「テンヤツって何?それって食べられるの?」と思ってた…初めて読んだ森下典子さんの著書
初め、私は彼女があの伝説の典奴であることに一切気づかなかったのです。「ぷるっとした」というタイトルの語感に惹かれた一方で「テンヤツって何だろう? 食べ物の名前かな?」と思っていたものでした★ のりやっこと読むとわかっても、しばらく記憶がつながらないままだった……しかし、その件は脇に置いておくことにします。
巷ではすっかり「お茶の先生」というイメージのついた著者。しかし、典奴あらため森下典子さん著作を何作か読んできたなかで、私は『日々是好日』のお淑やかな雰囲気よりも、初めて出会った『典奴のぷるっときた話』のたまらぬ味を思い出すのです★
『日々是好日』に書かれたお茶の時間(茶道)のお話も、もちろん興味深く読みました。四季のうつろいや深い慰めをしみじみ感じ入ることがある、つらいことがあった時ほどお点前がしみる、といった精神の世界は尊いものと存じます。
しかしながら、私には侘茶よりも、お姐さんの二日酔いの体を蘇らせるジュースや凝りをほぐすマッサージのほうが、慕わしい世界なのどすえ。身近なお疲れさんエピソードが身につまされる『典奴のぷるっときた話』、こっちだって立派に五感をフル動員する体験と言えるでしょう★
比べることはないのでしょう、2冊とも同じ人が書いたんだし面白いことに変わりはない……と思いながらも、文字であらわすとなんだか比較になってしまうね★
完全に個人の好みの問題ですが、疲れたお嬢さんの話ってのが楽しいんです。完全にトドになったおばさんではなく、大変そうなお姐さんというのがポイントです☆ とぼけた調子でおもしろおかしくもちょっと哀愁を感じる本書は、典奴エッセイのなかでも「勝手に好きランク」で上位に来ます。
のりやっこよ、永遠なれ♪
引き合いに出していいのか分かりませぬが、壇蜜さんのご著書の雰囲気や語彙を好まれるかたにも、一読をおすすめしたく思います。