文禄・慶長の役 (戦争の日本史16)

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  • 吉川弘文館
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642063265

作品紹介・あらすじ

国内統一戦争を進めつつ、豊臣秀吉がもくろんだのは、明帝国のもとに築かれた東アジア世界の秩序刷新だった!秀吉の思惑に翻弄された日本の武将、朝鮮士民の姿を描き、後世にまで禍根を残した戦争の実像に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 中学・高校の日本史では朝鮮出兵という名称でサラリと習った戦争。朝鮮南部で多少戦闘したくらいと思い込んでいたが、戦役序盤に連戦連勝で漢城陥落どころか平壌まで攻め入る、加藤清正においては女真族と戦いに北上したとは知らなかった。100年続いた戦国時代で武士団が戦争に慣れている、世界一の鉄砲を持っているなど日本軍の強さもあるが、序盤の朝鮮の弱さは危機管理の欠如と悪政により人心が離れていた事が要因であろう。最近は耳にしないが「秀吉の侵略で朝鮮の古文書が喪失した」という話も日本に責任転嫁しているだけだと思っていたが、民衆が都城を襲って略奪した事実から少なくともトリガー弾いたのは秀吉であろう。圧倒的な兵員数の明軍に少数で勝利した泗川の戦いなどは単純にエモい。

  • 秀吉による対外戦争について、その起こりから戦後処理までの経過を主に日本側の視点から丹念に追跡した内容。諸将の動静、政治情勢との関連、国内外にもたらした影響など、戦乱の全体像が分かりやすい。

  • 朝鮮出兵の経緯と結末がポイントよく説明され、あらましを知るには最適の一冊。もともとは明征服を目的とし、千年以上続く中華冊封体制を否定する、秀吉による東アジア新秩序を企図した戦争だった。釜山上陸から漢城陥落までのスピードは、戦慣れした軍隊が無防備の国を圧倒する様が如実で、苛烈な身分制度による圧政を厭う民衆の一部が日本軍に協力さえしたエピソードは、当時の朝鮮社会の一端を浮き彫りにする観があった。その後の朝鮮と明との交渉には、日本側でも不統一があったようで、戦争に対する各要人の考えの差異が、戦役を結局朝鮮半島内に留めたように感じた。鼻削ぎ等残虐行為が目立つのは後半の慶長の役で、この頃には出口が見えない事態の泥沼化が現出されるが、秀吉というリーダーひとりの死によって(紆余曲折はありながらも)一気に収束に向かうさまは、後年の大東亜戦争と根本的な違いが明白。約300年を隔てた2つの戦争の対比は、東アジア全体でもっと検証されても良いテーマに思えた。

  • 豊臣秀吉による朝鮮侵略戦争の歴史。16世紀末に日本を統一した豊臣秀吉が、中国の唐、明の征服を目指して起こした戦争。
    佐賀の名護屋城を見学したのがきっかけで、もう少し知りたくなって読んでみた。表向きは朝鮮との戦争になっているが、秀吉の本当の目的は明の征服であり、朝鮮はその通路を確保するために必要なルートだった。 事前の使節との交渉で秀吉に大きな誤解があり(朝鮮が秀吉に服従したと考えていた)、それが戦争に繋がってしまった。
    日本軍は名護屋城に集結し、朝鮮半島に渡り連戦連勝で奥深くまで進撃したが(加藤清正は北朝鮮まで進撃した)、明の参戦と共に押し戻されて撤退するが、講和が進まず再度戦争になる。 結局、秀吉の死でこの戦役は終了となる。
    10年以上にわたる戦役だが、日本での認識は薄い。学校では、歴史年表で年号を覚える程度で、ほとんど学習することはない。日本にとっては汚点と言うべき戦争だが、それを知らずに朝鮮のことを語っていた自分が恥ずかしくなった。
    捕虜となった朝鮮人たちは人身売買され、日本に連れて来られ奴隷として使われたらしい。彼らには 忘れられない屈辱の歴史がある。戦争は勝ち負けだけが問題ではない。そこで何をしたかが問題なのだ。日本には学校で教えない歴史がまだまだあると思う。自分で歴史を掘り起こして学ぶしかない。

  • NH3a

  • 結局、何故秀吉がこの無謀な戦争を初めたのかよくわからん。年取ってボケてたって話(単なる伝説か)もあるが、計画自体は北条攻めより前の九州制圧くらいにはあったようだし、ちょっとそれは違うだろう。戦争のそれぞれの局面でとった戦略はかなり的を射たものだったし。
    著者は、元々信長が持っていた構想を秀吉が引き継いだという説を述べているけど、それもすぐには信じがたい。物凄い労力を払って明の内陸部まで制圧するよりも、南蛮貿易の拠点になるような港湾を占領していくほうがよっぽどオイシイと思うんだが。
    戦術的には、鉄砲を大量に導入した日本が、明・朝鮮に対して圧倒的な強さを見せていることがわかる。ただ、補給線の脆弱さと大局での戦略の欠如により、どんどん守勢に追い込まれる感じ、って50年ちょっと前にあったような話だなぁ。

  • 戦闘だけではなく、現地での両班と民衆の離反を狙った施策や、小西と明との外交交渉、戦争後の顛末など、あまりよく知らなかった内容が盛り込まれていて参考になった

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。1985年、九州大学大学院文学研究科博士後期課程中退。現在、九州大学大学院比較社会文化研究院教授 ※2022年8月現在
【主要著書】『豊臣政権の対外侵略と太閤検地』(校倉書房、1996年)、『文禄・慶長の役』(吉川弘文館、2008年)、『石田三成伝』(吉川弘文館、2017年)、『太閤検地』(中央公論新社、2019年)

「2022年 『黒田孝高』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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