- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784642073172
作品紹介・あらすじ
琵琶法師たちに語られ流布した軍記物『平家物語』には、危機にみちた日常を生き抜いていった人びとが数多く登場する。そのなかから10人を選び出し、彼らを中心とする人間模様を通して作品を読み解き、その魅力に迫る。
感想・レビュー・書評
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平家物語の入門書としてとても良かった。
平家物語には千人をはるかに超える人物が描き出されているが、特に代表的な登場人物十人を選び出し、それぞれの生き方を追いかけることで平家物語を理解しようという、人間群像からのアプローチ。
その十人とは、平忠盛、祇王・仏、俊寛、文覚、平清盛、木曽義仲、源義経、平忠度、平知盛。人物の生き様を追い、時に原文を引用して、時に同時代の他の文献もあたってその人物像に迫る。
(解説に建礼門院徳子も入れるべきだったのでは、と書いてあって、それは確かにと思った)
平家の実録記を筋としつつ、仏教の教えが織り込まれていたり、さまざまな語り手による挿話を取り込んだことで抒情性や地理的に広範さを有していたりする、平家物語の豊かさが解説されていた。また、さまざまな語り手の声を取り入れた結果、一人の人間の良い面と悪い面のどちらをも立体的に描けた、という文学作品としての魅力も。
(引用)
159p『平家物語』に登場する人間群像の、ひとりびとりに見られる全力的な生の燃焼は、人間の運命をまさしく確認した、このような思想にささえられて実現されており、こうした精神に導かれて、新しい時代もひらけていったことを、『平家物語』は、その全作品の展開によって語りつづけているのである。
(※このような思想→諸行無常・盛者必衰の道理と法則とを確認することによって、そこから生へのかぎりないいとおしみも生まれ、また旺盛な行動へと進み出ることも可能になってくる、ということ)
169p 物語の終局で響く寂光院の鐘の音は、冒頭の祇園精舎の鐘の音とみごとに響き合っている。鐘の音には鎮魂の意味が込められているように、すべてを見てきた二人を送るにふさわしい情景であったろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2023.07.15