- 本 ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758442305
作品紹介・あらすじ
居酒屋「ぜんや」の女将・お妙は、亡き夫・善助の過去について新たな疑念にとらわれ、眠れない夜が続いていた。そんななか、店の常連客である菱屋のご隠居の炉開きで、懐石料理を頼まれる。幼い頃に茶の湯を習っていたお妙は、苦い思い出を蘇らせながらも、客をおもてなししたいというご隠居の想いを汲んで料理に腕をふるう。湯葉の擂りながし、かますの昆布締め、牡蠣の松前焼き……つらい時こそ、美味しいものを食べて笑って。「ぜんや」がつなぐ優しい絆に心あたたまる、傑作人情小説第六巻。
感想・レビュー・書評
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居酒屋ぜんやの女将・お妙の作る美味しく、滋養のある料理を食べにくる旗本の次男坊で美声の鶯メノウを持つ林只次郎とお妙の取り合わせが楽しい物語です。
お妙の夫・善助が殺された事について日本橋大伝馬町一丁目の太物問屋菱屋の隠居が、ぜんやと関係を持った大店の旦那衆と一緒に近江屋について調べだした。そして、ぜんやの用心棒の草間重蔵についても近江屋の回し者かと疑いだす。
【口切り】
時は、寛政四年(1792)。菱屋の隠居が、居酒屋ぜんやのお馴染みを集めて茶会を模様した。炉開きの茶事の懐石料理をぜんやの女将お妙28才が任された。出された、ぷるんとした海老糝薯(しんじょう)に箸を入れ、頬張ったとたん目尻にぎゅっと皺が寄った。湯葉の擂り流しも口に含み、目を閉じて堪能してから、ふふふとくすぐったそうに笑いだす。(33頁) 茶室では、只次郎、菱屋の隠居、俵屋、三河屋、三文字屋が、お妙をまじえて近江屋について調べた事を話し合いだした。
【歩く魚】
林家は、只次郎の父が隠居して、跡取りの重正が当主となり只次郎22才に見合いをと。只次郎は、お妙への想いを忘れかね深夜にお妙に会いに行き、そのまま家を出る。お妙が出してくれた魴鮄(ほうぼう)のあら汁は、魴鮄のあらから出た出汁は上品で爽やか、かつ深みがあり、じわりと口の中に行き渡ってゆく。味噌は出汁の風味を邪魔せぬ程度に薄く溶き入れられており、かといって味が物足りないということではない。(98頁)
【鬼打ち豆】
草間重蔵が酒をあびただけて酔ってしまい寝ている所を襲われたが、只次郎が救う。重蔵は、お妙の夫・善助の亡骸を神田川に流したことを話し始める。それによると重蔵は、かつては近江屋の用心棒であって。襲ってきたのも近江屋のならずものであった。
【表と裏】
寛政五年(1793)正月。重蔵34才は、お妙たちに捕まり、善助の死について知っていることを話し出す。それによると近江屋が、善助を水槽につけて殺し、善助が誤って神田川に落ちたように装うように、重蔵に善助を神田川に流させた。
【初午】
菱屋の隠居をはじめとした旦那衆は、近江屋をぜんやにおびき出し、毒を飲ませたと偽り、真実を吐かせる。近江屋は、前政権の田沼意次と反田沼派に賄賂を贈っていた裏帳簿を善助に握られたために殺したと。
【読後】
テンポがよく、毎話美味しい料理が出てきます。読んでいるだけでお腹がすき大変です。ブックオフで4、5、7、8、10話を各88円で購入したので、久しぶりに居酒屋ぜんやを読みだしました。
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あったかけんちん汁 居酒屋ぜんやシリーズ6作目
2019.02発行。字の大きさは…小。2023.01.11~12読了。★★★★☆
口切り、歩く魚、鬼打ち豆、表と裏、初午、の連作短編5話。
図書館から借りてくる2023.01.11
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《居酒屋ぜんやシリーズ一覧》
10.さらさら鰹茶漬け
09.ほろほろおぼろ豆腐
08.とろとろ卵がゆ
07.ふうふうつみれ鍋
06.あったかけんちん汁 2023.01.12読了
05.つるつる鮎そうめん 2021.10.02読了
04.さくさくかるめいら 2021.05.10読了
03.ころころ手鞠ずし 2021.05.05読了
02.ふんわり穴子天 2021.02.23読了
01.ほかほか蕗ご飯 2020.11.06読了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
居酒屋ぜんや シリーズ6
