きわきわ―― 「痛み」をめぐる物語

著者 :
  • 亜紀書房
3.23
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本棚登録 : 68
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750513119

作品紹介・あらすじ

いまや少女まんが評論の古典となった『私の居場所はどこにあるの?―少女まんがが映す心のかたち』から15年。藤本由香里が帰ってきた。本書では、まんが、映画、小説、舞台などを題材にしながら、二〇〇〇年代の日本を照射する。

リストカットの痛みから辛うじて感じる自分の実在、同じように体をモディフィケーションさせることによって確かめる私らしさ、ヒーラーとしかいいようがないセックスワーカーの在り方。美容整形、ドラァグ・クイーン、浮浪者とひきこもり……社会の際や行為の極限から見えてくる、この社会のかたち。

「私の居場所はどこにあるの?」少女たちから放たれた問いが、いまや社会全体を覆う。どうやって自分を世界に繋ぎとめたらいいのか。

感想・レビュー・書評

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  • 自傷、顔、他者になる、婚外恋愛、恋と日常、社長、風俗、セックスワーカー、私の場所、一瞬の永遠。コミック、映画、小説。

    本って、そこまで読めるものなんですね。はぁ。

  • 「きわ」とは「際」のことか。
    社会の端に位置する人々に焦点をあてた評論集。
    フェミニズムなのかを見定める知見を私は持たないが、ある種の突き抜け感は潔い。
    本書で紹介されている本もきわきわのものであるが、どれも興味を惹かれる。

  • 367.6

  • 「あとがき」で、著者がこの本をコンパクトに紹介している。
    ▼本書は、ご覧いただければわかる通り、自傷・リストカット、スプリットタンや刺青などのボディ・モディフィケーション、美容整形、美醜の問題、顔の傷痕、婚外の性愛、セックスワーカー、障害者の性…など、いわゆるコントラバーシャル(=議論を呼ぶ)類の、だからこそ人々が話題にするのを避ける「きわきわ」な問題だけを追いかけて綴った「ゼロ年代(+α)の日本」論である。(p.225)

    「きわきわ」の問題を追う理由を、著者は続けてこう書く。
    ▼…霧の向こうにある崖の存在を誰もが感じながら、崖は、ないことにされている。ここは、安全な地面。霧の向こうの崖に落ちてしまうのは「運の悪い人」。そんなはずはないのに。福島の原発事故だって、霧の向こうにある崖は「ないことにしていた」からこそ起きたのではなかったか。
     だからこの本では「きわきわ」の問題だけを書いた。社会のキワで人は深く深く考えざるを得ない。深いものとなるためには、私たちは〈世界〉を回復しなければならない。
     「きわきわ」のところから、この十数年の社会を振り返るこの作業は、思いがけなく私を、30年以上前に大学で学んだことの中に連れ戻しもした。ずっと私の底に沈んで問題意識であり続けたもの。私はずっと「社会」と〈世界〉の間にあって、「社会」と〈世界〉を繋ごうとし続けてきたのだと思う。…
     「社会」と〈世界〉を繋ぐこと――それは、祈りでもある。
     この祈りが、あなたに伝われば、嬉しい。(p.226)

    いろいろと引かれている作品のうち、本はまだいくつか読んだことがあるのもあったけど、映画やマンガはタイトルだけは知ってるものの見たことがないのや、全然知らないのもたくさんあって、知らないのをネタに書かれた評論は、いまいちついていけないところもあった。

    読んだことのないやつで、読んでみたいと思ったのは小手鞠るいの『早春恋小路上ル』。ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの「接続された女」(『20世紀SF〈4〉1970年代』所収)。フェイ・ウェルドンの『魔女と呼ばれて』。

    その「きわきわ」問題を書いた目次はこんな。


    表面の傷・「痛み」の力―コミックの中の自傷  
    II
    第一話 徴のある顔 
    第二話 他者になりかわりたい 
    第三話 婚外の恋 
    第四話 恋と日常
    第五話 社長になるか、社長夫人になるか。 
    第六話 風俗という「お仕事」 
    第七話 セックスワーカーはヒーラーである 
    第八話 せまいせまい私の場所 
    第九話 一瞬だけの永遠
    〈附録〉都条例とBLのいま

    この人の本は、だーーーーいぶ前に『私の居場所はどこにあるの?』を単行本で買って読んだやつ以来か。


    いくつか誤字が目につく。p.234、p.200、p.35など。

    (1/13了)

  •  「痛み」の原因が身体起因だけではないように、「痛み」そのものが身体の障害ではなく、「心の障害」として現れることもある。これをよく聞く言葉で言うと、「生きづらさ」になるだろうか。本書は、自傷、リストカット、ボディモディフィケーション(刺青に代表される身体改造)など、表立っては話題に上ることの少ない、痛みをめぐる問題を追いかけることで綴った、「ゼロ年代(+α)の日本論」だ。
     世の中には多様な人が生きており、千差万別の痛みがある。どのような情動を痛みと言い、その痛みが何から起因するのか。それらを観察することで世界を理解する時代を、我々は生きているのかもしれない。

  •  相変わらず読みでがあると思いつつも……後半はずいぶんと穏やかになったものだなぁ……と思ったら環境が変わったのね。なるほどー。
     しかしながら、この人の本を読むと、読みたい本が増えて困る。

  • 私にはちと難しかった。
    面白かったけど。

  • タイトルの危うい感じが、、、

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    「いまや少女まんが評論の古典となった『私の居場所はどこにあるの?―少女まんがが映す心のかたち』から15年。藤本由香里が帰ってきた。本書では、まんが、映画、小説、舞台などを題材にしながら、二〇〇〇年代の日本を照射する。

    リストカットの痛みから辛うじて感じる自分の実在、同じように体をモディフィケーションさせることによって確かめる私らしさ、ヒーラーとしかいいようがないセックスワーカーの在り方。美容整形、ドラァグ・クイーン、浮浪者とひきこもり……社会の際や行為の極限から見えてくる、この社会のかたち。

    「私の居場所はどこにあるの?」少女たちから放たれた問いが、いまや社会全体を覆う。どうやって自分を世界に繋ぎとめたらいいのか。

    【本書に登場する作品】
    『へルタースケルター』/『ライフ』『ホムンクルス』/『主に泣いてます』/ハスラー・アキラ『売男日記』/『大奥』ほか」

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