生命の歴史は繰り返すのか?ー進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む

  • 化学同人
4.08
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759820072

作品紹介・あらすじ

ジョナサン・ロソスは,進化生物学における最新のブレイクスルーが,いまなお続く科学界屈指の大論争にもたらした新たな知見を明らかにする.世界各地を訪れ,地球の生命史における最大のミステリーを,進化実験で解決しようと奮闘する研究者たちに出会う.ロソス自身も,このエキサイティングな新分野のリーダーのひとりだ.グッピー,ショウジョウバエ,細菌,キツネ,シカネズミ,そして彼自身のカリブの島じまのアノールトカゲの実験を通して,生命のテープのリプレイがおこなわれた.

 本書は,進化についての考え方や,議論のあり方を一変させるだろう.自然淘汰と進化的変化に関するロソスの洞察は,生態系の保護,食料供給の安定,有害なウイルスや細菌との闘いに,広く応用できる.臨場感たっぷりに描かれた,この進化をめぐる物語は,わたしたち人類について,そして自然界や宇宙における人類の役割について,新たな理解をもたらす.

★《フォーブス》誌2017年度生物学書の名作

★これまで広く一般向けに書かれたすべての進化生物学に関する本のなかで,本書は傑出した作品だ.壮大な地球の生命史,人類の存在の本質的な危うさ,地球外生命体の存在確率といったテーマを,これほど綿密に,わくわくするような筆致で描き出せるのは,科学者としてもナチュラリストとしても卓越した筆者ならではだ.──エドワード・O・ウィルソン(ハーバード大学名誉教授)

★「ときどき素晴らしい本が出版され,わたしたちが進化について理解していることを再考するのに役立つ.本書は魅惑的で,強烈で,やめられない.まさに,そういう本だ.生き生きとした筆致と思慮深く挑発的な洞察力を備えたロソスの進化論研究は,エドワード・O・ウィルソンの『人類はどこから来て,どこへ行くのか』(化学同人)とスティーヴン・J・グールドの『ワンダフル・ライフ』(早川書房)と並んで読む価値がある.」──BookPage

感想・レビュー・書評

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  • 生物の進化について興味があったので読んでみた。
    結論的にいうと、前半部分(生き物の進化)については非常に面白かったが、後半部分(大腸菌などの微生物の進化)はちょっと難しく冗長に感じた。

    どのような生物でも同じような環境で暮らせば同じような進化をするのだろうか?
    本書では、そのようなテーマで生物の進化が論じられていく。
    語り口は素人にも分かりやすく、科学書といっても初学者でもきっちりと読みこなすことができる。

    本書で大きく扱われているのは『収斂化(しゅうれんか)』ということだ。
    収斂化とは、生物が互いに異なる性質などを持っていても環境によって変化し、最終的には、同質化・同等化・相似化していくということだ。
    例えば、哺乳類であるイルカやクジラが海の中で生活していくにつれ、魚類であるサメやその他の魚の形に似ていくということだ。

    それでは、すべての生き物の進化はこの「収斂化」で説明できるのだろうか。筆者はこれについては否定的な見解を示している。
    例えば、同じ地球環境でも状況によって「恐竜のような生物」が地球を支配したり、現在の「人間のような生物」が支配するなど、その進化の道筋は一つではないのだ。
    しかし、恐竜がもし絶滅しなかったら最終的には二足歩行の人間のような「恐竜人間(ディノサウロイド)」になったのではないかと昔は考えられていたが、現在の科学者は人類のようなヒューマノイドタイプではなく、鶏の羽が人間の腕のように進化し、脳が大きくなった「ニワトリ化け物」のような形に恐竜は進化したのではないかと想像している。非常に興味深い。

    そして、ダーウィンが予想した以上に生物の進化は早いということが分かった。
    イギリスで産業革命が起こった際、蛾の羽の模様がすぐに進化し、明るい色だった羽がすぐに進化し暗い色に変わったのだ。
    これは産業革命で空気が汚れ、木の色がくすみ、保護色であったはずのもともとの蛾の羽の色が明るい色では目立つようになってしまい、煙でくすんだ木の葉の色に対応した暗い色の羽の色にすぐに進化したのだ。

