江戸御留守居役: 近世の外交官 (歴史文化ライブラリー 89)

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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642054898

作品紹介・あらすじ

江戸留守居役は幕府・他藩との連絡・折衝、情報の収集に当る外交官である。その変遷をはじめ、情報媒体の種類・性格など、多彩な活動の実態を丹念に描き出し、近世武家社会の情報戦略に果した役割と歴史的意義を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 近世における留守居役の活動の実態を多彩な事例から説明。これまで遊興に明け暮れた反倫理的存在とみられがちだった留守居役の役割について(1)先例・旧格の紹介、(2)一般的情報の交換、(3)幕令の解釈・協議、の3点を主に挙げて、その政治的役割の重要性について叙述。おもしろい。

    もうひとつ特徴的なのが、「先例主義」は「権力の乱用による恣意的な政治を抑え、確実な資料に基づいて個々の事案を客観的かつ公平に決定する」 (p192)政治的習慣であり、それが「明治維新や自由民権運動のような近代デモクラシーのもとにおける政治行動にとって不可欠の前提をなしていた」 (p192)とまで評価しちゃうのは、ちょっと言いすぎじゃないかなあ・・・という気がしてしまいます。そもそも明治維新や自由民権運動が「近代デモクラシーのもとにおける政治行動」と言っていいのか、という問題もありそうだし・・・。

    それから「留守居役は明治維新を迎えると「公議人」と名称を改め、朝廷政府の下で一藩の意志を表明する代表者として位置づけられていく」(p194)とあるが、細かいようだが留守居役的な役割は公議人ではなく公用人に引き継がれるように(法令上は)定められていたと思うんだけど・・・。もしかして、人的な連続性があるのかな?でも最後にさらっと書いてあるので、ちょっとどういう意味だか、図りかねるところはあります。

    とはいえ、多様な史料に基いて留守居役の政治的役割に脚光を浴びせたその手法は見事の一言。真似できません。

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター名誉教授、大阪学院大学法学部教授。博士(文学)(京都大学)。専攻は日本近世史・武家社会論。主な著書に『主君「押込」の構造』(平凡社)、『士(サムライ)の思想―日本型組織・強さの構造』(日本経済新聞社)、『武士道の精神史』(ちくま書房)、編著に『徳川社会と日本の近代化』(思文閣出版)、『徳川家康─その政治と文化・芸能』(宮帯出版社)ほか多数。

「2020年 『信長の自己神格化と本能寺の変』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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