パズルの軌跡: 穂瑞沙羅華の課外活動 (ハルキ文庫 き 5-4)
- 角川春樹事務所 (2009年10月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758434362
感想・レビュー・書評
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「パズルの軌跡」は三池崇史監督、市原隼人、谷村美月主演で映画化された「神様のパズル」の続編で、様のパズルの時はまだ大学生だった主人公(綿貫基一、穂瑞沙羅華)の卒業後を描いています(故に「パズル」の軌跡と)。
卒業後なので、綿貫基一、穂瑞沙羅華とも社会人になっている感じですが、穂瑞沙羅華は飛び級で大学に入っていたため、本作では実年齢とおり高校生活を送っています。といっても内面的に色々とかかえていることは後半判明していきます。
まったくの余談ですが、映画版は三池崇史監督が設定等にガンガン手を入れているため、小説とはかなり違う内容になっています(その辺は三池崇史監督の三池崇史らしさでもありますが、ここでは語る所ではありません)。もっともこの映画は映画で完成度は高く個人的には好きな映画の部類に入っています。
パズルの軌跡は、大学を卒業してとある企業の研修を受けている綿貫基一に「ネオ・ピグマリオン」という企業から会いたいというメールから物語がスタートします。
普段(研修中も)はなにかとトロい綿貫ですが、このメールを受け取ってからすぐに接触の理由が「穂瑞沙羅華(この作品では性が変わり森矢沙羅華になっています)」との橋渡し役を望まれていることに気が付きます。。。。
この敏感さが常に出ていれば、このあとのトラブルの大半は避けられるのにな、、、
なんて思い返すぐらい鋭いです(笑
そんなことはともかく、ネオ・ピグマリオンの社長である樋川氏と接触しますが、依頼内容は「失踪人探し」ではあるものの、そのためには
穂瑞沙羅華が開発に携わったシステム(Qコン)のチューンナップが必須と言われ、やはり「穂瑞沙羅華」絡みであることが判明、最初は二の足を踏むものの「穂瑞沙羅華に会う理由ができる」と、なんとも短絡的な理由で承諾をします(後に「理由などいらない」と沙羅華に言われますが)。
最初は沙羅華もネオ・ピグマリオンの依頼を断っていますが、断るための理由を探していく中で「ある発見」をしたことから、表面上は関与しないふりをしつつ、独自の調査を開始し一人で真相に近づこうをしていきます。
ネオ・ピグマリオンが探す失踪人はどこに?
ノアスとは?
ライフロストは誰?
ゼウレトの狙いは?
アポロン・クラブとは
といった謎解きが表面的な面白さなんですけど、実際のところ沙羅華はこういった表面的(というか「俗っぽい」といったほうがいいのかもしれない)な謎解きにはまったく関心がなく、行動のすべてが「人とは(=自分とは)?」を探すためだけといったも過言ではありません。
沙羅華の行動規範と、一般人(読み手)の代表として存在している綿貫との考え方、行動のギャップも物語の厚みを増すことになっているんですよね。あと、今作では二人の距離が離れたり縮まったりと(一般的な恋愛論とは違いますが)ラブロマンスもアクセントになっていて変なドキドキ感もあります^^
神様のパズルのときは「宇宙を作る」という内容がテーマだったため、物理の法則がかなり登場して読みにくさを感じた人もいると思いますが、パズルの軌跡ではテーマが「自分探し」に変わり、より身近な内容になっているため、いくらか読みやすくはなっているように思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2012/01/26
移動中 -
作者は前作でヒロインが「萌え」と言われるのを嫌っているようだが、前作の方がリアルに、今作の方がライトノベルっぽく感じたのは皮肉。
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SFである。
もう完全に探偵物である。ツンデレである。 -
前作が面白かった+安売りしてたので購入。
前回は、「宇宙は作れるか」をテーマにサイエンティフィックに物語が作られていたのですが、今回は「内宇宙を作り直す/人間とは何か」をテーマにしてある為、哲学的な流れになってました。
むしろ、前よりも内容が直接的になってる分、分かりやすくなってるんですが、似非理系としてはこの変化は悲しいですねー。 -
前作、神様のパズルを読んだのをきっかけにして買った文庫本です。
作品コンセプトは好きな部類です。
文章も読みやすくはあるのですが、表現方法がちょっと・・・。
一人称視点で物語はすすむんですが、ところどころにでてくる「である」調の表現に違和感を感じます。 -
前作の続きとなるが、前作を読んでなくても楽しめる。
けれど、前作ほどのインパクトは無かった。 -
「”内宇宙”を作り直せば、その外側の宇宙も変わる理屈だ―」
……『パズルの軌跡』7頁
前作と違って、今回は脳科学や幸福論的な哲学が主題になっている。部理学的なSF要素はそれを語る道具に過ぎない。
そのため、物理用語はさほど多くはなく、物語の概要も分かりやすいものになっている。
内宇宙という普遍的テーマを題材にしているのも興味深い。
ただ逆に、物理を基軸にした前作の物語に魅力を感じていた読者にとっては、少し物足りない印象を受けるのではないだろうか。