人類学者K──ロスト・イン・ザ・フォレスト

著者 :
  • 亜紀書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750517780

作品紹介・あらすじ

《話題の人類学者による初のノンフィクション!》
──まるで小説のようなフィールド体験記

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日本を飛び出し、ボルネオ島の熱帯雨林に生きる狩猟民「プナン」のもとで調査を始める「K」。

彼らは、未来や過去の観念を持たず、死者のあらゆる痕跡を消し去り、反省や謝罪をせず、欲を捨て、現在だけに生きている。

Kは、自分とまるで異なる価値観と生き方に圧倒されながらも、少しずつその世界に入り込んでいく……。

感想・レビュー・書評

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  • 文化人類学者・奥野勝己氏による、ボルネオ島の狩猟民「プナン」の文化、観念を描いた体験記。物語は三人称視点から展開され、主人公はカフカの『城』からとった「K」と呼ばれる日本人青年(= 筆者)。

    本書の主な項目は第1章「多自然」第2章「時間性」第3章「無所有」の3点で、現地での体験談をもとに、彼らの暮らしぶりや神話、世界観を詳らかに表す。
    文体が三人称であるせいか、ルポというよりは小説っぽさを感じるものの、エピソードごとに細かく節になっているし、その中身は発見+エピソードトークのような社会学や人類学関連の書籍に一般的な形式であるため、伝わりづらさを感じることはなかった。

    死者への視線や時間の概念と解釈といった、日本人とプナンで大きく異なる観念は非常に興味深い。読み手からすると時に奇異であったり、時に(日本人の)倫理的に怒りを覚えるようなものもある。そのようなエピソードを、実際に体験した「K」の感情や思考とともに読むことができ、これは大いに理解の助けとなっている。
    その一方で、異文化を第三者の意見を踏まえず( 本書では、筆者の主観)、ありのまま受け止めて反芻するような読み方がしたい方には向かないだろう。

    レビュー筆者は、プナンのことを本書で初めて知った。今後、彼らについて社会学や生物学等の観点からも学んでみたい。興味の導入として非常に優れた一冊だった。

    ※ピダハンやアモンダワなど、「時間の概念を持たない」とされる人々についても、本書と同様の形式で読めたらどんなに楽しいだろう。

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著者プロフィール

立教大学異文化コミュニケーション学部教授。
著作に『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(2018年、亜紀書房)、『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』(2022年、辰巳出版)、『人類学者K』(2022年、亜紀書房)など多数。
共訳書に、エドゥアルド・コーン著『森は考える──人間的なるものを超えた人類学』(2016年、亜紀書房)、レーン・ウィラースレフ著『ソウル・ハンターズ──シベリア・ユカギールのアニミズムの人類学』(2018年、亜紀書房)、『人類学とは何か』(2020年、亜紀書房)。

「2023年 『応答、しつづけよ。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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