- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758443302
作品紹介・あらすじ
二年前、沖縄那覇基地に転属してきた幹部自衛官の斑尾怜於奈は異動時期を迎えていた。
その彼女に下ったのは、思ってもみなかった南西航空方面隊司令官付き「副官」の辞令。
副官は激務として知られると同時に優秀と評価される者が就くポジションだが、その仕事内容を知らない彼女を待っていたのは……。
元幹部自衛官で、自らも副官を経験した著者が「自衛隊が直面するトラブルと人間模様」を描く、新しい自衛隊小説の誕生!
感想・レビュー・書評
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元幹部自衛隊が書いた自衛隊小説と言うことで、表紙もライトノベルっぽかったので、自衛隊好きの自分はすぐ飛び付いたが、主人公の斑尾玲於奈が副官になるまで経緯を描いた前半は、彼女が所属する高射隊の専門用語が飛び交い、表紙と違って、なかなか重厚な内容。
もともと高射のスペシャリストを希望する玲於奈にとって、副官への異動は自分の希望とはズレていたが、同じく新しく赴任した司令官、そして司令官や副官を補佐する人たちに支えられながら、現場とは全然違う「副官」と言う職務に邁進していく姿が描かれる。
自衛隊ものは特にいろいろな分隊があり、何をするにもいろんな連携が必要であることがよく分かる。そして、それを誰もが責任、時には誇りをもって任務を担っている。
副官は内閣事務次官の仕事に少し近いのかな、とか思いつつ、最近ネットで配信されていた「空飛ぶ広報室」で出て来た「高射隊」や「浜松基地」なども出て来るので、有川浩の描いている自衛隊ものより、難易度は高いものの、自衛隊好きにはオススメしたい作品。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表紙に描かれた絵から、おちゃらけた内容かと思いきや(じゃっかん、ポップであるのは否定しませんが)、意外にまじめに航空自衛隊司令官の副官を描いたお仕事小説になっています。
舞台が、南西航空方面隊というのも興味深いです。中国への対処もあり、米軍との折衝もあり、他の方面隊よりも、物語として描けるエピソードが多そうなところだとおもいます。
いまのところ、3巻まで出ているようなので、続きを読んてみたいですね。 -
航空自衛隊那覇基地に勤務する斑目怜於奈は高射運用幹部。部隊経験のなかで一通りの経験を重ねミサイル運用に関してある程度の自信がついた油の乗ったタイミングで副官をやらないかと提案された。戦術的な技術と知識を極めたい怜於奈は気が進まなかったが上司に半ば強引に面接に行かされる。
南西空新司令官の溝の口空将に仕え、恒常業務をこなす一方で司令官の愛人?事件や地元マスコミの嫌がらせ報道などに遭遇する。
新たな分野の仕事を覚えるうちに、沖縄に存在する自衛隊、米軍と地元民の関係について、司令官と同じ目線でその存在を見つめ直すことになる。 -
突如の副官辞令。
お断りしたというのに、決定してしまった辞令。
縦社会なので、会社と違って拒否権なし、というのが
ちょっと辛い所です。
新米というのはありますが、自衛隊なので
案外分かりそうなものなのに、という変更も
スルーしてしまっている主人公。
いっぱいいっぱい感はありましたが
なかなか、皆様に迷惑かけてみたり。
場所が場所なので、そういう問題も出てきますが
ちょっと、そちら方面が濃い感じがします。
ここを立てたかった、のでしょうか? -
司令官付の副官に任命された女性幹部自衛官。舞台は沖縄という軍事的にも住民感情的にも難しい設定が、最初の司令官とのエピソードの伏線なのだろう。自衛隊も含め国家公務員にはエリートを育成する土壌がある。この物語は、そんなエリートが特技(特殊技術)の志向とは反する副官として、失敗しながら成長していくものなのだろう。組織を代表する長の秘書的立場というのは、経験したくてもできない人が多いものだ。普通に仕事をしていては見えない景色がそこにある、ということを私も経験させてもらったので、読んでいて首肯できる部分が多かった。
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表紙よりもお堅めなお仕事小説。
作者さんが元自衛官だけあって、細部にわたった自衛隊の内部描写がなされています。
難しい話が苦手なわたしにとってギリギリのお仕事描写。これ以上自衛隊の説明が詳しくなるとギブアップかなぁという絶妙なところで描いてくれています。
なのでわりとお仕事でも人間関係のお話とか、基地外のお話とかはページをめくる手が早くなりました。
秘書にあって秘書にあらず。自衛隊という特殊な世界のことを知れたのは物珍しく新鮮でした。 -
有川浩さんのラブコメ今昔がとても良かったので
似たような(自衛隊系)読んでみたがまた違った話だった。あまり好みではなかった。 -
借りたもの。
元航空自衛官が書いた小説との事で、自衛隊の平時での日々の業務(雑務?)、現行の組織やシステムの話が垣間見れる。
舞台は沖縄。
米軍(自衛隊も含めた)基地問題も絡んで、日本の国防について本音とタテマエがギスギスする沖縄基地の姿が仄めかされる。
大仏見富士『自衛隊入隊日記』( https://booklog.jp/item/1/4054066704 )は曹士の平時の日常(訓練)の様子が主体だったが、こちらは官の視点。
専門性を極めて部隊に配属されることを望む主人公・斑尾怜於奈は本人の希望とは異なる「副官」に配属される……
日々の業務から、副官は司令官の秘書のような立ち位置だと伺える。
かつ、組織全体の仕組みが把握できる立場――ひいてはそういった立場に就く優秀な人材なのだろう。
沖縄が抱える「基地問題」の鬱憤が爆発した、一九九五年の米兵による少女暴行事件についてもちょっと書かれていて、日米地位協定(当時のこれのせいで横暴だった印象)の運用見直しがあったことを知る。
ここから始まった基地反対運動と現在まで続く普天間基地移設問題が根深いのは言わずもがな。
それでも日本防衛に米軍の存在が“欠くことができない”ことを肌で感じている自衛官の視点が書かれている。
そのジレンマと、基地問題が沖縄を二分し、今もくすぶっている事実が伝わってくる。
米兵の犯罪について、米軍側がどういう改善・配慮をするようになったかは言及されていなかった。
私は『物語上の人間関係のゴタゴタなんて、興味ないな…』と思って読んでいたが、登場人物の会話の中で、それらが語られた。
副官の仕事でバタバタしていたのは、訓練の調整よりもマスメディア対策な印象……
北朝鮮がミサイル撃ったり、そんな時に災害救助要請があったり、尖閣諸島のことがあったり……その下手したら一触即発の状態の中でさらに訓練中の事故対応に対する発表に神経をとがらせている事が伺える。
特に左派系メディア――作中ではもう沖縄〇イムスが名指しだったけれど(沖縄って左派メディアしか無いよね…)――の事実の歪曲ともとれるインタビューへの苛立ちがピリピリと伝わってきた。
P-3描写、大活躍。