PISAから見る、できる国・頑張る国2――未来志向の教育を目指す:日本

制作 : 経済協力開発機構  OECD 
  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750335513

作品紹介・あらすじ

教育に伝統的に高い価値を置き、優れた成績を収めてきた日本の教育システムについて、その歴史的社会的背景、人口構成や経済的特徴の変化に伴う課題、そして各国の政策の実践・展望と対比して、PISA調査をはじめOECD教育指標を用いて包括的に分析する。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の教育は世界から見るとどのように見えているのか知りたくて読んだ。第6章 日本:持続的な優秀さの物語」として語られるように、基本的に優秀なのになにをこれ以上目指すのかと考えられているように思われた。

    ーー
    「国際的な教育の比較調査が始まって以来、日本は、国際的順位のトップか、その近くに居続けている。本章では、日本がこの一貫した地位をどのように達成したのか、他の国は日本の経験から何を学べるのかを探る。日本の教育システムは、子どもへの深い関与を基礎にしており、それは具体的で、永続的な試みである。また、日本の成功は、第一級の教師、家庭での子どもに対する家族の最高のサポート、人的及び財政的資源を教授に集中させたこと、生徒が難しい科目を履修し、学校で懸命に勉強するように教育制度が与える強い動機付けに起因すると考えられている。日本における学校カリキュラムは、深い概念的理解を育てるという明確な目的があり、非常に理路整然としており、注意深く主要なテーマに特化している。そのアカデミックなプログラムは、論理的な流れに従い、認知的課題の非常に高いレベルに設定されている。カリキュラムは全国にわたって適用されるが、日本の教員はその応用において顕著な自立性を有している。そのアプローチのすべては、能力ではなく努力が生徒の達成度を説明するという共有された信念によって支えられている。学校においては、能力による振り分けが存在せず、クラスは不均一で、生徒は成績によって留年したり、進級したりすることがない。そのシステムには、両親や同僚などに対して内在的なアカウンタビリティが存在している。入学試験が日本の高等教育へ進むために極めて重要である一方で、学校における教員のアカウンタビリティに関しては、興味深いことに、生徒の評価に基づいていない。これらは、他の多くの要素とともに、世界で最も教育され、最も生産性の高い労働力を生み出すことに結びついている」

    p195
    「ここ20年にわたって、日本の教育システムへの批判、特に、創造性と革新性を促すことが不足しているのではないかという懸念が高まっている。道徳的、集団的価値の明らかな衰退にも、懸念が向けられている」

    p196
    3.1 創造性、「集団」対「個人」

    「日本人は、西洋諸国が創造性を教えるやり方を日本人が調べるべきではないのかと考えた」

    「しかしながら、日本と西洋諸国の違いは、創造性を教えているかどうかにあるのではない。その違いは、アジア諸国とは異なって、西洋諸国が集団よりも個人に価値を置くところにある」

    「個人を重視することが西洋t系創造性に関係しているという考えは、多くのアジア人にとって不愉快なものであろう、アジア人は社会的秩序に高い価値を置き、多くの西洋諸国の高い犯罪率や一般的な社会不安を単純に許されないものと考える。一方、西洋の多くの人々は、それが『個人の自由』をあきらめることを意味するならば、アジア人が評価する生徒への高い成績に価値を置きたいとは思わない」

    p198
    「総合的な学習の時間

    1)テーマを見つけ、考え、判断し、自らの問題を解決する子どもたちの能力と素養を育成し、2)子どもたちが自らの生活について考えることができるように「することで、創造性と主体性を持って主題を探索し、自らの学習方法や思考方法で問題を解決するように促す。この目的を達成するために、総合の学習の時間は、自然での経験、社会生活の経験、観察、実験、野外研究や調査のような体験学習と、環境、国際理解、情報、保健福祉のゆおな横断的で包括的な課題や生徒の関心のある課題を学ぶ問題解決学習とを積極的に取り入れる」(文部科学省 2002)

    文部科学省(2002)『平成13年度文部科学白書:21世紀の教育改革』

    P203

    「個人の自発性に高い価値を置く創造的文化が要求することと、自分の考えを積極的に提示する前に通常は集団の承認を得ようとする仁保の文化が 要求することとの衝突を反映しているのかもしれない」

