- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750346663
作品紹介・あらすじ
算数や国語の学力、粘り強さ、自己制御力、思いやり……、生まれた瞬間から最初の数年間に、親や保育者が子どもとどれだけ「話したか」ですべてが決まる。日本の子育て、保育が抱える課題とその解決策を、科学的な裏づけと著者自身の具体的な実践から示した書。
感想・レビュー・書評
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私見
解説がとてもコンパクトにまとまっている。本文は訳にありがちで、長くて読みづらい。
保護者の3歳までの語りかけが重要というのはわかった。だけど、言葉をほそぐ元気がない。赤ちゃんと遊んでて、そうそう言葉なんて出てこない。無言になることもしばしば。所得の高い人でも、言葉が豊かでも、語りかける気力がないことがある。疲れているから。眠いから。保護者を元気にしないと、保護者の努力だけ訴えられても、健康な子供の育つ社会にはならない。解説で家庭支援センターが紹介されていたけど、そういう場の充実もひとつの手。
そして、最近は保活コンサルタントを名乗る人が0歳児復帰をすすめたりするけど、保育園ではたしかに1対1の語りかけは無理。育休を長くして、会社に損だとか思わず、子供との時間を充実させた方が、長期的には社会にプラスになることをわかる経営者が増えてほしい。
あと、どの世界でも、母親に育児偏りすぎ。母親は、妊娠、出産のためのあらゆる制限と苦しみを味わった時点で、育児の苦しみはもう経験する必要がないんだよ!
以下、メモ
聴力の無い子供に読み書きだけで教えるのは困難。アラビア語の本を差し出されたようなもの。どう発音するかもわからないのに。
子供への語りかけに意味があるとわかれば、保護者は語りかけをする意欲がわく
否定的な語りかけは成長を阻害する
赤ちゃん言葉にも意味がある。保護者と赤ちゃんとの関係を作っている
テレビでは言葉は覚えない。一方的だから。言葉は、コミュニケーションを取るためのものだから。
基数の原理 数を概念としてとらえる
3歳以上になると、この場、この瞬間と切り離された会話ができるようになる。
グリット 粘り強さ 困難な課題に向かう過程で得られる。結果を誉めると困難から逃げる。プロセスを誉める。
help! というより、be a helper! の方が響く(たしかに日本語では無いかも)
慢性的なストレスにさらされていると、守りにエネルギーを費やし、学べなくなってしまう。
命令でなく、提案と促し。問いかけ。
おまえはだめだ、ではなく、それは悪い行動だ
命令でなく、ある行動を取るとどうなるか、論理力と自制心を鍛える
Tune in 子供の注意に向かう
解説が日本語の注意と似てると言ってて面白い
Talk more 単語を注ぐ
ナレーションをする 実況中継
代名詞は使わない。言葉をどんどん増やす
Take Turns 双方向のコミュニケーション what でなくwhy howを広げると会話が続く。本も利用
算数はパターン。 bingo old mcdonaldsでも学べる
語彙が増えると自己制御もできる
ごっこ遊びでは子供の想像を阻害する言葉は使わないこと。遊びが膨らむ言葉を!おいしそうな匂い!ごはん、なんだろう? -
”3000万語”、”格差”など、タイトルが強烈で目を引きます。
筆者はアメリカの医師であり、この本は翻訳本であるため文章が少し堅苦しく感じる本かもしれません。
ですが子どもに対してどのような態度でどのような言葉をかければよいかなどの具体的な方法もしっかり紹介してくれますし、なにより著者から子どもたちへの愛情が感じられ、冷静な文章の中にもあたたかく丁寧な気持ちが織り込まれています。
この本を読むと、なぜ言葉の発達が子どもの成長において重要なのか、言葉の発達のために親や保育者はどんなことができるかといった問いへの答えが書いてあります。
全部を読まずとも、まずは具体的な行動の仕方が書かれている第5章から読んでみるのも良いと思います。 -
3歳までの子どもを持つ親として必ず読んでおきたかった本。
生後すぐから3歳までに保護者が話しかける量が脳の成長に大きく影響する。
単なるハウツー本ではなく、淡々と研究、実践に基づいた結果について書かれている。
まとめとしては保育園等でどんなに保育者が尽力しても一対一で関わり合える親子での対話には及ばない。子育て支援の場では、親子の関係性や応答性の質を高める支援内容が重要。
本書はいわゆる早期教育を勧めるものではない。チューンインしていなければトークモアもテイクターンズも意味がない。
子供がふと何かに気づき、これは?と思って周りを見たとき、チューンインしてあげられる大人がすぐそばにいることが大切。
