- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784652202890
作品紹介・あらすじ
梨乃は、あえて同じ中学出身者のいない都内の高校を選んだ。それは、3.11の被災者であることを隠し、高校生活をまっさらな状態で始めたいと思ったからだ。大震災から三年後の、被災地から遠く離れた場所で、若い心の軌跡を追う物語。
感想・レビュー・書評
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【読後】
きつい本だ。
途中で何度も読むのを止めようと思ったが、読みだした限りは読んでしまおうと思って半分ほどまで読んできた。とうとう、な、涙が……とめどなく出て来る。胸が締め付けられ、読めなくなる。なぜだ……。
最初、女子高校生・岩井梨乃の明るい話と思って読んでいたら、途中で予想もしていなかった震災の話になって。梨乃の母が、震災で亡くなった兄・貴樹を想って泣き出すと。梨乃は、自分が代わりに死ねば良かったのかと……(涙)
震災は、こんなに被災した人たちの胸に深く傷を残すものなのか。あの震災は……自分にとっても、忘れられないことだし。でも、被災地の人々は、ずっとハードな体験したんだなと。ただただ……涙が出て来る。そして、胸が苦しい……。
………… ………… …………
厳しい中にも爽やかで多感な女子高校生の物語です。
最後は、高校1年生の女の子の淡い恋心で締めくくる。
読み終って……音楽が持つ繫がりが良く。
そして、読後感が良かったです。
これが最後まで震災の思いを書いていたのだったら、重く、胸が締め付けられたと思うが、音楽と、淡い恋心で終わらせたので読後感が良かったです。
【物語】
2011年(平成23年)3月11日に起こった東日本大震災で兄を亡くし宮城県から埼玉県戸田市に父の仕事の関係で転校してきた中学1年生の岩井梨乃が、3年経って誰も知り合いのいない都内の私立緑野学園高校へ入学し、クラブ活動として吹奏楽部に入って悩みながら葛藤しながら生きて行く様を書いた物語です。
転校してきた埼玉の中学校で震災に遭った可哀そうな子として扱われ、それが嫌で知り合いのいない都内の私立高校へ行く。そこで楽器の経験は無かったが吹奏楽部に入り生き生きと、明るく生きて行く物語で始まるが。
トロンボーンを吹く1年1組の紺野遼が、明るく福島で震災に会ったことを話すのに違和感を覚え距離を開けていたが。その遼に、震災に遭った事が知られ……。
物語は、最後には、梨乃が荒川に出て東京側に向かってサックスで「黒いオルフェ」を吹くと、対岸の東京側からかすかに淡い恋心を抱く遼のトロンボーンの「黒いオルフェ」の音色が……。梨乃が、今まで渡った事のない戸田橋を渡って東京へ向かう……ところで終わっています。爽やかな終わり方です。
このあとサックスの演奏を聞きたくて「youtube 動画 サックス演奏」で検索して、中島みゆき「糸」島村楽器スタッフのサックス演奏動画を聞くと涙があふれて来ました。
濱野京子さんの本を読むのは初めてです。
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黒いオルフェ(アルトサックス・ソロ)jazz standard WMS-11-007→
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中島みゆき「糸」島村楽器スタッフのサックス演奏動画→
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この川のむこうに君がいる
2018.11発行。字の大きさは…小。2021.11.08~10読了。★★★★★
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【バックナンバー】
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私は、本を登録するときには、著者名と登録した年(2021)で登録しています。たまにシリーズ名でも登録もします。例えば「風烈廻り与力・青柳剣一郎」などです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
主人公の梨乃は東日本大震災で被災し兄を亡くしている…。父の転勤もあって埼玉県で新しい生活を始めるが、被災者として接されることに苦痛を感じ高校は知り合いのいない東京の私立高校に進学する…。かねてからの希望であった、吹奏楽部に入部することに決め友達もできたが…そこで、福島から避難しているとあえて自ら話す紺野遼と出会うことになる…。
課題図書だというこの作品、あっという間に読み切れますが、内容は重く考えさせられるものです。被災地に残るもの、被災地から離れるもの、大切な人や家族を亡くしたもの、何とか被害を免れたもの、原発事故の影響で放射能汚染の心配を強いられるもの、そして被災地からは離れて過ごすも当時の被害に胸を痛めたもの…その境界に川があるのかな、そう感じました。でも、ずっとこのまま川を隔てたままではなく、お互いを思いあう気持ちがあればその川は乗り越えられるんだと、そんな風にも思いました。梨乃が吹奏楽部のみんなに自分のことを話す場面や、父との会話の場面…涙腺緩みっぱなしでした。 -
絵本の「たぬき」の後、たまたま手にした児童書。
これも2011.3.11の震災に関連した内容である。
被災者として見られたくない梨乃は、誰も進学しない東京の私学へ通う。
可哀想という同情の眼を向けられたくなかったという気持ち。
念願だった吹奏楽部へと入部するが、同じ一年で入ってきた紺野遼は、東北訛りを隠さず震災で被災したことも明るく話すのだった。
コンクールで、中学の同級生に被災者であることを紺野遼に知られてしまった梨乃。
だが、詳細に語らなくても分かり合える部分もあり、距離が近くなる。
思春期の2人にとって、被災者であることを言う方がいいのか、言わないままがいいのか、決められることでもなく…とても難しい。
お互いにこうしたほうが、過ごしやすいと思っての行動だろう。
