,公式記録などの深読みを通してひも解く。〈4色刷〉

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あたらしい憲法の基本的な柱は「民主主義」「国際平和主義」「主権在民主義」だと教科書で教えることは、当時の政府の姿勢そのものであったが「基本的人権の尊重」が含まれなかった。どことなく当時あたらしい憲法を全国民と共有していく過程が、本書にも登場するコロナ禍の「マスク」郵送を連想させます。憲法のお誕生と「新しい生活様式」のお誕生が私の中で切り離せないです。「新しい生活様式」はいろいろな立場の人が自分の利益・主張を実現することを通じてより良い社会にする共有装置になりえるのか、しばらく悩む日々が続きそうです。

  • コレクター気質な憲法学者の先生らしく、かるたや記念切符などのグッズ類から憲法公布を取り巻く空気や思惑をたどる、面白い本でした。発布と公布の意味の違いを当時のGHQ(及び忖度する政府)がかなり気にしてたとか文化勲章の生き残り方とかも面白かった。

  • ふむ

  • 【誕】は「言いふらす」意で、貴種の出生などが喧伝されたのが転化の源
    第一回総選挙の衆院議員と貴族院によって可決された(間接統治≒国家の連続性が保たれた)新憲法は前後に明治憲法以上の喧伝・宣伝を伴った
    「國際社会において」英語原文はan international society で、不定冠詞が付くことで明らかに国際連合=連合軍を示唆している。非武装の保護領化にさすがに抵抗し曲芸的翻訳/ベアテは「日本政府は感謝に銀杯をくれた」と自伝に書いたが、外国人原文は極秘であり「俺にもよこせ」との略奪であった。老女の朦朧妄想

  • 日本国憲法制定を記念した当時の様子を、当時に配布されたグッズ、発行された切手等で描いた本。GHQの監視を気にしながら国家的行事を実施しようとした滑稽さのような親しみのようなものを感じる。

  • 日本国憲法制定史に関する普通の歴史書を書いておきたかった、という著者の言葉が端的にこの本の特長を表している。

    「護憲派の神話か…改憲派の逆神話か…そういう類の歴史ではなく、ごく普通に、自分の政治的立場の色眼鏡越しにではなく、客観的に、史実に基づいて、日本国憲法の生誕を語ることが憲法学の専門研究者のあるべき姿ではないかと思っていた。」
    「物品史料という従来見逃されてきた沈黙のエビデンスから見える歴史を書いてみたいと思っていた。」
    というのがあとがきに書かれている。

    沈黙のエビデンスとして、日本国憲法を記念した、紙芝居、レコード、カルタ、章牌、メダル、ブローチ、帯留、バックル、メダル、銀杯、朱塗木杯、記念切符、絵葉書、切手、テキスト・パンフレット、映画、「皇室の御寫眞」、祝賀行事、といった事物とその背景を説明しながら憲法がどのように受け入れられたかを述べている。

    記念切符に基本的人権のイメージを図案化しようとして、でも基本的人権がよくわからないので国会議事堂の上に自由の女神が乗っかっているデザインがなされてしまう、というようなことが紹介されている。
    あるいは、政府は「憲法発布」ではなく「憲法公布」だとして新聞などはそれに従っているが地方では「発布」が使われていることが物品からわかる(発布は主権者が行うものなので「天皇による改正憲法の発布」を表に出したくなかった)。
    GHQと政府、あるいは保守派勢力がそれぞれの思惑で動いていることも書かれている。11月3日(旧明治節)に新憲法を公布することをGHQに認めさせるために半年後の5月3日を施行日とすることを先に決めたとか。

    いろいろ興味深い内容が多いのだが、なにげに面白いのは
    「自社への辛口のコメントも多いのに発表の機会を与えてくださり、いままた書籍化に尽力してくださった有斐閣編集部」に謝辞を述べているところ。
    初出については知らないが、本書に関しては、わざわざ書かなければ、辛口のコメントだとは気づかない読者も多いだろうに。

  • 東2法経図・6F開架:323.14A/E12n//K

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

江橋 崇 1942年に生まれる。1966年、東京大学法学部卒業。法政大学法学部教授(憲法学)を経て、現在、同大学名誉教授。
著書に『かるた』(ものと人間の文化史173)、『花札』(ものと人間の文化史167、以上、法政大学出版局)、『日本国憲法のお誕生』(有斐閣)、『「官」の憲法と「民」の憲法』(信山社)、『外国人労働者と日本』(岩波ブックレット)、『市民主権からの憲法理論』(生活社)。共編著に『外国人労働者と人権』『グローバル・コンパクトの新展開』『企業の社会的責任経営』『東アジアのCSR』(以上、法政大学現代法研究所発行/法政大学出版局発売)、『外国人は住民です』 『人権政策学のすすめ』(以上、学陽書房)、『象徴天皇制の構造』(日本評論社)、『岩波講座 現代の法』(岩波書店)、監修に『図説 カルタの世界』(大牟田市立三池カルタ記念館)、『麻雀博物館大図録』(竹書房)、『総合的学習に役立つ くらしと国の省庁』(小峰書店)。

「2022年 『百人一首』 で使われていた紹介文から引用しています。」

江橋崇の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×