    ーー
    第2章PISAというプリズムを通してみる日本の教育
     
    第1節 一貫して高い15歳児の平均得点
    第2節 読解力の成績が上位の生徒の相対的な割合:OECD平均を上回り、経年変化でも増加
    第3節 成績が下位の生徒の相対的な割合:OECD平均を下回り、経年変化では一定
    3.1生徒の学力のための望ましい背景要因
    ・日本は対GNP比でOECD平均をかなり下回っているにもかかわらず、日本の教育システムは高い成績を生み出していることが明らかとなっている。(中略)
    ・日本では学級規模を縮小するよりも、教員の質を向上させることを優先させる傾向がある。(中略)
    ・他の多くの国に比べ、日本の親は高い教育を受けている。
    ・社会経済的に不利な背景を持つ日本の生徒の割合は、OECD平均を下回る。
    ・OECD加盟国の中で、日本は移民の背景を持つ生徒数が3番目に少ない国である。
    第4節 教育の機会均等
    4.1成績の学校間格差の拡大
    4.2教育リソースの平等な利用
    4.3日本では生徒の社会経済的背景が学習成果に与える影響は小さい
    第5節 要求の高い教育システムは生徒のメンタルヘルスに悪影響を与えているのか?
    第6節 その他の学習成果:生徒の取り組みと学習方法
    1996年に文部省(当時)は教育に新しい概念を適用したが、それは、生徒が自発的に行動し創造的に考える能力を強化することを目指したもので、「生きる力」と呼ばれるものであった。これは、1998年改訂学習指導要領に中核をなし、2008年改定ではさらに重要を増すこととなった。この細菌の改訂では「生きる力」を育むには確かな学力、豊かな人間性、健康・体力の3つの目標を達成するために、バランスのとれたアプローチが必要だとした。この教育改革ではめっかくな目的を設定しただけでなく、生徒がこれらの目標を達成し結果として認知的能力及びメタ認知的能力を発達させる上で必要な条件にも光を当てた。すなわち「生きる力」の重要な側面は、生徒が学ぶための学習スキルとしてまた、自分のペースで自主的に学習する力を身に付けられるよう目指した点である。
     
    6.1効果的な学習方法を用いること
    日本の生徒は、「情報の理解と記憶」方法の認識についてOECD[平均よりも高いレベルにあり、「情報の要約」方法の認識についてはほぼOECD平均のレベルである。
     
    第7節 学習環境
    7.1教師と生徒の関係は弱いが、改善している。
    生徒の回答によれば、日本ではOECD加盟国中最も教師との関係が弱いという結果であった。項目別にみると、「多くの先生は、私が満足しているかについて関心がある」について、「どちらかといえばあてはまる」「とてもあてはまる」と肯定的な回答をした日本の生徒は28%(OECD平均66%)で、「助けが必要なときは、先生が助けてくれる」については64%(OECD平均64%)(中略)これらの質問において肯定的な回答の割合が低いということは、生徒の期待と教師が実際に行っている行為との間に不一致がある可能性を示唆している。
    7.2規律ある雰囲気は素晴らしく、さらに改善している
    7.3教師の肯定的な態度と行動
    「生徒の潜在能力を十分に引き出すような指導がなされていないこと」日本はこれらの項目においてOECD平均よりやや低い結果
    第8節 日本の学校システムの体系と教育政策
    8.1支出の効果的な選択による教育費の抑制
    日本では大半の学級は比較的規模が大きいため、学級全体を対象とする一斉授業が行われている
    8.2学校間の競争
    8.3公立学校と私立学校のバランス
    8.4民間教育事業への依存の高まり
    8.5ほぼ普及した就学前教育
    8.6カリキュラム編成における裁量 ※とくに目立った記載なし
    8.7教育基準の設定とアカウンタビリティ
    8.8成績に基づく分化の低さと混成クラスの重視
    第7章 日本からの教訓、日本への教訓
    第1節 日本の教育改革の軌跡
    天然資源が乏しいならば人的司法を開発することが最善の道だという認識が早くから社会にあった。その結果、一方では教育と技能に、他方では集団と社会的関係に重きを置く文化が生まれた。個人が集団に奉仕すれば集団がそれに報いてくれるという考え方が一般的である。
    P246
    ・(大戦後の教育改革後は)学生に対して大学で所定の履修単位を取得することを義務付け、そうすれば教職に応募できるようにした。今日の学生はこうした履修単位を取得しつつ他の研究領域を引き続き専攻することができ、教員に関連したテーマに研究対象を限定しなくてもよい。だが、こうした改革の実行に伴い重要な課題も生じた。というのも、日本は約60万人の教員の現職教育を行い、数年間でその技能を強化しなければならなくなった。
     
    p250日本人はまた、先進技術の創出と活用において従来の日本の優位性が脅かされていると感じるようになった。
     
    ・道徳規範の喪失や児童生徒の意欲低下が懸念される一方で、イノベーションの点でも日本の優位性の低下が感じられるようになった。(中略)こうした不安から日本人は、欧米諸国がどのように創造性を教授しているのかを探り始めた。
    ・しかし、日本と欧米諸国の相違は創造性の教授法にあるのではない。欧米諸国はアジア諸国とは異なり、集団より個人を重視するのである。この発想はアジアの人々になじまない。
     
