- Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
- / ISBN・EAN: 9784652078259
感想・レビュー・書評
-
5年前、10年間認知症だった母が死んだ。離れて暮らしていた自分は介護には1年に数日ほどしか携わらなかった。この本をその頃読めていたら…もっと早く読んでおきたかった。
「老人ホーム」→「宅老所」へと至った著者の語りから、「こんなふうに自分も介護してほしいな」と思った。
p167~抜粋
「当たり前を生きる」
年を取れば人間はみな衰える。それは自然の摂理。ぼけもまた加齢による生理現象のひとつなんだ。当たり前のこと。その「ぼけ」に障害を与えているのは社会のほうなんだ。住み慣れた地域から離れ施設や病院をたらい回しにされることでお年寄りたちは混乱する。その混乱を力ずくで押さえ込むことで「ぼけ」はますますひどくなる。
「ぼけ」ることが素晴らしいなんて思わない。素晴らしいと思えることは、人はたとえ「ぼけ」ても一生懸命に生きるということ。そのことを認めない社会をぼくたちは望まない。
どんな人だって「必要のない人」などいない。ひとりひとりの存在が認められてこそ社会は構成される。人は社会を創り、その社会から人は創られる。「ぼけ」ても安心な社会を創りたい、とぼくは思っています。
↑
村瀬さんの『ぼけても安心な社会を創りたい』という言葉、心から共感します!ほんとにそんな社会を創りたいな!そのために、ひとりひとりが どう行動すればよいか。そのヒントが得られる書だと思います。 -
もうすぐ傘寿になるウチのバアちゃん。最近はバアちゃん家に遊びに行ったりすると「あ。バアちゃん、独自の時間軸で生き始めてるな」と感じる事が多くなってきました。
そこで、数年前に「よりみちパン!セ」シリーズから認知症に関する作品が出ていた事を思い出し、この度近所の図書室でお借りしてきた次第。読んでよかった。欲を言えばもっと早く読めばよかった。
特別養護老人ホームや宅老所など、老人福祉の現場で著者が出会い、そして看取ってきたお年寄り達との日々。
生きるっていうのは「食べる・排泄する・入浴する・眠る」の繰り返しで、たったこれだけの中にも1人1人が積み重ねてきた人生が否応なく滲み出ていて、それが時には悲しく時には滑稽で、何度も泣いたり笑ったりしてしまいました。
スピードと効率ばかりを追求してきた従来の介護を反省し、ゆっくりと流れる「老いの時間」を大切にしよう。そしてお年寄り達に寄り添う人々もまた、一緒に生活を楽しもう。
著者のこのようなスタンスに、感銘を受けました。
ウチのバアちゃんは同じ話を何度もするけど、その話の中身は決まって、4人の子ども(私の母は4人兄妹)の手を引いて歩いた思い出で。
毎回毎回、新鮮な気持ちで「1人はおぶって、2人は手を繋いで、国鉄の線路沿いを歩いたもんだよ……」と話してくれるバアちゃんに、私もやっぱり新鮮な気持ちで「バアちゃん、1人おぶって2人手繋いで、あと1人はどうしたのさ?」と突っ込んでいます。 -
「中学生以上すべての人のよりみちパン!セ」というシリーズの1つ。
中学生も読めるということから、イラスト豊富で文字間隔や量も読みやすく、ふりがなもふってあるよう。
祖母と暮らしてきた経験から、私にとって『老い』は身近でずっと気になるテーマ。
とても平易で、でもとても刺さる言葉で綴られるこの本は、今年2冊目にして「手元に残したい大切な本」No.1と思うくらい良かった。
ほっこり、にっこりするシーンも、吹き出してしまうシーンも、涙がこぼれる部分もあった。
〝老いた人〟が身近な人も、そうでない人も、読めばきっと何かはっとさせられる事があると思う。 -
笑って死にたい
見守る方の考え方 -
「老いる」「ボケる」「死ぬ」どんな人にも起こること。でも普段はあまり考えていなくて、ある日突然そんな日がきたら、きっと戸惑ってしまいます。周りの人が、好きな人がボケてしまったら、どうしたらいいだろう。自分がボケたらどうだろう。本当にして欲しいこと、幸せなことはなんだろう。今までのこと、これからのこと、考えました。エピソード4コマ漫画は読んでいて温かい気持ちになるのに、実際に自分の身に起きたら…そう考えると、こんな風に互いに認め合って、一緒に生きる余裕を持ちたいなと思いました。
-