    生物の進化は生命の種族を絶やさないようにするため、すぐにその形態を変えることができるということは驚きの事実である。
    人間の歴史はまだ浅いが、あと数千後には驚くような進化を遂げているのかもしれない。

  • "ありえなさげな運命:宿命と成算と進化の未来”
    めちゃ面白かった。良い原題ですねぇ。まあ起こらなさそうなデステニー(自分で切り開くというか、選択的な感じの運命)、フェイト(どうしようもない運命)、成算、それに進化の未来。わくわくするねぇ。5年ほど前の書籍なので、研究系としてはちょっと古いような感じを受ける方も多いと思うが、なんちゅうても163年前の『種の起源』がまだ現役なので、名著に新旧はないと思う(分野と題材によりけりか)。ロソス博士はネイチャーやサイエンス連発の世界トップレベルの有名研究者。ここんところ進化生命学の文献やら書籍を読んでいたので、其の中でもかなり読み物として面白かった。ロソス博士の冒険譚的な面白さ。グールドの”Wonderful life : the Burgess Shale and the nature of history”が、リファレンスでめちゃ出てくるので、未読の人は読んでおくと、さらにわかりみが深くなると思います。という、私もめちゃくそ昔に読んだので、再読せねばと思う。
    研究の手法やら結果だけでなく、その時に起こったプチエピソードや、別の話や、いろんなアドベンチャーや失敗なども盛り込まれていて、臨場感がある。もちろんアノール(爬虫類)やグッピーだけでなく、色々な別の研究者の仕事やらも平易な言葉で説明され、理解が深まる。ハエはやっぱり進化実験の王道っぽく感じるねぇ(旧人類なので、笑)。
    運命と偶然、人の誕生は不可避だったのかっ?!これからもまだまだ掘りどころの多い、よみごたえのある分野だと思います。

    やっぱり収斂進化はおもしろい!!

  • 糞面白!!
    収斂進化によって進化は決定論的だとする説と、そうではないう実験結果やカモノハシのような実例を上げ、解説するもの。
    この種の本としては専門的になりすぎず分りやすい。ワクワクするので、ページをめくる手がとめられなかった。
    進化について創作で設定を織り込みたいときは、収斂進化について、こんな感じの知識を仕入れておくと良いと思う。
    SFは特に。

  • 生命進化は、どこまでが必然で、どこまでが偶然なのか。そのテーマで書かれたのが、この本である。
    眼、翼、各種の防御機構、生物の持つ多くの機能は異なるパスで独立に進化してきた。基本でもある多細胞化も何度か進化したと言われている。いわゆる収斂進化であるが、自然界にはその収斂進化はあふれている。その観点からは進化は必然であるように見える。一方で、人間が進化の積み重ねによって生まれたのは多くの偶然が重なった結果のように思える。進化は必然か、偶然かというのは興味を惹くテーマなのである。

    この進化生物学という新しい分野における第一人者でもある著者の主張は、「進化は繰り返す」という。
    カリブ海のアノールトカゲ、ガラパゴスフィンチ、グッピー、大腸菌、イトヨ、ショウジョウバエなどの研究事例を取り上げて、環境に適応した個体群の進化がどのように進むのかについて、実フィールドでの観察記録や慎重に設計された環境で実験について解説されている。それらの真実探求に向けた努力は、フィールドワークの実態として地味なところもあるが、読んでいるとどこかワクワクする。

    多くの実験を通して、この本で言われていることのひとつが、「進化は時に急速に起こる」ということである。例えば、その環境における捕食性の魚の存在の有無は、グッピーのオスの体色の進化に大きく速やかな変化を与える。グッピーに環境が与える影響は、ときに数か月、二世代ですでに集団における分化の兆しが見えるということがわかっている。自然淘汰が強く働くとき、進化は急速に起こりうる、しかも予測可能な形で。

