島津氏からの圧迫があったにせよ琉球王府の八重山への苛政。機械的な人頭税のために、田を耕すために船でときには20キロ先まで通う。村の通りからこちらの区画は全員他の島へ移住など。また太平洋戦争後の農業のつらさ。復帰後に二束三文で土地を取り上げられたり、減反調整にあってせっかくの田畑が荒廃していく挿話。反面、アメリカが道をつくってくれた、マラリアを撲滅してくれたという声も。対立は、琉球王府、日本政府、アメリカ軍政治対民衆だけではなく、島どうしのものも。また著者が一年の滞在で見た離島における離島ならではの論理。ある面受け入れてくれても、最終ラインはよそものと思われてしまうところなど。不思議に思うのは、これほどの結束力をもつ村落が、なぜ無人島になってしまうまでバラバラに解体されてしまったのか、という視点。月刊誌、週刊誌を石垣市で買うと、本の定価より二十円高くとられる。これも運賃分とか。定価のほかに別料金をとるような地域はほかにもあるのだろうか、という疑問。百姓の歌や踊りは、百姓が歌い踊って、はじめてその味が出るのではないかと思う、なのに農業の担い手はどんどん減って、形だけ残っても…というなげき。などなど、当時の八重山の知らなかった一面を垣間見せてもらう。