小十人番士の旗本の次男・林只次郎は、鶯が美声を放つよう飼育し、その謝礼で一家を養っている。
只次郎が一方的に憧れているお妙は、亡き良人・善助が残した居酒屋「ぜんや」を切り盛りしている。
その「ぜんや」の用心棒に納まっている・草間重蔵は、はたして、お妙の良人殺しに関係しているのか、そもそも、天明の打ち壊しを先導した人物なのか。
一方、只次郎は、飼い鶯・ルリオの美声を引き継ぐべき雛たち、3羽とも、歌が下手で
「ホーホケキョ」ではなく「オゲチョ」としか聞こえず、この分だと、今年中にも、廃業の憂き目に遭うかも知れないと、心穏やかではない。
善助殺しの全貌が、いよいよ明らかになる。 -
秋から冬にかけての、居酒屋「ぜんや」、クライマックス。
分からないことが多くてもやもやしていたこれまでとは違い、だんだんと悪の霧も形を作って、はっきりと見えてくる。
悲しみを乗り越えて、人を許すとも許さぬともつかぬ、お妙の選んだ道は絶妙な仕置きとも言える。
素敵な女性。
お妙も、只次郎も、重蔵も、新しい道に一歩を踏み出せそうだ。
お栄ちゃんが相変わらず気になるので、続きも楽しみにしています。
ルリオも。
そして、やっぱり柳井殿はカッコいいなあ、と思うのでした。
『口切り』
神無月。菱屋のご隠居の茶会
『歩く魚』
霜月。林家の子供たちの七五三。
自分の足で歩きはじめること。
『鬼打ち豆』
師走。重蔵、衝撃の告白。
『表と裏』
正月。武家の体制ももう限界ではないか。
頼りなく見えて、意外にしたたかな只次郎。
聞けば、重蔵も気の毒な人生を歩んできた。
『初午(はつうま)』
睦月。知らないうちに大きな波にのみ込まれていた。
誤解の元はボトルキープ?
春の兆しにルリオの美声。
平和な春が来ますように。 -
居酒屋ぜんやの前主人であり、お妙の夫であった善助が殺された原因が明らかになる今巻は、物語として大きな山場を迎えました。
なんかちょっと「めでたしめでたし」と言った風情の終わり方だったので、うっかり只次郎くんのことを忘れていたよ、ごめん。笑
自分が思っていた人物が、そのとおりのひとだったし、時代劇とかでありがちな、悪者はいかにも悪そうなカオをしているっていう、ある意味お約束的な結末で、心穏やかに読み終えることができました。
名鳥ルリオの美声と柔らかな春の兆したっぷりの陽光が(見えないのに感じられる文章ってすごいな、といまさら気づく)、次巻が最終巻なのかなぁという予感を感じさせます。 -
善助の死の真相、重蔵の過去が遂に明らかになる!
こんなにシリアスな話だったとは…
この先どうなるんだろう… -
美人女将のお妙が最高においしい料理でもてなす居酒屋「ぜんや」を舞台にした時代小説、シリーズ第6巻にあたる。
物語はいよいよ佳境に入り、妙の亡夫の死因や犯人が明らかになっていく。
そのミステリー的な要素とは別に、只次郎の生き方にも変化が生まれ、今後どうなるのかと興味深い。
貧乏武家の次男坊に生まれ、自分の商才を讃えられることもなければ活かすこともできず「武士らしさ」「武家社会」の型のなかに押し込められようとする只次郎。
その辺の男性よりも才気にあふれているのに「女らしく」「控えめに」生きることを強いられてきた妙。
現代よりも「個人」の意識が薄かっただろう江戸時代にこういう意識が本当にどれくらいあったのかはわからない。
いずれも現代の作家ならではの視点があってこそ描かれているのだと思うけれど、それぞれの「世界を狭められる辛さ」に、何か突破口が現れるのか、現れないのか、次作が気になる。 -
重蔵さんと、おたえさんとの関係性がわかってしまいちょっと驚き。読み進めていくうちになんだか私もぜんやのお客さんになってきたような気がします。
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重蔵は一体何者なのか。
只次郎と常連の旦那衆が、力を合わせて、善助の死の真相に近づいていきます。
大店旦那衆の余裕と貫禄がかっこいいです。
一方、鶯と共に家を出た只次郎。
ルリオの雛は美しい声で鳴いてくれるのでしょうか。
次巻も楽しみ。 -
只次郎は家を出て長屋に暮らすのね。只次郎父は只次郎に武士として生きてほしいみたいだけど既に林家は部屋住次男の稼ぎ無くしては生活していけないのにどこに魅力を感じろというのかしら。只次郎兄も弟や子供に八つ当たりして武士を誇る割には武士としての矜持が無い。お妙の夫殺しは一区切り。まさかあの方の名前が出てくるとは、あまりの身分違いにびっくりよ。次から新展開があるのかな?
著者プロフィール
坂井希久子の作品