    この本ではそのことに触れられてはいないが、おそらく進化の速度において出てくる問いが、「それでは人間についてはどうだろう」である。肌の色はおそらくは紫外線の強さに対する適応によって変わってきた。高地に対応したり、寒冷地に対応するための身体的特徴は世代を経て適応が進んできた結果であると言われている。それ以外の社会的環境による集団間の差異はどの程度の強さで人間の集団に現れるのだろうか。この問題は、優生学や人種差別の問題として常に付きまとう。遺伝学の世界と、個々人の領域と、社会学の観点は互いに混同しないということがまずは原則になるのだろう。そして、それには誠実で正しい知識が必要なのである。

  • 進化を実験によって研究する分野があり、外圧があると進化は意外と短期間でも起こり得て、それは予測し得るというのがまず面白い。遺伝子的に違う種族でも、同じような環境では同じような形質に進化しがちで、中には見分けのつかない生物もいたりする(ウミヘビとか)というのもびっくりではある。
    科学者の著作だけど、内容はエンタメ的だ。もちろんすべてが予測通りに進化するわけでなく、そこには偶然のブレークスルーによる進化の飛躍があるというわけで、その意味では今人間がこうしているのは、ラッキーの積み重なりというわけだけど、それと地道な外圧に対処する短期的進化とのバランスがよくわかるらない(そんな簡単に理解できるものではないでしょうが)。正直三章くらいから中だるみしてしまうが、好奇心はそれなりに満たせる。しかし、ほんと文章がみっちり詰まってて長い。そこは覚悟が必要。

  • オーストラリアでは有袋類が多様に進化し、他の大陸では有胎盤類の種として進化した動物によく似た動物が闊歩している。それぞれに適応放散し収斂進化した結果である。条件が同じであれば同じような進化を繰り返すのだろうか。ところが有袋類でもカンガルーは有胎盤類に似た種は見当たらない。進化の特異点となる。

    本書は進化の偶然と必然をテーマに、必然だとするサイモン・コンウェイ=モリスと偶然であるとするスティーヴン・ジェイ・グールドの主張を論評し、生命進化を観察と実験で明らかにしょうとする試みについて紹介する。ロソスは進化生物学は実験科学になりうると述べる。

    自然を観察する中で収斂進化の事例は沢山見つかる。本書によると多細胞生物から多細胞静物への進化は、動物で少なくとも動物で1回、菌類で6回、藻類で3回、細菌で3回起こっているらしい。しかし、だからと言っても進化の過程は必然とは言い切れない。DNAが解析できる現在ではシャーレの中で大腸菌などを使って遺伝子変化の過程を観察できる。大腸菌なので元になる大腸菌をある程度株分けしたものを冷凍保存しておくことで、同じ実験をリプレイすることも可能なのだ。

    リプレイしていく中で、同じような形質への進化であっても遺伝子レベルでは異なった変異なこともあり、また偶然の変異やいくつかの変異が順をおって起こらないと生じない適応形質がある事がわかる。進化は短期的には予測可能だが長い期間ではどんな偶然がおこるか判らないのである。

    地球外に知的生命体がいるかどうかはとても気になるテーマであるが、ロソスは否定的である。知性、自己認識能力は地球上では収斂進化したといえる。タコでもある程度の知性を持つし、鏡に映った自分をみてそれが自分だと判る動物も沢山いるようである。しかし、ヒトへの進化はアフリカでしか起こっていない。人がいなければ地球は猿の惑星になり得るか?小惑星衝突がなければ恐竜がヒトに進化していたか?

    本書では、進化生物学という分野をわかりやすく説明してくれ、こうした思考実験を楽し婿とができるのである

  • 進化に纏わる本に衝撃を受けたのは「利己的遺伝子」、「ワンダフル・ライフ」に続いて三冊目だ。
    “進化は偶然か、必然か”の問いに丁寧に答えてくれている。

  • h10-図書館2019.11.22 期限12 /6  読了11/23 返却11/24

  • 進化の観察のために広大な敷地を囲ったり、大型プールをいくつもこさえるなど、とにかく実験のスケールが大きい。
    また、グッピー原産地の調査で違法狩猟の散弾で死にかけたり、崖から落ちかけてクリフハンガーでスタローンばりの空中アクションをしたことなどデンジャラスなエピソードがさらっと紛れており、危険が伴う中、バイタリティーで突き進む研究者の姿にはただただ敬服する。

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