この本は、実際に老人介護に長年携わり、様々な老人たちと出会い接してきた著者が描く、リアルな老人介護の現場の記録です。
私の場合は母が老人介護の現場に勤めていることもあり、読む機会を得ました。認知症というものは、自分の身内がそうなる可能性もあると同時に、自分も例外ではありません。
その人の言うことがどんなに理不尽に思えても、意味不明な行動に見えても、本人にはちゃんとした理屈があってやっているのだということを、この本を読んで改めて実感しました。
私は、そういった人達に接する機会があった時に、この本を思い出したいし、私がいつか認知症になるようなことがあれば、この本の著者のように接して欲しい。
オレンジ100%のどこかとぼけたイラストのおかげもあって、内容の割に気楽に読める本です。読む機会がありましたら、どうぞ気楽に、けれど真剣に読んでほしい一冊です。 -
福岡の宅老所、第二よりあいの村瀬さんが書いた本。
ぼけたお年寄りに付き合う毎日の繰り返しを、面白おかしく、でも大真面目に、そして感動的に書いている。
介護とは生きることに付き合うことだということを、さまざまなエピソードから学べる。
おそらく、中学生くらいを想定して書いていると思われる文体だけど、大人が読んでも十分面白い。
介護業界の中には、村瀬さんのことをあまりよく言わない人もいるけれど、私はすごい人だと思う。
これだけ、人間(介護)の本質をしっかりとらえて、わかりやすい言葉で表現できる人はそういないんじゃないかな。 -
自分のおばあちゃんを想った。
人の生と死とともにすごすことは、ひとりひとりの人と思いやりの心を持って同じ時を過ごすことなのだろう。
介護とかケアとかそういうこと以前に、人と接することの原点を教えてくれる。 -
「「ぼけ」ることが素晴らしいなんて思わない。素晴らしいと思えることは、人はたとえ「ぼけ」ても一生懸命に生きるということ。そのことを認めない社会をぼくたちは望まない。」
最近お気に入りのよりみちパン!セシリーズ。基本的に小・中学生向けなので、非常に分かりやすく物事を説明してくれる。
今回は、「宅老所よりあい」という施設で働く村瀬氏の手記。
「ぼけ」たご老人がどんなことを言っているのか、どんな行動をするのか、ということをユーモアというのか実際にそのようなのだと思うけれど、決して深刻にならず丁寧に書かれている。
この人がいるところに、死ぬときにいれたらいいなぁ、なんて思わせてくれる。
それぐらい、「ぼけ」ることに寄り添ってくれる姿がよく分かる。
といっても、最近の私のウィークポイントは、貧困にしても、難民にしても、介護にしても、本という媒介を通じた知識しかないこと。
現場にいないなぁ。ということが、気持ちを萎えさせる。といって、現場に踏み込む勇気なんて結局ないんだ、弱虫め。
最後の、谷川俊太郎さんの文章も考えさせられた。
【8/1読了・初読・市立図書館】 -
なかなか衝撃的なタイトルで、中高生に紹介するとそれだけでなんともいえない笑いがとれたりしてしまう本なのですが、これは福祉や介護のことを考えてみたいという人には最適な入門書といえる一冊ではないかと思います。とにかく、たいせつなのは“ぼけ”ていようがいまいが、最後のひと時まで人間には一生の時間がきちんとまわっているということ。他者がよかれとおもって勝手に干渉してしまってはいけませんな。
いつも多くのいいねありがとうございます。
離れて暮らすご家族の介護は大変でしたね。私の場合も(状況は違...
いつも多くのいいねありがとうございます。
離れて暮らすご家族の介護は大変でしたね。私の場合も(状況は違うと思いますが)亡き母が軽い認知症で思うところはいろいろありました。
村瀬さんの『ぼけても安心な社会を創りたい』という言葉心強いですね。
自分がぼけても一生懸命楽しく過ごしたいです。近所の図書館にありましたので、ヒントが得られるなら読んでみたいなと思いました。
こちらこそいつもありがとうございますm(。-ω-。)m
ベルガモットさんのおかあさまも 軽度の認知症で亡くなら...
こちらこそいつもありがとうございますm(。-ω-。)m
ベルガモットさんのおかあさまも 軽度の認知症で亡くなられていたのですね…。少し、自分の境遇と似ているのかな、と思いました。
『よりみちパンセ』シリーズということで、こどもにも読みやすい内容でしたし、介護に関心のある大人の方にもぜひ(*^^*)