まつりちゃん

著者 :
  • 理論社
3.60
  • (13)
  • (15)
  • (22)
  • (7)
  • (0)
本棚登録 : 186
感想 : 32
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (164ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652079775

作品紹介・あらすじ

その子は、いつも一人だった。コンビニの前。公園。商店街。家の窓、カーテンのかげに…。ひとりで住んでることは秘密です。まつりちゃんが、出会った人の心にくれたものは…子どもを書き続ける作家が描いた、ささやかな奇跡の物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 一つ一つのお話は悪くはないと思うのだけど、私にはつながりがわかりにくく読みにくさを感じた。小学生向けとは思えないけれど…

  • どこかしら屈託をかかえた子どもや大人の前にふっと現れる小さな女の子・まつりちゃん。 彼女と時間を過ごした後には、なぜか優しい気持ちになっている自分に気づくという…。 まつりちゃんって誰なの? .



    生きるってことは、子どもにとっても大人にとっても、そんなに簡単なことじゃないんだよね。
    あれこれ気持ちに引っかかることはあるし、思うようには毎日が進んでいってくれない。

    それでも大人は自分であれこれ動いてみることもできるけど、子どもは大人の論理で訳もわからずにあっちへ行ったり、こっちへ来たり、とうん、わかるよ、と言いたい子たちが出てきてね。そして、子どもはまた自分の気持ちをしっかり言葉に表すだけのボキャブラリーを持たないのが辛いところだなぁ、とも。

    そんな寂しかったり、苛立たしかったりしている子どもや大人に、ぽっと温かい何かをくれるまつりちゃん。

    まつりちゃんの丁寧な言葉使いがとてもいいです。きっとゆっくり、思ったことだけをしゃべっているんだろうな、と、まつりちゃんの眼差しや小さな手までが見えるよう。


    また、

    「乾いた声で「まだ飲むんですか」」  というお母さん、  とか

    「「きみね、もう少しきちんとしたらどうかな。髪の毛とか、着るものとか。」~」 

    なんて言いながら、


    「父はまた自分の部屋に入り、ギターを弾き始めた。父は台所に酒を作りに来て、ちょっとぼくのそばに来ただけだった。」


    というくだりには、巧いなぁ~~と。
    父親がいかに家族に参加してないかよくわかるし、それを息子がしっかり理解しちゃってるところも。



    幼稚園の時は気もちが曲がってばっかりだった。
    かみの毛を短く切られたときも、クレヨンが折れたときも、廊下がぬれてソックスがぬれてしまったときも、気もちが曲がった。小学一年生になったんだから、もう気もちが曲がらないようにしようと思った。



    と、自分の気持ちを持て余す女の子にも、あぁ、そいうことってあったよね、なんでそんなことでへそ曲げるの?めんどくさい子だね、なんて言われたりして。








    ネタバレです。






    私、まつりちゃんって、最初はこの町の神社の化身OR 御使いなのかな、って思ったんだけど。

    お父さんが大きな借金を作ってしまい、そのためにお母さんとは偽装離婚。お父さんは遠くの工事現場に働きに行っていて週末しか帰ってこれないからまだ本当に小さいのに1人お留守番をしている女の子だったのでした。

    町の子どもや大人の目線で一つ一つのお話が進んでいき、徐々に謎が明かされる展開も好ましかったし、何より、抱えているものはなくならないにしても気持ちが落ち着いてくる人たちが嬉しくて、気持ちよく読みました。

    まつりちゃん、もうすぐお母さんやお父さんと一緒に暮らせるよね。
    暮らせますように!!

  • 誰しもの前に現れる、不思議な存在…

  • まつりちゃんは、空き家と見せかけた家で一人ひっそりと暮らしている。
    借金返済のため両親が働きに行っている間、お留守番をしている。
    その役割を懸命に果たそうとして、ちっとも辛そうにしていないまつりちゃんとかかわることで、周りの人が元気をもらっていく。

  • 出口のない物語。学校の問題、離婚の問題、お金の問題。。。周りは良くても、まつりちゃんはどうなるの?


  • ずっと好き。こぼれ落ちそうな時、ふとこの本を開いている。
    こどもを、ちゃんとひとりの子供としてかいているところかな、感情的だったり、説明的だったりするわけではないのに、なぜか胸の中にずっとあって、涙が出てきたりする。
    うまく言えないほど、好きな小説。

  • 空き家にひとりで隠れるように住む小さな女の子。周りの人に与えて与えられて。現実にもこういう子どもがいるのかもしれないしもしかしたらこれから増えるのかもしれない。一緒にはいられなくても親も子どもも一生懸命生きている。悲しいけど強い。自助も公助も届かないところはこれからは共助になるんだろう。人が人に関心を持って関わりたいと思う世の中。そうありたい。人間はきっと優しくなれる。

  • まつりちゃん。
    最初は 妖精かと思ったけど、読み進めていくうちに
    人間とわかって複雑な気持ちになりました。
    5歳の女の子が一軒家にひとりだけで住んでいて、
    1週間に1回だけ、父親が1週間分の食料を置きに
    来る。
    これだけの説明だと、ひどいネグレクトの話しだけど、それには ちゃんと理由があるのです。
    しかし、やっぱり可哀想過ぎるよね。

  • まつりちゃんは、空き家と見せかけた家で一人で暮らしている。
    借金返済のため、両親が働きに行っている間お留守番をしている。
    その役割を懸命に果たそうとしていて、でもちっとも辛そうにしていない。そんなまつりちゃんと関わることで、周りの人が元気をもらっていく。

    中高生におすすめです

  •  空き家だと思っていたその家に、どうも人の気配がある…。
     住んでいたのは5歳の女の子、まつりちゃん。
     彼女はいつも1人でいる。
     そんなまつりちゃんに出会った人たちの短編の連作集。
     みんな、とんでもなくつらい生活を送っているわけではないけれど、手放しで幸せとも言えない、そんな毎日の中で、まつりちゃんと会うことで優しい気持ちになっていく、という感じです。

    ------------------------------------------------------------------

     まつりちゃんが、すごくかわいい。
     喋り方とか。タラちゃんみたい。

     でも、最終的なオチがない感じで、最後、アレ? てなった。
     同じように、1人の人物を中心に、それを取り巻く人々の日常を描いた「どぶがわ」(著:池辺葵さん)というマンガは、その中心人物にも、周囲にもオチがあったから、何か勝手にこのお話も、それぞれのお話が繋がっていて、伏線みたいになっているのかと思い込んでいたから、最後がちょっと拍子抜けした。

     あと、この本、図書館で一般書のところにあったんだけど、Amazon見たらジャンルが「絵本・児童書」になってて、そうだったの? て思った。
     子ども向けかな。
     あんまり小さい子が読んでも、意味が分からなそう。

全32件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1950年、山口県生まれ。
『朝はだんだん見えてくる』で日本児童文学者協会新人賞、『「うそじゃないよ」と谷川くんはいった』で小学館文学賞と産経児童出版文化賞、『ステゴザウルス』と『迷い鳥とぶ』の2作で路傍の石文学賞、『そのぬくもりはきえない』で日本児童文学者協会賞、『あたらしい子がきて』で野間児童文芸賞、『きみは知らないほうがいい』で産経児童出版文化賞大賞、『もうひとつの曲がり角』で坪田譲治文学賞を受賞。そのほかの作品に、『まつりちゃん』『ピース・ヴィレッジ』『地図を広げて』『わたしのあのこあのこのわたし』『ひみつの犬』などがある。

「2023年 『真昼のユウレイたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩瀬成子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×