パズルの軌跡: 穂瑞沙羅華の課外活動 (ハルキ文庫 き 5-4)

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  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758434362

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  • 「パズルの軌跡」は三池崇史監督、市原隼人、谷村美月主演で映画化された「神様のパズル」の続編で、様のパズルの時はまだ大学生だった主人公(綿貫基一、穂瑞沙羅華)の卒業後を描いています(故に「パズル」の軌跡と)。

    卒業後なので、綿貫基一、穂瑞沙羅華とも社会人になっている感じですが、穂瑞沙羅華は飛び級で大学に入っていたため、本作では実年齢とおり高校生活を送っています。といっても内面的に色々とかかえていることは後半判明していきます。

    まったくの余談ですが、映画版は三池崇史監督が設定等にガンガン手を入れているため、小説とはかなり違う内容になっています(その辺は三池崇史監督の三池崇史らしさでもありますが、ここでは語る所ではありません)。もっともこの映画は映画で完成度は高く個人的には好きな映画の部類に入っています。

    パズルの軌跡は、大学を卒業してとある企業の研修を受けている綿貫基一に「ネオ・ピグマリオン」という企業から会いたいというメールから物語がスタートします。

    普段(研修中も)はなにかとトロい綿貫ですが、このメールを受け取ってからすぐに接触の理由が「穂瑞沙羅華(この作品では性が変わり森矢沙羅華になっています)」との橋渡し役を望まれていることに気が付きます。。。。

    この敏感さが常に出ていれば、このあとのトラブルの大半は避けられるのにな、、、
    なんて思い返すぐらい鋭いです(笑

    そんなことはともかく、ネオ・ピグマリオンの社長である樋川氏と接触しますが、依頼内容は「失踪人探し」ではあるものの、そのためには
    穂瑞沙羅華が開発に携わったシステム(Qコン)のチューンナップが必須と言われ、やはり「穂瑞沙羅華」絡みであることが判明、最初は二の足を踏むものの「穂瑞沙羅華に会う理由ができる」と、なんとも短絡的な理由で承諾をします(後に「理由などいらない」と沙羅華に言われますが)。

    最初は沙羅華もネオ・ピグマリオンの依頼を断っていますが、断るための理由を探していく中で「ある発見」をしたことから、表面上は関与しないふりをしつつ、独自の調査を開始し一人で真相に近づこうをしていきます。

    ネオ・ピグマリオンが探す失踪人はどこに?
    ノアスとは?
    ライフロストは誰?
    ゼウレトの狙いは?
    アポロン・クラブとは

    といった謎解きが表面的な面白さなんですけど、実際のところ沙羅華はこういった表面的(というか「俗っぽい」といったほうがいいのかもしれない)な謎解きにはまったく関心がなく、行動のすべてが「人とは(=自分とは)?」を探すためだけといったも過言ではありません。

    沙羅華の行動規範と、一般人(読み手)の代表として存在している綿貫との考え方、行動のギャップも物語の厚みを増すことになっているんですよね。あと、今作では二人の距離が離れたり縮まったりと(一般的な恋愛論とは違いますが)ラブロマンスもアクセントになっていて変なドキドキ感もあります^^

    神様のパズルのときは「宇宙を作る」という内容がテーマだったため、物理の法則がかなり登場して読みにくさを感じた人もいると思いますが、パズルの軌跡ではテーマが「自分探し」に変わり、より身近な内容になっているため、いくらか読みやすくはなっているように思います。

  • 2012/01/26
    移動中

  • SF小説のジャンルになるのかな?

    久しぶりに機本さんの作品を読みました。
    人間とは何か・幸せとは・人類の進むべき方向は
    といったような一見難しいテーマを扱っていました。しかし読んでみると、誰もが大なり小なり考えていることを、改めて取り上げているという感じです。

    加速器が色々な使い方をされている小説世界ですが、現実にも加速器を利用して様々な実験がおこなわれており、将来ここまで実用化できるほど進歩するといいですね。(がん治療とか)

    自我か全体我かというのも1つのテーマになっています。
    全体我の概要はつかめた気がしますが、それが「真理に近いところ(極めると真理に達する)にある」っていうのが全く分かりませんでした。読解力不足でした。

    ストーリー自体はさらっとしていて読みやすかったです。以上。

  • 作者は前作でヒロインが「萌え」と言われるのを嫌っているようだが、前作の方がリアルに、今作の方がライトノベルっぽく感じたのは皮肉。

  • SFである。
    もう完全に探偵物である。ツンデレである。

  • 具合悪い中で読了。

    「神様のパズル」の続編。
    前作はこてこてのSFだったが、今回はインナースペースへ向き合うお話。超天才児と凡人の織りなす会話で話は進んでいき、最後には一分の情が理に打ち勝つ。

    下手な探偵ものの雰囲気で、SF的な要素は前作に比べるとガタッと少なくなっている。イーガンの「しあわせの理由」に迫れたのなら評価は高まるのだろうが、残念ながらノアス理論はそこまで辿りついていない。


    超天才児集団のアポロン・クラブとそこから離脱したメンバーにより構成されたディオニッソス・クラブ、人間の生命の根源に迫ろうとする国際企業ゼウレトなど、あやし伏線はたくさんあってまだまだ続編を作れそう。


    キャラクターの名前が、穂瑞(ホームズ)と綿さん(ワトソン)、森矢先生(モリアーティ)などエドガー・アラン・ポーの古典を文字っており、作中で使用するパスワードも221Bだったりとニヤリとさせられる。

  • 前作が面白かった+安売りしてたので購入。
    前回は、「宇宙は作れるか」をテーマにサイエンティフィックに物語が作られていたのですが、今回は「内宇宙を作り直す/人間とは何か」をテーマにしてある為、哲学的な流れになってました。
    むしろ、前よりも内容が直接的になってる分、分かりやすくなってるんですが、似非理系としてはこの変化は悲しいですねー。

  • 前作、神様のパズルを読んだのをきっかけにして買った文庫本です。
    作品コンセプトは好きな部類です。
    文章も読みやすくはあるのですが、表現方法がちょっと・・・。
    一人称視点で物語はすすむんですが、ところどころにでてくる「である」調の表現に違和感を感じます。

  • 前作の続きとなるが、前作を読んでなくても楽しめる。
    けれど、前作ほどのインパクトは無かった。

  • 「”内宇宙”を作り直せば、その外側の宇宙も変わる理屈だ―」
    ……『パズルの軌跡』7頁

    前作と違って、今回は脳科学や幸福論的な哲学が主題になっている。部理学的なSF要素はそれを語る道具に過ぎない。
    そのため、物理用語はさほど多くはなく、物語の概要も分かりやすいものになっている。
    内宇宙という普遍的テーマを題材にしているのも興味深い。
    ただ逆に、物理を基軸にした前作の物語に魅力を感じていた読者にとっては、少し物足りない印象を受けるのではないだろうか。

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