    ・実際、いくつかの欧米諸国と比べてアジアの人々は自国の産業の道すじを新たに描いたり、新たな産業を創出したりすることが下手だと言える。これはおそらく、アジアの人々が一般に年長者や上司に対して表向きは敬意を払うためである。内心は上司の判断に不満があっても、その上司がいなくなるまでは胸の内にしまっておき、公然と他者を批判するのは好まず、自己の手柄を吹聴するよりも謙遜するのを良しとし、個人の手柄よりも集団への貢献に価値を置く。
     
    ・日本は製品や工程を継続的に改善させていくのが得意で、極めて質の高い大規模な製造を行える。
     
    P253「総合的な学習の時間」のねらい:「自ら課題を見つけ、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること、学び方やものの考え方を身に付け、音大の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにすること、をねらいとして、環境、国際理解、情報、福祉・健康などの横断的・総合的な課題、持効性との興味関心に基づく課題などについて、自然体験や社会体験、観察、実験、見学・調査などの体験的な学習、問題解決的な額数などを積極的に取り入れて行うものです(文部科学省、2002)『平成13年度文部科学白書:21世紀の教育改革』
     
    ・教員に主体的に総合的な学習の授業計画を立てさせるために、文部科学省は授業計画に対する支持を最小限に抑え、学習時間の量と授業で扱うテーマを各学校が決めることを奨励した。教員は知識を教えるものではなく、総合的な学習の授業の調整役を務める者として想定された。しかしこうした自由な授業計画の潜在的な強みが同時にその弱点でもあることが明らかになった。現場での研修に十分な時間を割く余裕がないままに急いで総合的な額数を実施したために、これまでにない自由を与えられた教員の多くが途方に暮れてしまった。中でも、改革が推進していた探求型の生徒中心型学習モデルについては、覆うの教員が自己の教育者としての役割に不安を感じる結果となった。
     
    P254総合的な学習の趣旨は小学校の教員に概ね歓迎されたものの、中等教育段階の学校の教員については、制度上の事情に加え、中等教育が生徒の進路に果たすべき役割についての根深い信念が大きな障壁となりうまく実施できなかった。
     
    第2節 日本の教育の主な強みとこれを維持するための政策課題
     
    2.1教育への献身的取り組み
    2.2どの生徒も高い水準に到達できるという確信
    2.3価値観の重視
    2.4リスクの高い関門(入試)及び効果的な指導の体制と同調し、教育システム全体にわたり共有されている野心的教育基準
    2.5効果的な指導法
    2.6質の高い教員
    P256都道府県の認識では、こうした新人は採用時点で重要な高度な知識は持っていても、仕事に必よな技能を備えているとは限らない。そのため、一般の雇用主と同様、都道府県も責任をもって初任者研修を実施し、経験豊富な指導教員をつけ、これは新任教員が独り立ちできる時まで続けられる。初任者研修の期間は1年間で、指導教員はその間生徒に対する直接の指導を離れ新任教員の指導に当たる。新任教員が正規の教員の仲間入りを果たした後も、法律によって10年ごとに追加研修を義務付けられている。また、教員は有給休暇を申請して大学院で修士号を取得することもできる。門ぐ科学省はまた、都道府県の研修h指導者を対象に、国の市越で各種研修プログラムを実施している。
     
    ・教員の能力開発に関して最も興味をそそる点は仕事面である。実際、日本は教育実践を継続的に改善させるアイディアの実験場である。このアイディアは日本の学校では授業研究という形で実践される。
     
    P278PISA調査によれば、効率的な学習法とは何かを学び、絶えず改善することに対して生徒の関心を育み、それに取り組ませるという点で日本は大きな進展を遂げているとはいえ、この分野で日本な以前として、先進的イな教育システムの多くに後れをとっている、こし日本が、伝統的な教科に基づくアプローチからコンピテンシーに基づくアプローチへとカリキュラムを転換し、また、生徒の認知的能力の発達のみならず学習への意欲と熱意の点でも世界最高の教育システムと肩を並べたいなら、カリキュラム改革がその中心になる。そして、「総合的な額数の時間」の経験から学んだように、事の成否は、カリキュラムの革新だけでなく、その運用に関する教員研修がどこまで十分にできるかにかかっている。

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