- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758411844
感想・レビュー・書評
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自動車メーカーの工場に勤務する敦子は作業服と安全靴の装備で工場を駆け回る現場主義。そんな彼女が新しいプロジェクトの立ち上げで、本社に出向することに。着慣れないスーツで奮闘するお仕事小説。前半は恋愛や人間関係など絡めながらも影が薄く、自動車制作のドキュメントを読まされているようで、なかなか読み進めるのが困難でしたが、 プロジェクトに暗雲がたれ込めるあたりから、徐々に勢いが出てきました。魅力のあるキャラクターも多いので、もう少し人間ドラマを掘り下げて欲しかったな、と少し残念な部分が残りました。
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ものづくりの現場がよくわかって面白いことは面白いのだが、誰がしゃべった言葉かわからないことが多く、読むのに少し苦労した。
それから、日本の企業ってこんなに社内恋愛が多いのかなとツッコミたくなってしまった。まあ、そういうことがないと小説にならないのかな? -
作者はメーカー勤務経験があるだけあって工場の場面はリアリティある。
でも大手で工場勤めの女性社員の本社出向ってのはありなのか?
とちょっと引っかかりはあったけど概ね楽しく読めた。
働く女のど根性物語って感じだね。
ただ途中で主人公とサブキャラが入れ替わっての一人称部分は余計な気がする。
無くてもよかったんじゃないかな。
森深紅(もりみくれ)はこれが2作目のようなので今後に期待したい。 -
東京堂書店の平台で見つけた本。車メーカーで働く人たちの話。どの業界でも、現場と現場を支えるところがあって、 同じミッションに向かっているはずなのに、どうしてケンカしちゃうんだろうとか、何年社会人やっても思ってしまう。まだまだ青いかな。
個人的には、井上さんがとても気になります。
2012/2/4読了 -
つくづく、働く女性を主人公にした小説は難しいと思う。成功しているのは、桂望実の『ハタラクオトメ』に代表されるように、上司や組織といった男性型社会に対抗するOLや派遣社員(しかもホワイトカラー)というわかりやすい構図の小説が多く、弱者の視線に安住してしまっている。
本書に登場する坂本敦子は、そんなイメージを吹っ切るような、男性と対等に働いている優秀な技術系社員なのだが、仕事の内容をまともに書けば書くほど、今度はわざわざ女性を主人公にした意味が薄れてしまう。言ってみれば、島耕作が主人公でも通用するストーリーになっているのだ。ところどころ冗談なのか本気なのかわからない女子トークが挟まれるので、ますます中途半端に感じた。
著者の前作『ラヴィン・ザ・キューブ』と同じように、読んでいてなかなか中身に入り込めず違和感を感じてしまうのは、小説が悪いのではなくて、実際に会社の中核で働いている女性の姿をイメージしにくい古い読者の方にも原因があるのかもしれない。
ただその分を割り引いても、キャラ設定がテレビドラマ向きのステレオタイプで、生身の人間があまり感じられないのは前作と同じ。女性ばかりの職場につきものの「面倒くささ」のシーンや、本社と現場のギャップといった事象はよく書かれていると思うのだが、「浪花節」のはずの敦子の内面の葛藤を描く場面でもドライな表現のままなのが残念。まるでドラマの脚本を読んでいるようだった。
わかりやすい結末で、読後感は前作より上。こういうオシゴト小説を書き続ける人は少ないし、もっと読んでみたい。内面の書き方でもう一皮むけてくれると、ありがたい。