淡々とした文章の中に、著者の今を生きる子供達、未来の子供達への愛情が感じられた。
以下各章ごとの大まかな内容をメモ。
第1章
保護者が話す言葉は子どもにとって最も価値のあるもの。
小児人工内耳外科医である著者の経験より、3歳までに子どもが聞く言葉の量と質(言葉環境)が最終的な学業到達度の差につながるとわかってきた。
第2章
異なる社会経済レベルに属する家族の子供の語彙力を生後9ヶ月から3歳まで追跡観察。4歳時点の言葉の数を積算すると、社会経済レベルが高いグループと生活保護グループには保護者から聞く言葉の数に3000万語の差があった。
ここでいう3000万語は語彙数ではなく話された言葉の総数。
ただし、社会経済レベルが高い=言葉の量が多いというのは表面上の相関。実際には将来の学びの到達点を決めるのに最も重要なのは社会経済レベルではなく、初期の言葉環境である。
加えて言葉の質も重要。
1番重要なのは肯定的で、応援する意味合いのある言葉。
それに加えて、靴を履いて、ここを降りて、といったビジネストークではなく、大きな木だね、アイス美味しいね、と言ったおまけの会話や、始まった会話がやり取りとして続くかどうかが脳の発達に必要な栄養。
第3章
脳は4歳ごろ、臓器としてはほぼ育ち終える。
脳が発達するために不可欠な要素は安定。
赤ちゃん言葉は音が誇張されており、赤ちゃんが音を理解し、言語を学んでいく手助けになる。
第4章
頭が良いといった人中心の褒め方よりも、頑張ったといった過程中心の褒め方をされた子供達の方が、グリット(取り組み続ける強さと意欲)を持っている。
第5章
言葉環境作りに大切なのは3つのT
Tune In
子供が集中している対象に気付き、その対象について子供と一緒に話す
Talk More
子供と話す保護者の言葉を増やす
ex.このアイス、美味しい→この苺アイスはとても美味しいね、だけどすごく冷たい
子供が話や想像を豊かにすることができるように話をする
ex.子供が小さな穴を見つめている→丸い穴が空いているね、ふしぎだね、誰が住んでいるんだろうね?
Take Turns
子供を対話のやりとりの中に引き込んでいく
何色?何?と言った?→既に知っている単語を思い出すように促しているだけ
どうする?なぜ?→たくさんの単語を考え、思考のプロセスが始まる
生後最初の数年間子供に本を読むかは学校入学時の準備度に影響を与える。
正しい読み聞かせではなく、こでチューンインやトークモアの絶好のチャンスとなる。
目標は内容の理解ではないため、子供向けの本を選ぶ必要はない。新聞、小説など何でも良いので声を出して読んであげる。
テレビは3つのTどれを満たすこともなく、一方的であり、脳の学びには良い影響を与えない。
第6章
子供の知的な可能性に対して親がプラスの影響を与えると信じる心の枠組みが、子育てに影響する。
第7章
予防接種率や未熟児出生率といった健康バロメーターの公衆衛生指標に、言葉環境も追跡されるべき。 -
2023.3.29市立図書館
言語(母語/第二言語)習得やいわゆる「読解力」に関心を持ってあれこれ目を通してきているが、これは小児人工内耳外科医が手術をして耳が聞こえるようになっても期待したようには言葉を話せるようにならない子どもがいるのはなぜかという疑問からスタートして、0〜3歳の言語獲得期の家庭(保護者)による言語格差の問題に気づき、その格差を減らすためのプログラム(3000万語イニシアティブ)を提唱するもの。
とてもていねいに書かれているので、保育者養成課程の必読書にしてほしいと思う。専門書と言っても具体的なケースに触れながら順序立てて進んでいくので一般の教養書としても広く読まれてほしい内容。
前半部分は言語にとどまらない子どもの発達の研究の流れの概観になっており、マシュマロ・テストなど他の言語習得研究などで言及されている重要な心理実験の概要も知ることができる。後半は「3000万語イニシアティブ」の具体的な理念と解説、言語や文化に関係なく共通したものではあるが、実際に日本でこういうプロジェクトを推進するとしたら日本の実情により合うように調整は必要そう。
そして巻末には、日本の専門家による解説と訳者によるあとがきがあり、この本の内容が保護者や保育者、社会などにどう意義があり活用されてほしいかまとめられている。
巻末に文献表がないのがちょっと物足りないと感じたが、出版社のサイトに文献表やその他の関連記事がある。
こどもの言葉や脳の発達を伸ばすためには身近な大人(保護者や保育者)の関わり方がなにより重要であり、大人のコミュニケーション態度や幼児の言語環境を整えること(=保護者支援)で経済格差にかかわらず子どもの学力や問題解決能力をのばすことは可能で、それがゆくゆくは社会全体の経済や健康の増進にもつながるという大きい話になっていくが、これはいい線をいっている仮説だと直感する。
