シャーロット・ドイルの告白

  • あすなろ書房
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本棚登録 : 56
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751522158

作品紹介・あらすじ

少女はなぜ、大西洋上で裁かれることになったのか?いま明かされる、驚きの航海の全貌!ニューベリー賞銀賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 『殺人の罪に問われ、裁判で有罪となるような一三歳の女の子はめったにいるものではありません。でも、このわたしがそうでした』

    世界で最も古い児童文学賞である、ニューベリー賞の銀賞受賞作(1991年)。のっけから、殺人の罪、裁判、有罪という児童文学らしからぬ不穏な言葉から始まるだけあって、波乱に満ちた冒険物語です。

    イギリスからアメリカへ大西洋を横断する船に乗ることになった、上流階級のお嬢様であるシャーロット。しかしいざ乗り込む段になると、シャーロットと同乗するはずだった人たちはそれぞれの都合で現れず、シャーロットは一人船に乗り込むことになり……

    上流階級のお嬢様だったシャーロットにとって、身なりや言葉遣いのなっていない乗組員は、いかに親切でもなじむことができない相手。一方で船長のジャガリーは、言葉遣いや身のこなしも丁寧で、シャーロットが唯一なじめる相手となります。そしてジャガリーに頼まれるままに、シャーロットは船員たちの怪しげな行動を、ジャガリーに報告し……

    船上という閉鎖空間と、閉じられた特殊な人間関係が織りなす、不和、反抗、そして狂気。幼く、これまで守られてきたシャーロットが目の当たりにするのは、一見しただけでは分からない人間の恐ろしさ。豹変する人間の狂気と、自分の行ったことに対する後悔に、幼い少女はとことん打ちのめされます。

    しかし、ここから立ち上がるシャーロットの姿がとにかく力強かった。船に襲いかかる嵐に命の危機を覚えながらも、今までになかった自分の力や勇気を振り絞り、自分の殻をどんどんと破っていくシャーロット。作中の嵐の描写が非常に詳細なだけに、それに果敢に挑む彼女の姿の力強さ、成長していく姿というのものが、より鮮明に映える。

    目的地が近づくにつれ、不穏な空気に満ちていく船内で起こった殺人事件。孤立無援の状況にシャーロットは追い込まれ、船上裁判が開かれるが……

    強大な敵との息詰まる対決、目まぐるしい展開に、そしてなにより少女の勇気と成長。そして冒険と自由!

    大人向けの小説にはない児童文学らしいキラキラ感というべきものを、久々に感じることができたように思います。楽しくどこか懐かしい気持ちにもなる一冊でした。

  • 5年生の息子がアメリカの学校で読んでいる本の日本語訳。

    子供の学校では、2、3ヶ月かけて、授業でみんなで読むらしい。

    英語版を読もうと思ったが、難しくて断念。日本語訳でも小学生には難しいと思った。1990年代に書かれた話だが、船用語がたくさんあり、舞台が1800年代というのも難しく理由かもしれない。難しいけれど、読んでいると情景が浮かんできた。

    話の内容は、展開が早く、飽きずに読めてよかった。推理小説かと思っていたが、謎解き部分はほんの一部だった。

    飛行機のなかった時代に旅することの大変さや、階級、人種、男女差別などが当たり前だった時代の生きづらさもすごく伝わった。

  • お嬢様のシャーロットが家族のもとへ帰るために乗った船での出来事を、シャーロットの回想という形で綴られる海洋小説。

  • 世間知らずのお嬢様が、船旅で荒っぽい船乗り達と出会い、正義を信じて成長する姿は感動しますね!

  • しばらく前に読了。アヴィは二冊目。
    船上裁判のところが、アヴィのいちばん書きたかったところだろうなぁと思う。異常だ、異常だ、異常だ!という非難の仕方の理不尽さ。これは「いま」読むからその皮肉が活きるのであって、そこに19世紀を舞台にした理由があるのだろうけど、でも逆に、船長のこのロジックを屁理屈と取るうちの何人が、形を変えて「いま」起こっている理不尽さに気づくのかと思うと、時代の差を笑うだけでは何にもならないなと思う。「過去のこと」として笑ってすませられない、「いま」の文脈で受け取り直せるようなしかけが、もう少しあってもよかった気がする。
    表紙絵の傾き具合が好き。

  • アヴィ、これは面白かった。
    13歳の上流階級の女の子がたった一人で舟に乗りこむという始まりから不穏な空気が漂い、船長が悪人だということは読み手には分かってしまうが、主人公が船員になるテストとしてマストに登るシーン、殺人の被告になり裁判がおこなわれるシーン、船長との対決など、見せ場が非常にうまく書かれている。主人公の最後の選択も(リアルかといわれれば疑問だけど)爽快。
    よくできた児童向けエンタメ作品で、非常に心を打つってことはないが、読ませる作品だと思う。

  • とてもわくわくする物語だった。
    家族のもとへ帰るために乗った船。
    一緒に乗ってくれるはずだった父親の知り合いの家族はおらず、
    たった一人の乗客となったシャーロット。
    今まで関わったことのないような人たちに囲まれて、
    立派な身なりをした船長に気に入られようとするのは
    ごくあたりまえの反応だと思う。
    たとえ優しく接してくれた船員が本当のことを言っていたのだとしても、
    それまでの経緯など知るはずもない彼女にとって、
    どうしたらいいのか分からない状況において、
    船長に頼ろうとしたことを責めることなどできない。
    それによって2人の船員が傷ついたとしても。
    だが、その後の彼女の行動には驚かされるものがあった。
    幼いなりの純粋な正義感があったとしても、
    それまでぬくぬくと育ってきた彼女が、船員としての生活を選ぶなんて。
    しかも、それがより彼女をいきいきとさせていくのだ。
    最後の最後まで気の抜けない船長とのやりとりは本当にどきどきもので、
    この期に及んで助けようとしない船員たちになんでじゃーっとは
    思うものの、そーゆー世界でずっと生きてきた彼らにとっては生き残る道しか選べないとゆーものなのだろう。
    ラストの彼女の選択には、きっと迷いはなかったのだろうけど、
    ずっと後になって、あのまま家族のもとにいたなら、と思うこともあるのだろうか?
    けど、海の上のシャーロットはきっとずっといきいきとしているのだろう。
    が、父親がちょっと残念。
    彼女が経験したものを、まるごとそのまま受け入れる度量がなかった、とゆーことか。
    前のシャーロットは父を尊敬していただろうに。
    そうなると、船長と父がよく似ていた、と初めの頃彼女が思ってたのは
    正鵠を射ていたといえるだろう。

  • 19世紀の良家の子女シャーロットがイギリスへの航海で見つけたものは… 海洋冒険小説だけど、女の子が主人公というので、生き生きと感じられた。この時代にこんなふうであることは異常としか見られないのかな。シーホーク号に乗って出発した彼女にはどんな未来が待っているのだろう、と想像してしまった。

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著者プロフィール

1937年生まれ、アメリカの作家。脚本業ののち、息子の誕生を機に児童・青少年向けの小説を書きはじめる。70冊以上にのぼる著書は、アドベンチャー、ミステリー、ファンタジー、ゴースト・ストーリー、童話など幅広い分野にわたり、多くの国々で出版されている。主な邦訳作品に、1996年ボストングローブ・ホーンブック賞を受賞した『ポピー―ミミズクの森をぬけて』(あかね書房)、2003年ニューベリー賞を受賞した『クリスピン』(求龍堂)、『シャーロット・ドイルの告白』(あすなろ書房)などがある。

「2019年 『ぼくがいちばん ききたいことは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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