龍馬暗殺 (462) (歴史文化ライブラリー 462)

著者 :
  • 吉川弘文館
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642058629

作品紹介・あらすじ

薩長周旋の立役者坂本龍馬が殺害された近江屋事件。史料も多く、事件のあらましは判明しているのに、なぜ謎多き事件として惹きつけられるのか。襲撃者の供述を再検討し、薩長土や会桑勢力の動向から、慶応3年の京都政局の対立軸を明らかにし、事件の真因を究明。事件後の政情や、衰えない〈薩摩〉説の起源と誤謬も解き明かし、暗殺の深層に迫る。

感想・レビュー・書評

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  •  坂本龍馬殺害の「犯人」が京都見廻組であることは明治の早い時期に確定していることで、「龍馬暗殺」というテーマ自体がもはや学問的に生産性のない、好事家の素人談義に成り下がっているのが現実である以上、通例ならまずこの種の本を読もうとは思わないが、元々小説家ではあるが学術論文の業績もある著者なので手に取った。

     龍馬殺害の経緯については通説以上になるべくもないが、殺害の「指示」者については大政奉還・公議政体路線に反対する会津・桑名藩を推定し、薩摩藩在京首脳に対するテロ計画(未遂)の延長上に位置付けている。また大政奉還から王政復古政変までの政局について、特に薩摩・土佐関係や大政奉還の勅許過程の考察で、近年の先行研究を吸収しつつ、いくつか目新しい視座を示している。巷間に溢れる荒唐無稽な「薩摩陰謀説」を徹底的に論難しているが、陰謀説流布の背景として、公議政体派と武力倒幕派を対立的に見た戦後歴史学の枠組の影響を見出しているのが興味深い。

  • 英雄化された「坂本龍馬」を否定し、文献に忠実に当時の情勢を探りながら、近江屋事件の真実に迫ります。実行者が見廻組であることは真実。では、それを命じた黒幕は一体誰なのでしょうか。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/704607

  • 暗殺にいたる歴史的経緯についてそんな興味がないので「へーなるほど」という感じだったが、なぜ「薩摩黒幕説」が広まったかというのを考える箇所は、面白かった。旧幕府支持の人々が、旧幕府の立場を正当化するために、公議政体論の代表として龍馬を設定したうえで、彼を討幕派の薩摩が殺す、という筋書きを描いたという。

    古い薩摩黒幕説の主唱者が、蜷川新という法学者で、父親が上級旗本で小栗忠順の甥だった、という。

    また、戦後歴史学が公議政体論(大政奉還派)と武力討幕派(王政復古派)の対立として維新史を描き、後者が優越したとした。後者の勝利は、領有権を全国的に天皇に統一する絶対主義権力の確立を意味する(原口清の説)。

    この戦後歴史学の見方である公議政体論対武力討幕派という二元論(そして幕府・一会桑などの勢力を無視すること)が、薩摩黒幕説の構図と一致しており、一般の歴史ファンに誤解を与え薩摩黒幕説が成り立つ間隙を許したのではないか、という。この指摘は面白かった。

  • 薩摩の小松帯刀、西郷隆盛、大久保一蔵といった、会津桑名側が大政奉還を成功させた主たる人物と認識している彼らの身代わりとして、うっぷんを晴らす手っ取り早い標的にされたという主張が全て。薩摩の陰謀は存在しない。

    大政奉還直前、竜馬一行数人が秘密で京都入りしたのに、300人くらいの海援隊隊士を引き連れて竜馬が京都に来たというかわら版がすぐに京都に流れたという話(P.133)は、ちょっと笑った。すでに世間的にも有名人だったのね・・・

  • 東2法経図・6F開架 210.58A/Ki54r//K

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著者プロフィール

桐野作人 きりのさくじん  
1954年鹿児島県生まれ。歴史作家、武蔵野大学政治経済研究所客員研究員。歴史関係の出版社編集長を経て独立。戦国・織豊期や幕末維新期を中心に執筆・講演活動を行う。
主な著書に『織田信長―戦国最強の軍事カリスマ』(KADOKAWA)、『本能寺の変の首謀者はだれか』(吉川弘文館)、『真説 関ヶ原合戦』(学研M文庫)、『島津義久』(PHP研究所)、『さつま人国誌 戦国・近世編』1・2・3(南日本新聞社)など。

「2022年 『関ヶ原 島津退き口 - 義弘と家康―知られざる秘史 -』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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