経済格差の問題が大きいアメリカでは、就学後の学力の格差を縮めるための就学前プログラムが提唱されているものの、しかしそれではすでに遅すぎるし、貧富の差の問題ではないという気づきから著者らは「3000万語イニシアティブ」を提唱したという。こういう研究成果や実践を学び、検討したり実践したりできるような保育者養成コースはどこにあるのだろうか(願わくば全国どこにでもあってほしいものだし、保育の専門家に限らず子ども=人間の言語習得や発達に興味を持つ人は増えてほしい)。
「異次元の少子化対策」がけっきょくほとんど目先のお金レベルの話にとどまっていて、それすら実効性に乏しい雰囲気なのをもどかしくながめながら読み終えた。 -
子どもを預けて、女性も社会で働く
と言う風潮が強い中
自宅で子どもを見るよさについてでも実は書かれた本。
保育園では浴び切れない3000万語の言葉のシャワーを浴びることについて書かれた本。
ちなみに3000万語は、
3000万の異なる言葉ではない。
同じ言葉が繰り返し使われることを前提とした
話されている言葉の総数。
生まれてから3歳までの間
1秒間に
700から1000の
新たな神経細胞のつながりができる。
これは、脳の働き全て
例えば記憶、感情、行動で運動能力、もちろん言葉にも影響する。
そして、弱いつながりや
あまり使われないつながりを切り捨てつつ、
よく使われるつながりは微調整し
機能に特化した脳の領域を、つくっていく。
保護者の話し言葉が
知性
子どもの安定
粘り強さ
自己制御
さらにバイリンガルといったものに及ぼす。
命令ではなく提案や促しを
命令→子どもの意見を制限する、叱責や命令。
提案と促し→子どもの意見や主張、選択を引き出す
親が話しかけることが多いと、
子どもの語彙は早く増えた。
命令や禁止の言葉が
言葉を取得する子どもの能力を
抑えていることがわかった。
聞いている語彙が豊かでないと、
3歳時の達人が低かった。
もう一つ家族の会話習慣。
親同士があまり話さない家庭では
子どももあまり話さないと言う結果が得られた。
言葉の量が多い家庭は、
量だけでなく
言葉の豊かさ
複雑さ
多様性といった要素も見られた。
さらに
肯定的なフィードバックもあった。
知性は男女差によって決まっており、
変えらないと思っているのは女子生徒だけ
数の話をするのも大事
数字を数える、
形の話をする
図る(大小、いっぱい、空、長短、重さ、高低)
など
人中心の褒め方か過程中心の褒め方か。
人中心褒め方(頭が良いなど)と言われた子と
頑張った(過程中心)の褒められ方をした子。
難しいけれどもたくさん学べるパズルと
最初のパズルと同程度のパズルどちらかを選ぶように言われたら、
頭が良いと褒められた子は優しい課題(後者)を選び
がんばったと褒められた子は難しい課題(前者)を選んだ。
3つのT
tune in 子どもと一緒に話す
1観察2解釈3行動
「おいでおいで。積み木を積む面白いよ」
保護者も物理的に子供と同じ高さになると効果的
反対にコンピューター、タブレットスマホは依存を引き起こし、大人の注意を奪うから、良くない
talk more ナレーションする、並行で自分がしていることを保護者が実況中継する
こそあど言葉を取り除く
子ども話す保護者の言葉を増やす
×保護者が子どもに向かって言う言葉
言葉を膨らませる
子どもが単語1つ言ったら
保護者は2語、3語で答える。
子どもが2語、3語使ったら
保護者は短い文章を使う。
「わんわん、悲しい」
→「あなたの犬が悲しんでいるんだね」
「ねんね」
→「眠いんだね。もう遅いし、疲れているよね」
take turns 開かれた質問(何、なぜ、どうやって)を使う
閉ざされた質問(はいいいえで答えられる質問)は新しいことを教えたりする効果は限られる
子どもと一緒に本を読むよさ
・印刷された文字に対する意識を高める
・物語を語る
米国文化では物の説明を細くする
色や形、大きさ数など
日本の場合、物の関係や感情の話をする
例えば熊の人形が2つ並んでいて
1つの熊がもう1つの熊に手をかけていると
米国では、
色がとか形がとか大きさ同じと言う
日本だったら、
くまちゃんたち仲良しだねとかこっちのくまちゃんくまちゃんついてるのかななどと言う
否定形では子供は育たない。提案、など
☆こそあど言葉を使わない方が良い理由
子どもが語彙を増やす上でも、
こそあど言葉を使わず、
1つずつ別々の言葉を使って話そう。
モノやコトの名前は、
それぞれが別の言葉であり、
別々の知識なので
子どもにとっては、
それぞれが別々の学び、育ちの後押しになる。
子どもは何歳であっても、何の話題であっても語彙は応用できるのが素晴らしいところ。
豊かな言葉に囲まれれば囲まれるほど、
子どもはいっそうたくさんの言葉を聞いて
言葉の意味をいっそう学び、
学んだことを難なく
使えるようになるでしょう。