被災者それぞれに抱えているものも違う、喪ったものも違う。
誰ひとりとして同じ思いではないのだから。
だからこそ、周りの人が気をつかうことに憤りを感じるのもしれない。
吹奏楽部の仲間に出会えて、この2人も哀しみを乗り越えていくのかもしれない。
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誰も自分のことを知らない高校を選んだ梨乃は、中学校では実現できなかった吹奏楽部への入部を決める。新入部員のほとんどが経験者で、希望していたクラリネットにはなれなかったものの、部長の詩織のお陰でサックスもがんばろうと思えてきた。彼女は、同じ新入部員の遼が、皆に自分が東日本大震災と原発事故の被災者だとあっけらかんと語ることに驚き、彼とは距離を置こうと思うのだった。
震災で傷ついた少女が、周囲の温かさとともにそれを受け入れ、普通の高校生として生きていく過程を描く。
*******ここからはネタバレ*******
この「川のむこう」とは、自分と同じ想いを共有しない人たちのこと。
川のこちら側とあちら側とでは、震災の規模が違うし、亡くなった人も違う。今放射能だらけのところにいる人もいれば、放射能はないけれどそれで差別されている人もいる。人の不幸を比べることはできないけれど、誰もが皆、他の人には理解され難い苦しみを抱えている。
主人公がラストで、川にかかる橋を渡ろうとするのは、お互いの想いを分かち合いたいと思ったからなのでしょう。
この本には、ぜひあとがきが欲しかった。著者が、どんな経験や気持ちで、これを書いたのか知りたい。
梨乃が、中学校に入ったばかりで2歳年上の太一と付き合うとか、高1の遼が、同い年の佑香に結婚を申し込んで遠距離恋愛中とか、今どきの恋愛事情にうろたえますが、これも辛い経験あってのことなのかも知れません。
結局、人の心に寄り添えるのは、その人を大切に思う気持ちだけなのではないかと思わせてくれる一冊です。
文章は平易なので読める子なら中学年からでも読めますが、彼らの気持ちを慮るにはもう少し経験があったほうがいいかも知れません。 -
ずっと読みたかった本。被災、家族、友達、部活色々な要素が人間を成長させる。
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東日本大震災で被災し、兄と家を失った少女の心の傷と葛藤、そこからの自己の再生を描いた物語。
* * * * *
震災によって一変するのは生活だけではないということが、よくわかりました。
梨乃にしても遼にしても小学校卒業直前に震災に遭い、子どもらしい希望が一瞬でうち壊されてしまいます。その絶望感ややるせなさは察してあまりあるものです。高校生になっても続く気苦労も気の毒と言う他ありません。
印象的なのは、川をポイントに据えた構成です。
川一本隔てただけで違いが出た震災被害に始まり、梨乃と遼の震災被害者としてのスタンスの隔たりの象徴にも川は使われています。
そして、ラストでは梨乃たちが真に理解し合うために乗り越えるべき象徴として川がクローズアップされています。余韻の感じられるいいシーンでした。
1つ物足りなかったことは、梨乃1人の視点で物語が進行していたことです。遼視点での描写、特に彼の心情について掘り下げてほしかった。
原発トラブルによる放射能汚染は半分人災と言っても過言ではありません。それを高校生になった遼がどう受けとめ、自分の将来にどう繋げていくつもりでいるのかを知りたかったです。(でもこれは別の物語となるので、児童文学にはそぐわないのかも。)
児童文学らしく丁寧に描かれているのに描写は自然でさり気ない。濱野京子さんの紡ぐ物語に胸を打たれました。
かなさんの感想を読ませていただき、心を動かされて手に取った作品ですが、読んで本当によかったと思います。-
Funyaさん、こんにちは!
読めてよかった思って頂けて嬉しいです(^^)
震災から12年…街の復興はすすんでも
被災者さんの心の痛み...Funyaさん、こんにちは!
読めてよかった思って頂けて嬉しいです(^^)
震災から12年…街の復興はすすんでも
被災者さんの心の痛みを癒すことは難しいですよね…
でも、わかりあえる、話をできる仲間がいることが、
その痛みを和らげることにつながるのかなって、
この作品を読んで感じました。2023/04/19 -
かなさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
自身を責めることも他人に怒りをぶつけることもできない。震災被害者の心の痛みはま...かなさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
自身を責めることも他人に怒りをぶつけることもできない。震災被害者の心の痛みはまさに持っていきようがない。
だからそんな思いは自分の中で押し殺すしかなく、押し殺した思いはなかなか人に打ち明けることができない。
梨乃や梨乃の母親の描写から、そんなことを感じました。
いろいろなことを考えさせてくれる良作だったと思います。
かなさんのレビュー、いつも読ませていただいています。やさしさが溢れた前向きなそのことば。読んでいて心が元気になります。(かなさんは詩緖先輩のような方なんでしょうね)
これからも楽しみに読ませていただきますね。2023/04/19
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高1の時に買い3分の2読んでそのままにしていた本です。言葉がすっと入ってくるような温かい小説でした。
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登場人物の心の揺れ、気持ちの変遷をものすごく丁寧になぞっていた。全てのキャラクターの造型にリアリティがあって、ああこういう環境でこういう気持ちを抱いた子が、それでも自分なりに生きていこうと前を向いている子があちこちにいることをとてもリアルに想像できた。
主人公が選んだのが吹奏楽だったことがすごく納得できる。人と人との間には深い川が流れているけど、どんなに深い川でも音なら向こうへ届くことがあるかもしれないと思う。