- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784751521991
感想・レビュー・書評
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短いのに、内容がギュッと詰まったとてつもない一冊だった。
(帯より)
人はいかに生きるべきか?
小さなぼくに教えてくれたのは祖父だった。
両親を失った少年は祖父と暮らすことになる。
祖父は(物語の最後に祖父の過去がわかるのだが)、孫に生きる上で大切なことを日々教える。その教えが、とても深く、一つ一つ恐ろしいほどに心に突き刺さってくる。
苦しいことがない人生なんて無意味だ。
嘘ってどういうものなのか。
親が子を思う気持ちって、どんなものなのか。親の愛を知ると、自分だって、ちゃんとした大切な人間に思えてくる。
そんなことを教えてくれた。
幾つになってもダメなままな自分も、苦い経験を積むことにより少しは良い生き方ができるようになればいいのに、…できてないな。改めて自分のダメさを痛感した今日に、この本が教えてくれたものは大きかった。
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9歳のハニバル少年は、両親を事故で亡くして祖父ポップに引き取られた。
豊かではないが、祖父の静かな情愛を受けて日々を過ごしていた。
祖父は言う。
「空には、太陽だけでなく、月も、星も、明るく照らしてくれる。辛い時は夜空を見上げれば必ず光がある」
「喧嘩をするより、平和を作る人のほうがずっといい」
「(神様のことを)自分の都合良いときだけ信じるのかい?神様をどこかへおっぱらおうったってそうはいかないよ」
「嘘そのものに命はない、その嘘に命をやるのは言った人間だ。嘘を生かすためには全部覚えていなければいけない。嘘を生かしておくためにまた別の嘘を言わなければいけなくなる」
「人に良いことをされたら、それを覚えておくだけでいい」
ハニバルは祖父の猟銃に憧れを持ち、ある日「畑を荒らす鳥がいる」と嘘をついて銃を撃たせてもらえることになった。得意になるハニバル少年だが、自分が撃った小さく美しい鳥がぐにゃりとした死体に為って転がっている姿を見てぎくっとする。「ナゲキバトだよ。近くに巣があるんだろう」祖父は静かに告げる。
それは母鳥で、二羽の雛がいた。残された父鳥だけで二羽は育てられない。祖父はどちらかだけでも助けるために、どちらかを締め殺すようにいう。それを静かに成し遂げたハニバルの心にこの情景は残り続ける。
友達と呼べるのは、隣家の2歳年上のチャーリーだけだった。
チャーリーの父は飲んだくれで、暴力をふるい、息子のチャーリーに学校に行かせずに自分のかっぱらいや強盗の手伝いをさせている。
ハニバルは、チャーリーのしていることが良くないことだと分かりつつもどうしようもない。
クリスマスの少し前に、祖父はハニバルにある話をする。
日々を真面目に生きる優しい兄と、貧乏ぐらしに嫌気が差し家のものを盗んで都会で自堕落な生活を送る弟の話だ。
兄と父は全財産をなげうって弟を助ける。
だが二人は火事に巻き込まれてしまう。父親が助けられるのはどちらか一人だ。さあ父親はどちらを助けたのだろう。
祖父と少年ジャンル(勝手に命名)の中でもかなり良い中編。
全面的に静かで穏やかで、しかしラストで、そこに至るまでの苦しみが静かに姿を現す。
ハニバル少年は決して優等生タイプではなく、嘘をついたり、見えを張ったりしてしまうこともある。しかしまっすぐ進る目を持っている。
静かに語られる物語。 -
僅か127ページの淡々とした静かな物語なのに、胸を撃ち抜かれる思いがする。
主人公は9歳の少年・ハニバル。
両親を交通事故で亡くし、アイダホ州ボイジに住む父方の祖父にひきとられることになる。
そこで経験した早春からクリスマスまでの忘れられない日々を、大人になったハニバルが回想するという形でえがかれている。
ある日祖父の猟銃を手にしたハニバルが、抑えられない好奇心から「ナゲキバト」を撃ち落としてしまう。遊びの狩りはしないと祖父は決めていたのに、だ。
いつも心優しくハニバルを慰めてくれた祖父を裏切ったばかりでなく、思いがけない決断を迫られることになるハニバル。
初めてついた嘘。悪に手をそめていく親友を見守るしか出来ない自分。
何よりも、両親を亡くした悲しみにどう立ち向かえば良いのか途方に暮れる日々。
それらすべてを、祖父のポップは受け止めハニバルを包み込む。
時にキリスト教的な説教臭さはあるものの、お話の主題はもっと大きなものだ。
