新川和江詩集 (ハルキ文庫 し 7-1)

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  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758430937

感想・レビュー・書評

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  • 小池昌代さんが巻末に「言葉の農婦」という素晴らしいエッセイをよせていらっしゃいます。
    「新川さんの詩は、日常生活のなかでひととひととが交わす言葉の意味のレベルとほぼ同じ高さで読むことができる。その点で少しも難しい詩ではない。(中略)『扉』という詩は、まだ幼い子供の母である自分と働く(創造行為をする)自分とが分裂してしまう詩で、おそらく新川さん自身が、モデルだと思う。女性性というものを、いつも引き裂かれてあるものと言ったのは誰だっただろう。新川さんの詩には、その意味で常に「性」というものがある。この引き裂かれた破れ目の予感がある。引き裂かれてあるものとして、新川さんは、常に女であり、母であり、だからこそ詩人でもあった。(中略)わたしを名付けないでと懇願したひとは、しかし、母と呼ぶ者の前には母の顔になって妻と呼ぶひとには妻の役割をはたそうと、実際にはせいいっぱい、うごきまわるひとのように見える。(中略)それ以上でも、それ以下でもない、じゃが芋がじゃが芋であることの、正確な重み。それを量ろうとして、しかし秤は揺れ止れない。この言葉の農婦は、こうしたことの一切を知って、そっと慎み深く言葉を置く。それを、わたしは、真摯な「労働」のように感じる」
    「扉」
    締め切り日が近づくと
    わたしはますます無口になり
    仕事部屋をくらい海底のように澱ませて
    岩かげに終日ひっそりと魚鱗を光らせていたりした
    するとおまえは
    幼い足どりで廊下をつたって来ては
    かたくなに閉された扉の前に立ち止り
    飽くことのない情熱で母の名を呼びたてるのだ
    ママ!ママ!ママ!
    (中略)
    くりかえし呼びたてたのち
    扉をひらいて抱きあげてくれるひとが
    おまえにとって母の実感なのだった
    その声をきいていると
    われとわが身が次第に頼りなくなって来た
    わたしは無機物になり
    おまえの背後によりそって
    せつない声をはりあげていた
    わたしよ!わたしよ!わたしよ!
    〈後略)

    この選集は3部構成で、初期詩篇では「ひばりの様に」「れんげ畠」「橋をわたる時」「しごと」。それからでは「「ノン・レトリックⅠ」「わたしは 何処へ」「骨の隠し場所が…」幼年・少年少女詩篇では「二月の雪」が特に好きでした。

  • 国語の教科書に載っている本 小6 「野のまつり」

  • わたしを束ねないで

  • 活動の長い作家さんなので作品が多くて圧倒されます。数ある作品のなかで「これは好きだなあ」とか「難しくてよくわからない」と思うものもありますがそれでいいのかなぁと思います。折にふれ頁をめくれるよう手元に置きたいです。

  • 清潔感と、生活のリアルが同居する大好きな詩集。

  • みずみずしい言葉の洪水。
    生命力あふれ、ときに清楚でときに艶っぽい。

  • 「わたしは 何処へ 行くのでしょう 人生は荒野だ とはいっても 歩いて行かない わけにはいかないのです・・・」

  • 果てしなくみずみずしく、凛とした温度。

  • 悩んでいる時に借りて、泣きました。どうしたら人間になれるのだろう。

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著者プロフィール

1929年茨城県結城市生まれ。疎開で結城に滞在していた西条八十に師事。詩風は多様で詩集刊行・受賞歴は多く、現代日本の代表的な詩人である。『ローマの秋・その他』、『土へのオード13』、『火へのオード18』、『水へのオード16』、詩とエッセイ集『詩が生まれるとき』他。代表詩に「私を束ねないで」がある。1983年から1993年まで吉原幸子と共に女性用詩誌「ラ・メール」を刊行・主宰、女性詩人の育成に寄与。子供用の詩集としては、思潮社編現代詩文庫64『新川和江詩集』(1975年)巻末に「幼年・少年詩篇」として、現代詩文庫132『続・新川和江詩集』の巻末に幼年詩集『いっしょけんめい』、『星のお仕事』としてまとめられている。その中の一篇『名づけられた葉』は独立した詩集の題名として出版された。

「2018年 『日本女性2人詩集(1)おばさんから子どもたちへ贈る詩の花束』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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