きみが選んだ死刑のスイッチ (よりみちパン!セ 45)

著者 :
  • 理論社
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652078457

感想・レビュー・書評

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  • 罪と罰、冤罪、裁判員制度、死刑の4章で構成されている。
    中高生向けに書かれているので丁寧にわかりやすく説明されており、日本の司法制度の欠点がかなり明確に見えてきたように思う。

    昔から、死刑について漠然とした違和感を抱いていた。
    人の命は何よりも大切なはずなのに、どうして国が人を殺すことは許されるのか?
    その違和感を持つことは、正しいことなのだと思った。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「その違和感を持つことは、正しいことなのだと思った。 」
      ビヨーク目当てで観に行った「ダンサー・イン・ザ・ダーク」。観終えたらヘトヘトにな...
      「その違和感を持つことは、正しいことなのだと思った。 」
      ビヨーク目当てで観に行った「ダンサー・イン・ザ・ダーク」。観終えたらヘトヘトになってしまった。やっぱりラース・フォン・トリアーは肌に合わない。合わないけど「死刑」は嫌だと心底思った。。。
      でも陰惨な事件で子どもが被害に遭うと、考えを翻しそうになる。
      2014/05/14
  • 犯罪は憎い。一生を持って償うべく重い判決が降りて欲しい。
    でも、冤罪が存在する限り、死刑制度は危険。冤罪が生まれるメカニズムを解くことが一番大事だと、中学校の頃からずっと思い続けていました。
    免田事件や甲山事件など、長年の裁判の上無罪となった事件は、ギリギリのところの運と支援と被告人の健康がなければ、有罪になった可能性があります。

    なぜ冤罪が起きるのか。
    松本サリン事件で逮捕された男性が弁護士に言われた言葉が掲載されていて、合点がいきました。「警察は犯人を作るところなんだよ」

    私は2時間サスペンスを見るのが好きですが、ほとんどのドラマで、2時間の間で誤った容疑が生まれます。
    容疑を晴らすために、名探偵や名刑事が存在し、絶対に冤罪でドラマが終わらないことがわかっているから安心してみれるのですが、現在の社会ではこうはうまくいかないことが多いだろうと都度感じています。

    昨今、検察のトップの不祥事が大きく報道されました。厳しく隙のない立証をすべき立場であるべき方です。三権分立が破られ、国家が司法に歪曲して介入しているように見えました。
    昨今の日本のワイドショーは、冤罪推定無罪を踏まえて報道すべきところを、無責任に情報をリリースしています(判決が下りるまでは、犯人という言葉は使うべきではない)

    自分も含め誰しもが、もしかしたら冤罪被害者になる可能性はあります。弁護人と接見できない代用刑事施設があり、取り調べ官が勝手に調書をまとめることが存在する限り。

    この本は死刑についてどう思うかを問う本ではありますが、三権分立、刹那的なマスコミのあり方について思考を深めることができます。

    個人的には、極東裁判を取り扱ったところが面白かったです。東條英機元首相の太平洋戦争ー死刑までの動きと心情、知りませんでした。

    戦争は扇動で生まれるものだと感じました。

    ワイドショーはもう見なくないな。。


  • 『いのちの食べ方』『世界を信じるためのメソッド』同様とてもわかりやすく、「自分でちゃんと考えてみて」「目を反らさず現実を直視しよう」という姿勢が貫かれていてとても良かったです。「裁判員制度」「罪」「罰」「死刑」について、読む前と読んだ後では私とそれらの距離が随分縮まったと思います。子どもだけでなく大人にも読んで欲しい一冊です。親子で読んで感想を述べ合うのもいいと思います。死刑がどのように行われているのか、裁判員制度はどうして決まったのか、そもそも裁判とは何か・・・大人もちゃんと知らないことが順を追って丁寧に書かれています。(導入の漫画(ホームルーム)も身近なテーマでいいです。)死刑の描写や世界によって容疑者の報道の仕方が違うことは私にとってショッキングで、この本を読まなければ知りえませんでした。また、「罪刑法定主義」「無罪推定原則」という言葉も初めて知りました。この本は私たちが(意識的にも無意識的にも)いかに裁判や人を裁くことについて目をそむけているかを教えてくれ、(裁く側になった時)「きみが選んだ」死刑のスイッチの重みを教えてくれます。最後に森さんは「これは僕の意見。僕は思いきり自分の意見を書いた。あとはあなたが考えること。」と念を押しています。裁判というテーマですが、私たちに「もっと自分の力で考えて」と警告してくれているような気もします。