ひとりぼっちの少年と祖父といういかにもアメリカ的な図式だが、その場しのぎのものではない深い考察と愛がしみじみとこちらの胸にも伝わってくる。
しかし、ポップの過去に隠された秘密が明かされる時、ああそうだったのかと、何もかもが腑に落ちる。
残酷とも言えるほどの人生をひたむきに生き抜いてきたから、ポップの今があるのだ。
小学生の頃はじめて読んだ、聖書の「カインとアベル」の話を思い出す。
何故なんの罪もないアベルが殺されて、カインが生きているのか。
私には分からなかった。アベルが哀れで、カインはただ憎らしかった。
また、「放蕩息子」の話も記憶によみがえる。
何故、放蕩の限りをつくした弟が帰っただけで、真面目に働いている兄よりも歓迎されるのか。これも分からなかった。
だが、大人になった今は痛いほどよく分かる。
生きて、生き延びて、生きることの尊い意味を学ばねばならないのはカインの方であり、放蕩息子の方なのだ。
悪いことをしようなどとは露ほども思わないのに、知らずに巻き込まれてしまうこともある。いい人でいたいはずなのに、常にそうであることは難しい。
判断力と知恵は、どこからどのように生まれるのだろう。
どうすれば身に着けられるのだろう。
そんな子ども時代の強い渇望と不安感や寂しさを、この一冊でありありと思い出す。
暗い道で見つける、小さなあかりのような作品。
自費出版で出したこの本が、口コミでここまで広がったというのは、そういうことなのだろう。-
海外小説はあまり読まないけれど、レビューを読んで痛みはあるけれど希望のある物語なんだと思いました。
いつか読んでみたいと思います。
私も...海外小説はあまり読まないけれど、レビューを読んで痛みはあるけれど希望のある物語なんだと思いました。
いつか読んでみたいと思います。
私もフォローさせていただきます。2017/05/18
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9歳で両親を亡くした主人公が、祖父にひきとられふたりで暮らすなか祖父から教えられた大切なこと。。。
静かに、、静かに心に響く物語のなかで、強く胸を打つ祖父の言葉。主人公と境遇はちがうけれど、私にも祖父の言葉は痛いほど刺さった。
けれど不思議なのは、祖父の言葉ひとつひとつがとても素直に心にしみとおってくることだ。祖父の情愛がとてもよく伝わってきて、ぬくもりさえ感じた。
ここに書き留めたい言葉がたくさんあるけれど、なにも知らないうえでこの本を手に取ってもらいたいので、、、我慢。
この本は初め自費出版だったそうですが、感動が人から人へと伝わり大手出版社より、改めて出版されたそう。
これほど心に響くのは、作品自体の良さもそうですが、片岡しのぶさんのすてきな訳もあってだろうなと感じました。読み心地がとても良かったです。
またすぐ読み返そう。
ナゲキバトは、nejidonさんの本棚より出会えた良書。出会いすぎてレビューで度々お名前を出すのはと控えていたのですが、募る感謝をどこかで表さないと、溢れてしまいそうなので。いつもお世話になり、ありがとうございます^ - ^!とても素敵な一冊でした◎ -
親をなくしたハニバルに,話上手な祖父が語り掛け,人生で大切な事を教えてくれる。ナゲキバトを撃った話や悪友チャーリーの苦渋の選択が胸を打つ。読後,深く静かな感動に浸る。
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娘の夏休みの宿題。
指定図書の一冊。
読了した時、衝撃と感動で体が痺れた。
幼くして両親を亡くした少年ハニバル。
祖父のホップと二人で暮らし始める。
これは少年ハニバルの物語と思って読んでいた。
なんて可哀想なハニバル。愛情に満ちたおじいさんと暮らせてよかったって。
でも、これは祖父ホップの物語。
私の人生がいつか誰かのためになるのなら、
苦しみにも本当に意味があると思える。
苦しい時は何にもわからない。本当に何も見えなくなるからね。 -
主人公のハニバルが、9歳の頃、両親を事故で亡くし、祖父に引き取られて過ごした約1年の日々を、大人になってから記した書。
何度も「おすすめの本」として見ていて、あらすじや解説に「ナゲキバトを撃ってしまったこと」が重要なこととして記されていたが、実際に読んでみるとナゲキバトの事件はハニバルが得た経験の一つに過ぎず、本書すべてが大事な生き方の指南書だということに気付いた。
比較的薄くて読みやすい本書の中に、どれだけ大事なことが書かれていただろうか。
なんど涙ぐみ、胸を熱くしただろうか。
たった9歳で両親を亡くしたハニバルにとって、祖父はどれだけ温かい存在だったことだろう。そして、祖父もまた、ハニバルに寂しい思いをさせないよう、どれだけ多くの愛情で包み込んでいただろうか。
