侍女ですが恋されなければ窮地です (一迅社文庫アイリス)

著者 :
  • 一迅社
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本棚登録 : 42
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758048811

作品紹介・あらすじ

傭兵隊との契約更新のための結婚?大切な姫様を野蛮な傭兵隊長になんて渡せません!公国の姫に、継母から持ち込まれた傭兵隊長との政略結婚。侍女マリアダは、秘密裏に姫を恋人と駆け落ちさせることに成功!-したものの、怒った公妃から姫のふりをして傭兵隊長を誘惑し契約更新を取り付けるよう命じられる。姫の幸せを守るため、マリアダはしぶしぶ身代わりとなるが…。侍女と敏腕傭兵隊長の身代わりラブファンタジー。

感想・レビュー・書評

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  • しっかりしてそうに見えて初々しいマリアダが可愛いです。
    ただしっかりしている分糖度が低い気がするので、もうちょっと甘さが欲しい。
    ジルヴィーノがマリアダをどう思っているのかが伝わりにくいのでジルヴィーノ視点とかがあると良かったかな。

  • 蹴鞠猫のモデルいるとしたら、ヌマルネコかなと思いながら読んだ。オリジナルならごめん。
    結構面白かった。
    ヒロインもヒーローもちゃんと仕事してた(ここ大事)
    冷静×ちょい意地っ張りのかけ合いも良かった。

    こないだまで、フィギュアスケートみてたから、マリアダの名前をみるたびコリアダくん思い出した(どうでもいい話)

  •  少女小説が読みたい―――私はその日も飢えていた。ときめきと萌えに。そして手に取った本がこれ。5・7・5のタイトルが妙にしっくり来たのと、表紙の女の子が可愛かったので。実際めっちゃ可愛かった。この女の子、ヒロインで侍女のマリアダちゃんの可愛さを主に紹介して、レビューとしたい。

     マリアダ、18才。カファル公国の公姫―――の、侍女である。「侍女ですが」というタイトルに偽りはない。頬を染めながらも眉を寄せてしかめっつらをして、背後の色男を睨みつけている、表紙の可愛い女の子がマリアダちゃんだ。10才で侍女見習いとして城に上がってからずっと、愛してやまない公姫・エルヴァラに仕え続けた来た。エルヴァラにのみ忠実な、冷静で有能な働き者の侍女である。マリアダは、冷静を心掛けているようなのだが、どうも生来は情熱的な性質のように見受けられる。私には、エルヴァラへ向ける真摯な愛情からも、それがうかがえるように思える。エルヴァラは、見た目の美しさを内面の美しさでもって輝かせる、つつましくも可憐な菫のごとき姫君である。マリアダが、必ずや守り通してみせると心に固く誓うにふさわしい、昔話のお姫様のような女の子である。エルヴァラの美しさは、実の母を亡くした悲しみと、継母からの冷遇の中にあっても、潰えることはなかった。もちろん、エルヴァラが折れてしまわなかったのは、召使でさえ継母であり現公妃であるテレーザを恐れてエルヴァラを無視する中、たった一人で支え続けたマリアダの存在あってのことであろう。なんという美しくも愛らしい主従愛。メイドと不遇の姫、いいですね!
     しかし、実はマリアダの大事な姫君・エルヴァラ、「窮地です」なのだ。ピンチなのである。エルヴァラのピンチはマリアダのピンチなのでやはりタイトルに偽りはない。状況を説明するには、少しばかりカファル公国とその周辺の国について説明しなければならない。この世界、国同士の小競り合いは当たり前であり、弱みを見せれば国を獲られる、なんてこともある、厳しい世界である。そのため、どの国も自軍の兵力を補うために傭兵と契約を交わしている。折節、季節は冬。この世界の慣習として、傭兵契約更新の時期であった。カファル公国が現在契約している傭兵隊長の名前は、ジルヴィーノ・マカード、表紙の不敵な顔したイケメンである。一年前の冬には無名であったのでテレーザに安く買い叩かれてしまったのだが、この一年で戦績をあげ名を挙げた。もちろん、来期の契約も同じ値段で、なんて無理な話である。現に、マカード傭兵隊の元には、各国から契約の話が破格の値段で持ちかけられている。しかし、カファル公国としては、他の国に雇われるとまずい。この一年で、マカード傭兵隊はカファル公国の国防の弱みも強みも知ってしまっているのだ。敵になるととってもまずいのである。ところが、残念なことに、カファル公国にはお金がなかった!お金がなかったのである!
     そこで困ったテレーザ様が考えた作戦が、「そうだ、エルヴァラをおまけにつけよう!」であった。エルヴァラが大好きなマリアダちゃん、大激怒である。私の大事な姫様をそんなどこの馬の骨ともしれない男の妻にだなんて! マジおこなマリアダちゃんかわいい。マリアダは、怒りながらも冷静に頭を回し手を回し、隣国の大商人の家の三男とエルヴァラを密かに引き合わせた。誠実で情熱にあふれる青年と、美しく心根の優しい姫は当然の如く恋に落ち、物語の冒頭、マリアダの手助けあって無事駆け落ちを果たすのである。めでたしめでたし……で終われば話は簡単だった。そうであればマリアダは、「恋されなければ」なんていう状況には陥らなかったのである。
     「エルヴァラさまは駆け落ちしました! 傭兵隊長なんぞの妻にはなりません! ざまあ!」とテレーザに告げ、辞表を出そうとしたマリアダちゃん。テレーザに言われた言葉は「あんたが代わりに傭兵隊長をたらしこんで、来期の傭兵契約を取り付けてきなさい!」であった。もちろんマリアダちゃん、皮肉を交えつつ拒否。しかしテレーザ、強かな女性である。マリアダの弱みを良く分かっている。マリアダがやらないなら、傭兵契約のために借金をし、「エルヴァラが駆け落ちした困った」と方々で触れ回り、エルヴァラが自ら帰ってくるように仕向けるとおどしたのである。マリアダは、心優しいエルヴァラなら、そんなうわさを聞けば、国を助けるために自分の幸せを捨てて帰ってきてしまうだろうと考える。愛するエルヴァラさまのために、マリアダはジルヴィーノ・マカードをたらしこむために四苦八苦するはめになるのであった。エルヴァラさまのためにがんばっちゃうマリアダちゃん可愛い。

     マリアダちゃんの可愛いところだが、エルヴァラさま大好きなところももちろん可愛いのだが、ジルヴィーノとその飼い猫・ルクムと関わるともっと可愛い。普段、冷静で理性的に行動している分、それが崩れた時の可愛らしさが一掃際立つ。ルクムを前にしたときのでれでれになった態度、キスされそうになって慌てふためく様子、ジルヴィーノを意識してそわそわしている素振り、誠実ではないいやな行為を強いられ辛くなって涙目になっている様子はいじらしいし、それを分けてくれと言われて溶け出した心細さと安堵からぼろぼろ泣いてしまうマリアダちゃん抱き締めたい。なぜそこで抱き締めないんだジルヴィーノ。物語展開としてはとても分かりやすく予想もしやすかったが、マリアダちゃんの魅力にぐんぐん引っ張られて読んだ一冊でした。マリアダちゃん可愛いよマリアダちゃん。


     なお、このレビューではマイナス情報しか出なかった公妃・テレーザだが、彼女も一冊通して読むと大変いい女だったことを書き添えておく。

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