DUEL LOVE -恋する男子は勝利の王子- (ビーズログ文庫 み 1-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757743304

作品紹介・あらすじ

桂桜学園-この学校では夜の旧校舎で密かに格闘大会『B‐1』が開催されている!気になるクラスメイトや優雅な先輩、可愛い後輩まで出場し、転校してきた優実はビックリ!だが彼らを支えたり癒したりするうちに、意外な一面も知り仲良くなっていった。そんなある日、ライバル校の不良に絡まれたところをクラスメイトの結城たちに助けられた優実。数日後、彼女のもとに届いた矢文は…ライバル校からの決闘申込状で-!?大人気セコンド系恋愛ゲームが完全オリジナルストーリーで登場。

感想・レビュー・書評

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  • 回送先:目黒区立目黒本町図書館
    斎藤美奈子ならば一読して「ア本」と斬り捨てるだろうし、私もそう思えてならない(トンデモ本と言ってもいいのだろうが、それではと学会の皆様方にご迷惑をおかけしてしまう。強いて言うならば「呆れた」・「開いた口」のアにして「ア本」だろうか)。
    とにかく腹立たしいのである。

    というのも、本書において問題とすべきなのは、中等教育課程のサークル(これらを「部活動」と呼んでいるそうだが実態としてはこっちの方が差し支えないだろう)において見られがちな「性別による役割分業」が露骨なこと。主人公は女性だからという理由の下、「男性に守られる女性」を見せられること自体、非異性愛者の私にすれば不快ではある。しかしそれ以上に私を唖然とさせたのは、なぜ彼女に「まねーじゃー(≠経営監督責任者)」という役割を要求しかつまた彼女をそれを何のためらいもなく内面化している部分には思わず「この子、どれだけ思考停止すればええんかい?」と内心ガックリした。

    さて、その斎藤美奈子は『紅一点論』において次のようなことを述べる。

    ―ヒーローでさえ、男に一律に「戦え」と命じる男の子の国の論理と自分のギャップに悩んで、ものを考えるようになったのに、ヒロインたちは、もののみごとにものを考えようとしない。ヒロインがものを考えるとは、女に一律にセクシーであれと命じる「男の子の国の論理」に抵抗すること。女はみんな恋の奴隷であれと命じる「女の子の国の論理」に反逆することにほかならない。
    「女の戦い」は「男の戦い」と同質ではない。社会制度の矛盾に気づかず、それと真正面から戦わず、男の戦士に媚態を売るか、男の戦士のように戦うだけのアニメの国のヒロインがテレビの前の女の子の視聴者を勇気づける存在だったと言えるだろうか(斎藤2001:pp221-222)

    原作がゲームだそうで、そのノベライズであることを割愛するとしてもこの作品におけるジェンダーバイアスと家父長制の再生産を贖罪する意味にはなりえず(むしろ、批判されてしかるべきであるとして捉えられる)、そしてイケメンが出ているからと言う理由だけでそこに潜むジェンダーの問題を全く検討もしない水澤のジェンダー意識の甘さがにじみでる。

    思考停止の人間が大嫌いという性格ゆえに少々辛口なことを言ってはいるが、少なくとも「なぜ?」という全くの外野からの視線に応じるだけの度量は欲しい。その度量もないようなのでは作家として少々マズイのではあるまいか。サブタイトルの「恋する王子は勝利の王子」と名付けること自体、ジェンダースタディーズから石が飛んでくるし、メディアリテラシーをかじったことのある人間ならば、この作品をめぐるリテラシーの必要性がお分かりいただけるのではあるまいか。

    武道・格闘技=男性というのはたんなる幻想に過ぎないのだから。

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