ジェイン・オースティンに学ぶゲーム理論:恋愛と結婚をめぐる戦略的思考
- NTT出版 (2017年12月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757123328
作品紹介・あらすじ
経済学をはじめ社会科学や様々な分野でますます注目されるゲーム理論。本書はカズオ・イシグロも敬愛するイギリスの代表的作家ジェイン・オースティンの恋愛小説を読みながら、ゲーム理論を解説する話題作。最先端の理論に大きな示唆を与え、オースティン研究にも新たな視点をもたらす、ゲーム理論、文学研究双方にとって刺激的な必読書。
感想・レビュー・書評
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ジェイン・オースティンの作品を、ゲーム理論の視点から読むなんて、目の付けどことが誠にオツ。
よくよく考えてみれば、小説も現実の恋愛も、ゲーム理論の具現と言える。相手が何を知りどう考えどう動くか…オースティンはサンプルとして最適かもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ぶあつくて難しそうで敬遠していたのだが、さほど読みにくいわけではない。ものすごくおもしろい。恋愛や結婚は二の次三の次で、とにかく戦略的思考、他人の心を読む(あるいは読まない/読めない)話。オースティン先生はものすごい戦略家でした。他人の心を読む方はわからない、むしろ「クルーレス」(「察しの悪さ」)の話がおもしろい。ベトナム戦争やイラク戦争の話も満載。数学はほとんど出てこない。ところどころ翻訳が微妙なところがあるけどいずれ直してもらえるだろう。
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ジェイン・オースティンに学ぶゲーム理論 マイケル・S‐Y・チェ著
物語に見いだす「戦略的思考」
2018/2/17付日本経済新聞 朝刊
本書は、ゲーム理論と文学の合体という画期的な試みだ。
ゲーム理論は、人間の活動をゲームだと見なして分析していく分野である。ポイントになるのは、人は他人の出方を予測しながら、自分の行動を決める、という点だ。これは人生やビジネスに活(い)かせるとばかり、挑戦した人も少なくないと思うが、多くは挫折の憂き目を見たのではないか。その原因は、第一に、難解な数学で記述されており、第二に、例示されるゲームが専門外の人々にはけして面白くない類のものだからだ。
本書は、その二つの困難を覆す工夫をしている。数学は全く出てこないし、恋愛小説と民話を題材としている。恋愛小説は、ジェイン・オースティンという19世紀初めの英国の代表的な作家の6つの作品であり、民話は、アフリカ系アメリカ人のトリックスター的物語である。著者は、これらを題材にして、人々の「戦略的思考」について説明していく。
オースティンの作品は、要するに、女性がどうやって意中の男性を射止めるか、という話だ。著者は、オースティンの記述の中に、ゲーム理論の萌芽(ほうが)を見出(みいだ)す。「偶然を装って遭遇する」とか、「受動的に見えることで有利になる」など、婚活によくある行動を戦略的思考として意図的に描いている、と。
解説部分を苦痛に思う人も多いだろう。日本人にはなじみの薄い作家だし、物語の要約というのは、実に読みにくいものだからだ。そういう人は、民話のほうを中心に読解すると良い。例えば、第4章の『フロッシーとキツネ』。これは、運ぶ卵を、狙っているキツネから守る少女の話だが、「知らないふり」を戦略的に使う、という不完備情報ゲームの非常に優れた例となっている。著者は、これらの民話を公民権運動の歴史と重ね合わせており、胸に響く。
著者は、戦略的思考の反対としての「察しの悪さ」に注目する。これは、社会的距離、身分の維持等々に起因すると言う。実に鋭い観察である。さらには、オースティンの作品には、ゲーム理論を刷新できるアイデアさえ内包されるとまで言っているから、ゲーム理論に通じている専門家が読んでも得るものが多いだろう。
原題=JANE AUSTEN,GAME THEORIST
(川越敏司訳、NTT出版・4600円)
▼著者は米カリフォルニア大ロサンゼルス校教授。
《評》帝京大学教授
小島 寛之
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東2法経図・開架 331.19A/C69j//K