  • 比喩的な意味での死刑のスイッチかな?と思っていたけど、ダイレクトにリアルに考えてみてください、と。
    考えてみたけども、私は押せないな。
    という事は、日本の死刑の制度、裁判の制度について、もう少し考えないといけないな、と。
    それだけにとどまらず、国家とは、法律とは、個人の暴力、国の暴力、物事のいろいろな側面、単純化の危険性・・・、いろいろな問題が盛り沢山でした。

  • 裁判員制度と死刑について、そしてこの国の犯罪報道のありかたについて、著者だからこそ描き得た客観的かつ主観的な本。小・中学生でも分かるようにやさしく語りかけながら書かれたこの本を読めば、読者それぞれが死刑について、裁判員制度について考えるきっかけになるはず。そしてどこが情報源か分からないバイアスの掛かった情報で、容疑者がまるで犯人であるかのように報じられ続けているこの国の日常についても。良書。

  • 中高生向けに書かれているのでわかりやすい。

    けど、「わかりやすい」というのは情報を省いていたり、置き換えていたりすることなんだよ。


    裁判員制度が始まりました。その前にこの本を読んでみたらいいとおもう。別の角度から物事がみえます。

  • たぶん小学校の高学年くらいからをターゲットに書かれた本ですが、大人でも充分読み応えがあります。むしろ大人が読めばいいんじゃないでしょうか。

    司法の大原則について、全く知識が無かったことを痛感しました。ただ、感情に任せて死刑や厳罰を叫ぶことには疑問があったので、そこは(とりあえず)間違っていないと分かりました。
    もっとちゃんと知識を持って考えなければいけないと思います。死刑が犯罪の抑止力にならないのだとしたら、存続させる意味はあるのでしょうか。

  • 100%orangeのイラストがカワイイ「よりみちパン!セ」シリーズ45冊目。

  • 中高校生向けとしてとてもいい。裁判員制度がはじまりいつ自分が参加することになるかわからない。漠然と殺人のような犯罪の評議にでるのはいやだな、守秘義務なんて守れるだろうかと思っていた。近代民主主義国家の司法の原則、「罪刑法定主義」(罪と刑罰が、法律によってあらかじめ定められていること)「無罪推定原則」(疑わしきは罰せず)。わかりやすく書いてあっていい。大人もぜひ読んでほしい。ただ大人は子供に語りかけるような感じが少し鼻につくかもしれない。

著者プロフィール

森 達也(もり・たつや)
1956年、広島県呉市生まれ。映画監督、作家。テレビ番組制作会社を経て独立。98年、オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。佐村河内守のゴーストライター問題を追った16年の映画『FAKE』、東京新聞の記者・望月衣塑子を密着取材した19年の映画『i-新聞記者ドキュメント-』が話題に。10年に刊行した『A3』で講談社ノンフィクション賞。著書に、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『ご臨終メディア』(集英社)、『死刑』(朝日出版社)、『東京スタンピード』(毎日新聞社)、『マジョガリガリ』(エフエム東京)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』(ミツイパブリッシング)、『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書)、『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)、『増補版 悪役レスラーは笑う』(岩波現代文庫)など多数。

「2023年 『あの公園のベンチには、なぜ仕切りがあるのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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