1959年のアメリカでの話である。時代も国も違えど、「生きる」ということにおいて大切なことはきっと変わらないのだろう。
「なにかをして、たとえ苦しくともその結果をひきうける。それが人生だ。そういう経験をするために人間は生まれてきたんだ。苦しいことがなにもない人生なんぞ、無意味だよ。わしら人間は、祈るなら、苦しいことの意味を理解するのを助けてほしい、と祈るべきだ。苦しいことを取りのぞいてほしい、と祈るのではなくね。」
この、ポップ(祖父)の言葉に涙ぐんでしまう。苦しいことなどさほど経験していない生温い生を送っている身でも。
「なにかをして、たとえ苦しくともその結果をひきうける」
それは、ハニバルのナゲキバトしかり、オスカーの件しかりだ。
そして何より、祖父の過去が露わになることで、この言葉が一際重みのある言葉となって、胸を突いた。だって、苦しいことを引き受けたことのない人間に言われても何も響かないだろうから。
何かをして苦しむことは生きていれば必ず起こることで、それを引き受けることが人生だというのならば、生きて、間違えて、傷つけて、失敗して、苦しむことも、それすらが愛おしいと思えるではないか。もしそうならば、相当救われる。
父と兄と弟の話は、衝撃的で胸を衝く。
願わくば、人生においてそんな決断をすることがなければよいが。
生きるとは、修業であって、救済なのか。
キリスト教の考えが元になっていても、仏教的にも考えることが出来ると思った。
親友のチャーリーのことも心に残る。
寂しくて、ほんの少しの愛を得たくて悪に手を染めていく…それは、現在の日本でも普通に起こっていることだと思う。
チャーリーにとって、その後の人生はどういうふうに変わっただろうか。
生きていれば、悪いこともするし、失敗もするし、辛いこともある。
寂しいし、孤独だし、殺めることすらある。
それでも、たった9歳のハニバルが真摯に生に向き合う姿は、いじらしく、胸を打つ。
ポップのような愛情に包まれて、自分も「よく」生きてみようと思うのだ。 -
両親を事故で亡くし、田舎町で祖父と二人で暮らす少年が主人公。章ごとに一つの事件を扱い、その中で祖父が少年に「いかに生きるか」を教えて行く連作短編風の仕立てです。
ネットで調べると非常に高い評価を受けている本ですが、私はちょっと。。。
私の感覚は「小中学生向けの教訓的な民話」です。物語としては素朴、悪く言えば稚拙。良い話なのだけど、わずかに押し付けがましさを感じる。
あとがきには、最初は自費出版で、口コミでベストセラーになったと書かれています。著者の来歴を調べてみると宣教師だったこともあるようで、なるほどそんな感じがます。
説教臭いと感じるか、良いと思うか、読み手の精神状態によって評価が分かれるのだと思います。 -
両親を亡くしたハニバルを祖父が引き取り、彼を育ててくれる。
こんなふうに子供を育てられる人がいるのか……人生の教訓、自分が死んだあとでも孫がつよく生きていけるように、との思い。
途中は泣きながら読んだ。
猟銃に興味を覚えたハニバルが、ナゲキバトを撃ってしまったあとの教えが、厳しいけれど、このように叱られたら、言い聞かせられたら、反抗も出来ない。自分の罪の深さを、自身に刻むしかない。
ハニバルが撃ったのは、母鳥だった。
巣の中には、二羽のヒナが残っていた。
祖父が、このようなことを言う。
「どちらかを選びなさい」
「父鳥だけでは、二羽は育てられないから、どちらを残すかを選びなさい」
既に、母鳥を殺してしまった後悔で押しつぶされそうになっている子供に、自分の過ちを知らせる。
ハニバルは、この祖父の思いに答えられる、よい心根を持った子供だった……
ある父親と、二人の息子の物語も、とても胸に迫る。
とても父親思いで、真っ当に生きている息子
財産を使い潰すような、放蕩息子
その息子を牢屋から連れ出すために、真っ当な息子の財産を撃って金を作る。
しかし、あるとき、火事が起きる。煙に巻かれてしまった息子たちを、父はひとりしか助け出す時間がない。
どちらも同じほど愛してるのに。彼はどちらを選んだか。
また、その理由は。
神というものが、すがるものではなく、自分の魂を支えてくれるものという生き方が、素晴らしい。
まだ苦しまなきゃいけない。まだがんばらなきゃいけない。
まだ、自分のおかした過ちを償うために、生きなきゃいけない。
だから……
ラストまで、様々なエピソードがからみあっていて、驚いた結末。
この作品を読んだときは、自分ががんばらなきゃ、つよく生きなきゃって思いながらも、弱くて悩んでぼろぼろになっていて、余計に迫った。