〈謀反〉の古代史: 平安朝の政治改革 (歴史文化ライブラリー)

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  • 吉川弘文館
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642058872

作品紹介・あらすじ

天皇主導の時代から、貴族が主役の時代へ―。平安時代前期、充実した国政運営が進展する一方で、承和の変をはじめとする謀反が頻発した。国家が発展して、なぜ政治的混乱が起こるのか。有能な官僚による「良吏政治」の下で変質する天皇のあり方や、貴族と天皇の君臣関係を読み解き、政治を動かす巨大なエネルギーの実態を浮き彫りにする注目の書。

感想・レビュー・書評

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  • 忽然と湧いた古代史への興味から読んでみた作品で平安初期の政治形態の変化について解説されている。元々奈良に都があった時代は天皇家と同格と言ってもよい大豪族中心のいわば合議制のような政権であったものが諸々の政変や乱を経て遷都も行うことによって官僚制に移行していく過程が解説されている。特に興味深かったのは教養に対する重視で、教養溢れる文章を書けると外国にも侮られなくなり戦争も回避できる、とされていたことでそのために官僚候補の子弟については必ず一定の教育を受けさせることといった指示が出されていたり、その数年後には勉強させてもダメな奴はダメだから見込みのない奴は(たぶん周囲の迷惑になるだろうからか)必ずしも教育を受けさせなくとも良いといった指示が改めて出されていたり、といった部分。豪族の合議制から天皇中心の集権的な国家から貴族中心の政治形態に変化していく様子や変化の原因について簡潔に整理されており歴史書というよりも歴史小説を読んでいるような楽しみ方ができました。

  • 通説とは違う説明に挑戦する姿勢が好意的。だが、その説明の仕方として、ところどころ言葉足らずなため、伝わりにくい箇所がある。この書に限らず、歴史ものは、一つの出来事をどう解釈するかであり、根拠なく言えるものではないのだが、根拠だけを求めていると、「肝心なことはわからない」と言うしかない場面が多々ある。ゆえに、著者の考える説が憶測交えて書かれることが避けられないため、複数の視点からの書を読む必要がある。この本の良かった指摘は、基経が外戚関係を避けたという点。また、嵯峨天皇の位置付け、その後の天皇と官僚たちとの関わり方、などの展開がわかりやすかった。

  • 奈良時代から平安時代へ移行する時期以降に起こった謀反とは、その首謀者とされる人物が皇位継承や権力掌握のために引き起こしたというよりも、政治の方向性をめぐってそれぞれを支持する官人=貴族たちのせめぎ合いが根柢にあるという見方ができる。それら官人層の成立は平城・桓武朝の政治改革志向によるもので、年代が下るにつれ天皇の地位を絶対的なものではなく政治のパートナーとみなされる状況になった。

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著者プロフィール

1960年、岡山県生まれ。1992年、東京大学大学院博士課程単位取得退学。現在、法政大学兼任講師、博士(文学)※2019年9月現在
【主要編著書】『律令国家官制の研究』(吉川弘文館、1997年)、『平城天皇』(人物叢書、吉川弘文館、2009年)、『皇位継承』(共著、山川出版社、2019年)

「2022年 『律令国家官制の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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