東アジア経済戦略 文明の中の経済という視点から (ネットワークの社会科学シリーズ)

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  • NTT出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757141308

作品紹介・あらすじ

どんな政治・経済制度もその国の国柄・歴史、その地域独自の文明と離れて機能しはしない。アメリカ・中国の荒々しい帝国型文明と異なる文明観をもって、わが国は東アジアとつきあえるのか。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、アメリカナイズドされた新古典派経済学に対して、日本自体の文明の復権をすることによってその地位を保つべきだと論じたものである。

    筆者によれば地域には地域ごとのインフォーマルな文化・慣習がそれらを形成する土台になっている。このようなインフォーマルなものは世界共通ではありえない。従って、「市場経済」という画一的イデオロギーでもって、世界を一つに統合することはできないのである。経済の効率化には人間の組織化が必要だ。だが、その組織化には地域ごとの慣習や文化という影響が非常に強い。このように考えると、確かに市場経済イデオロギーは世界を統一できないという筆者の主張は正当性をもっているといえる。

    このようなインフォーマルな文化・慣習はやがて文明として顕在化してくる。筆者によれば上記で述べたような市場経済イデオロギーは、アメリカによる「個人主義的・マニフェスト的思想」に支えられているものである。また、中国を例にとってもこの議論が可能であろう。例えば多くの多国籍企業は中国に対して、WTOレジームへの本格的参入を求めている。なぜなら、近代法に基づいた所有権の確立は、安定した企業活動に不可欠だからである。しかしながら、このような考え方は所詮「法」といった単純化された観点からしか中国を俯瞰していない点で不十分である。中国にはヒトとヒトのネットワークの中に埋め込まれた信頼関係が経済の基盤になっているため、上記のような市場経済イデオロギーのみで中国を判断するのは尚早であるというのが筆者の主張である。

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著者プロフィール

(監訳者)原洋之介(はらようのすけ)1944年兵庫県生まれ。1972年 東京大学大学院農学研究科博士課程修了。東京大学教授を経て、現在、政策研究大学院大学特別教授。専攻は国際経済論、アジア経済論、農業経済論。<主な著作>『クリフォード・ギアツの経済学』(1986年度発展途上国研究奨励賞)『現代アジア経済論』『開発経済論第二版』『「農」をどう捉えるか』『アジアの「農」日本の「農」』他多数。

「2014年 『良い資本主義 悪い資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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