温かなお皿 (メルヘン共和国シリーズ)

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  • 理論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (131ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652072172

感想・レビュー・書評

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  • 江國香織さんの本は、何となく避けていた。
    バブル時代に二十代の一番いい時を過ごした人の書く、いかにもスタイリッシュな作風なのでは…と勝手に思っていたので。
    確かに涼やかでカッコいい感じはするのだが、一つ一つが短い短編集だからこそ、切り取る背景とか人物描写などが、ムゥ〜と唸るほど巧みで面白い。様々な年代の男女の人生の一片を濃密に味わえる。2019.2.2

  • 食事、もしくは食べ物が登場する短編たち。
    90年代前半のドラマの再放送を観てるみたいだなと思いながら読んだ。巻末を見ると、初出は1991年とのこと。自分の嗅覚に間違いはなかった。
    スマホどころか携帯電話すら珍しい描写から90年代前半の匂いを嗅ぎとったわけではない。
    話に登場するひとたちの口調、仕草、行動、そういうものの一つひとつがどうしようもなく、90年代前半だったのだ。

    幼かった自分は、90年代前半の生活をリアルに覚えてはいない。自分が知っている当時の時代は全部ドラマの再放送による追体験に過ぎない。なんとなく大げさで、今よりも感情的。みんなが同じテレビを観て、同じCDを買っていた時代。

    1991年がもうすぐ30年前になるということに驚いてしまう。文化は変わり続ける。ずっと変わらない生活もある。
    きっと今から30年後のひとが2020年のテレビドラマを観たら、古臭さを感じたり、ノスタルジックな気分になるんだろう。でも、そのひとだって食事はするはずだ。1991年、2020年、2050年、どの時代のひとだって食事をして生活をする。
    「アイスクリーム」という声がメリークリスマスに聞こえることは何十年後もあるはず。

  • 生きてゆく上で
    “食べる”という行為が

    どれだけ豊かで
    そして切ない断片の積み重ねなのかということを
    ゆるゆると気づかせる作品。

    口に入れて 咀嚼して のみこむ

    ただそれだけの事。

    なのに
    なのにだ。

    どうしてこんなに
    苦しいのだろう

    どうしてこんなに
    愛しいのだろう

    それは届かない場所にあるのではなく


    すぐそばにある
    温かなお皿にあるのだ

  • 登場人物たちの日常を、食べ物と共に描いた短編集です。

    大半の作品が10ページ前後で完結するので、もっと読みたいと思ってしまうのですが、短いからこそ心に響くものがあり、際立つものがあるのかもしれません。

    久しぶりに読みましたが、読む度に様々な感情を想起させる、温かみのある良い短編集だと改めて思いました。

  • 短編集。

  • ドラマ版が大好きな『温かなお皿』の原作(江國香織 著)をようやく手に入れて読みました。ドラマ版の脚本は短編集である原作をうまくマッシュアップしてあったのだなぁと感心しました。

    原作短編集でもドラマ版の重要なモチーフになっている『ねぎを刻む』が最高です。これは江國香織版『納屋を焼く』だと思います。胸掻きむしっちゃう。けどね、ちゃんとラストは上向いてるんだよなぁ・・・応援しちゃうよなぁ。

    そして『冬の日、防衛庁にて』。自分の旦那と不倫してる歳下独身女性を食事に誘う妻の凄み。全く悪意を感じさせずに、攻撃的な言動も無しに、完膚なきまでに格の違いを見せつける!これをドラマ版では今井美樹と水野美紀でやってるんですよ。

    原作で妻(今井美樹)が食べるのがミラノ風カツレツなんですけど、これがドラマ版だと手長エビのスパゲティなんですよね。それを今井美樹が手を使って豪快に、だけどエレガントに食べる。水野美紀の方は友人からの事前のアドバイスに従って、食べ方が難しくない無難なオーダーをするわけです。

    【ネタバレあり】

    『「ああ、おいしかった。よかったわ、あなたにお目にかかれて。清水があなたに惹かれるのもよくわかる」

    (中略)

    私はもう抑制がきかなくて、声をだしてしゃくりあげる。私を泣かせることなんて、この人には朝飯前だったのだ。修羅場の方がずっとまし。泣きおとしの方がずっとまし。』

    修羅場の方がマシだったと愛人に言わしめるガチのマウント・・・。怖い。

  • 食べ物に関連した、ごく短い短編12作品。短いから余計に、それぞれに違う登場人物の人生の切り取り方がつくづく上手いなと感心する。少しずつ上質でユニークなお料理が出てくるコース料理を、お腹いっぱいに食べ終わったきもち。

  • 短編集なので読み切りやすくとても息抜きになった。
    一気に読んでしまった。
    瑞々しい世界でいいですね。

  • どうしたって生きるには食べなきゃならない。
    ダイレクトなんだよね、生活に。
    今まで食べてきたものはいつも思い出とセットだし、やっぱり食べるってあったかい。
    『晴れた空の下で』と『緑色のギンガムクロス』が特にすきだったな。

    気持ちも肉体もどんどん健康にしてくれそうな、それはきちんとしていて無駄のない、まったく上等の粗食だった。

  • この人の書く文章は優しくてほっ、とします。
    寂しい物語でもちょっと修羅場になりつつある物語でも不思議に穏やかに読めるのが良い。
    食生活に気を遣う母に隠れて『身体に悪そう』なものパーティーをする子供たちの話とそれぞれの母親を羨む小学生の作文の話がくすりと笑えて楽しかった。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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