発達障害をめぐって (発想の航跡・別巻)

著者 :
  • 岩崎学術出版社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784753311422

作品紹介・あらすじ

「まえがき」より
 老齢になったボクは週二日の診療で、一日四十~五十人の外来を診ています。その中の三分の一は発達障害を基盤にした患者さんです。多くは本人自身ならびに家族の無理解さらには人生での傷つき体験から、「生来の脳の発達凸凹を無視しての活動負荷、によって二次障害を受けている」人々です。さらに加えて、「専門家による不適切な向精神薬治療、によって三次障害を蒙っている」人もあります。発達障害の根本的治療法はまだありませんが、「脳は常に発達し続けている」が頼りです。その脳自身の発育努力を援助し妨げないことが、わたしたちの正しい方針だと思っています。その考えで毎日の診療をしています。
 『発想の航跡』の読者はおもに専門家ですし、本の厚さも値段も一般向けでありません。そこで「発達障害」に関する部分を別冊とし、当事者や家族の方々向けの本に纏めてみました。纏めるにあたって、ボクの現時点での診療の実際と考え方について、「現時点でのボクの『発達障害』診療」と題しての書き下ろしを、この別冊の第一章として添えることにしました。
 発達障害の増加に伴い、関連の出版物が洪水のように溢れています。ほとんどは「外の視点」から書かれたものです。ごく少数ですが、当事者の「内の視点」から書かれた体験記があります。それを是非お読み下さい。発達障害は各人各様ですから、体験も各様です。ただ一点だけ共通するのは、外からの「理解」と内からの「体験」の食い違いの酷さです。何の苦しみでも「病んでいる・つらい体験」は他人にはわからないのが当然ですが。発達障害では他のすべての「病い」と比較して群を抜いています。体験の豊かさや細やかさや複雑さ、とコミュニケーション機能の未発達の組み合わせが生み出した結末なのでしょう。体験記を読まれることで、外からの「理解・判定」は実はとんでもない「誤解」であり、専門家が良かれと思って行う援助や助言で当人も家族も却って苦しむ結果になり、「二次・三次障害」を増やしているのかもしれないと、「立ち止り省みる」余裕が生まれますと、そこから新しい道が開けます。一言でいうと専門家が知識を盛り込んで書いている解説書(ほとんどの書籍)は当事者(本人と家族と援助者)にとって益が少なく害が大きいです。

感想・レビュー・書評

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  • 前から気になっていたけど、図書館にあったから借りてみた。これが図書館にあるってのもすごいけど、一般向けにまとめ直したとのこと。なるほど。

    内容はやっぱり神がかっているけど、参考にできそうなこともたくさんある。買わないといけないな。

  •  カウンセラーから神田橋條治先生のご本を紹介されました。どうも精神医学界の権威らしく(…知りませんでした)、沢山の臨床をされてきた見地から、発達障害を様々な角度で分析、治療、治療助言をされています。しかもその眼差しは、とても優しくまた、内容は実践的でもあります。

  • 作者の本はこれがはじめて。
    読み進めて筆者を知っていくうちに、この人だからこそ届く言葉、効く療法があるんだなと思った。なるほだカリスマ性とはこういうことか、と。

    ふとしたところで筆者の感性が見えるのが良い。



    もちろん知識と技法を十分積んだ上でのものなのだろうけど。臨床というからには、治療者の個性も見えた方が面白いと思った。







    ちなみにちなみに、この本は自分の人生の最重要本の1つに入るくらい思い入れがある!
    自分の欠点を思い知って絶望してた頃。心理の道を選んだのを後悔して実際辞めようとしてたタイミング。そのときにこの本を読んで続けていく腹が決まった。
    特にあとがき?部分が沁みて、読みながら泣いた。私にはわからないことが沢山あるけど、私にしかわからないこともあるんじゃないか、と。それを探していく人生にしよう!と思えた。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/771385

  • 他のお医者さんと違う!

  • 初出本で一般向けに読めそうな論考を整理してまとめられた本。買って読むと、二度読みが多かったが、改めて時間を経だてて読むと理解が違うところも出てくる。

  • 131頁からの「ケーススーパーヴィジョン」が感動的だった。
    最初は(このカウンセラーさん、大丈夫?)だったのに。失礼しました!

    巻末の書評に興味がわいたので、いくつか読んでみたい。

  • 味わい深いが独特。
    理解できるとすこんと落ちる。

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著者プロフィール

1937年生まれ。
1961年、九州大学医学部卒業。
1971-1972年、モーズレイ病院およびタビストック・クリニックに留学
1984年~ 伊敷病院(鹿児島市)にて診療。

本書『精神療法でわたしは変わった』の著者:増井武士、旧知の師匠。

「2022年 『精神療法でわたしは変わった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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