- Amazon.co.jp ・本 (613ページ)
- / ISBN・EAN: 9784760140749
感想・レビュー・書評
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目次:プロローグ プロファイラーと司祭、血の声、第1部 マーダー・ルーム、第2部 四人の少年、第3部 ヴィドック・ソサエティ、第4部 モンスター退治、謝辞、訳者あとがき
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ノンフィクション読みには魅惑のキーワード「未解決事件」。新刊
書店へ行って、本のタイトルやサブタイトルにこの言葉が入っている
と無条件で手にしている。
本書はアメリカで発生した未解決事件の捜査に助言的役割を果たす
「ヴィドッグ・ソサエティ」の活動を追っている。
世界初の私立探偵フランソワ・ヴィドッグに敬意を表して名付けら
れた団体には、連邦捜査官、法医学者、犯罪心理学者等、犯罪捜査に
手腕を発揮した人々で構成されている。
彼らは事件発生から2年以上経過し、犯人が判明しないままの事件に
ついて担当の捜査関係者へ助言を与え、解決に導く手助けをする。
逃亡犯の経年劣化した胸像を造る法医学アーティストやプロファイリング
は非常に興味深いし、事件の経過も面白いのだがいかんせん、いくつも
の事件解決が並行して語られており章立ても短いので混乱する。
多分、原書が饒舌なのだろうが翻訳する時に少々省いてもよかった
のではないかなぁ。それに翻訳の文章がこなれてない感じもする。
しかし、アメリカには未解決事件がおおいのだな。時効がないお国
だから仕方がないのだろうけれど。また、それだからこそ、数十年
経っても犯人逮捕が出来るのだろうけれど。
それにしてもプロファイラーって凄いな。分析した通りの人物が犯人
なんだものなぁ。
日本で冤罪だとされている事件も、彼らにお願いすることは出来ない
のかねぇ。しみじみ。 -
未解決事件。
残された家族に延々と続く苦しみを与える存在。
日本でも未解決事件は存在していますが、殺人事件大国のアメリカでは(本書によれば)全国で起こる殺人事件の約30%が未解決のまま。
この状況を憂うる腕利き司法関係者たちが結成した閉鎖的なクラブ、「ヴィドック・ソサエティ」。
本書はこの「ヴィドック・ソサエティ」をテーマにしたノンフィクションで、クラブの中核メンバーであるウィリアム・フライシャー、リチャード・ウォルター、フランク・ベンダーの3人の子供時代やキャリアと言った彼ら個人の過去や3人が出会ってソサエティを設立した以降のソサエティの歴史、ソサエティが解決した事件、解決には至らなかった事件等が解説されていました。
内容を一部ご紹介すると
・ソサエティが扱った未解決殺人事件における真犯人との対決。
・天才プロファイラー、リチャード・ウォルターが推測する(まるで予言のように的中する)犯人像。
・これもまた天才法医学アーティスト、フランク・ベンダーが復元する身元不明死体の生前の顔。
・時に激しく対立するこの2人を結びつける役割を果たすウィリアム・フライシャー。
・他のメンバーたちも集い、マーダールームと名付けられた部屋で月一回開かれる会合。
これらが半ば時代がかり、またキリスト教的価値観の香りを漂わせながら描き出されていました。
所で、このソサエティについてご存知という方は極少数ではないかと思います。
私も知らなかったのですが、本文が再現ドラマ風に書かれていたということもあってか、読んでいる途中、正直「なんだか時代がかった大仰なクラブだな」とか「話をかなり盛っているのではないか」や果ては「(本書を)読んで失敗だったか」とまで思ったりしました。
これは捜査官が占い師に頼ったり、あるいは中核メンバーの一人、フランク・ベンダーに霊感があると言っているかの様な文章に出会ったことで更に深まった印象ではありましたが、本書中盤辺りから、極めて偏屈だが同時に極めて優秀でもあるプロファイラーのリチャード・ウォルターと法医学アートの天才で妻と愛人を複数持つフランク・ベンダーの2人の天才がぶつかり合いながら、事件をまるで奇跡のように解決していく様を読んでいく内にこれらはいつしか消えてなくなり・・・
読み終わった今では、ソサエティが扱う事件の数は限られてはいるものの、彼らが果たした役割は大きいのではないかと思っています。
著者自身の手による後書きによれば、本書はソサエティが1990年から2009年に扱った10件の殺人事件を取り上げており、若干歴史を感じる内容も多いのですが、上記の通り再現ドラマ風に書かれているという事もあってか、とても読みやすい本でした。
所でソサエティの名前に使われている「ヴィドック」ですが、これはフランス人、フランソワ・ヴィドック(元犯罪者で後に現代的な警察組織を世界で初めて作った)からとったものとの事。
なんでも、中核メンバーの一人であるウィリアム・フライシャーは子供時代、探偵コミックに夢中になり、それに出てきたダークヒーローであるヴィドックに強く惹かれるものを感じたとか。
また本書には、当時のアメリカ社会では(野外核実験や人種差別ではなく)少年非行が最も問題視されており、非行の原因が探偵コミックとされていたとも書かれており、時代を感じさせてくれると共に、ゲーム脳論や物議をかもした東京都の青少年育成条例等、現在日本とも共通項があるなあと興味深い内容でした。
中核メンバー個人の歴史書でもあり、また残された遺族や被害者の歴史書でもある本書。
ページ数が600ページ超と厚めの本ですが、上記の通り読みやすい文体で興味深い内容ですので、普段読書をしない方でもサクサクと読めるのではないでしょうか。
興味をお感じになれば、お時間のある時にでも一読されてみては如何でしょうか。 -
ノンフィクション。
米国フィラデルフィアに実際に存在する、犯罪捜査において実績を挙げたメンバーで構成されるクラブが未解決事件に挑んだ事例を紹介する。
ここに出てくる犯罪のグロテスクなこと。小説は現実に遥かに及ばないということ。
それと特に焦点をあてられる二人の人物、1人は理論的なプロファイラー、もう1人は閃きで復顔をおこなう天才的アーティスト。この二人のキャラが秀逸。 -
未解決事件のことを「コールドケース」と言うそうで,同名のTVドラマもありました。
この本は,そういったコールドケースを解決するために犯罪捜査の専門家達が集まって創られた「ヴィドック・ソサエティ」という実際にアメリカにある団体の話です。
日本でも猟奇殺人事件というのが起こりますが,アメリカではその事件数というのが半端でないですし,相当昔から存在しています。行方不明になる人の数も多く,多くが犯罪に巻き込まれているのですが,解決する事件はさほど多くはありません。
ダンボールに遺体を入れられたまま捨てられた少年,失踪する理由が何もないのに突然失踪した息子,しかも,住んでいた部屋は血だらけといったようなケースで,家族は真実を求めています。
警察の捜査も行き詰ったり,中々動いてくれないといった状況の中で,この「ヴィドック・ソサエティ」はボランティアで真実を探っていきます。
元連邦捜査官,プロファイラー,骨から生前の顔を復元できる法医学アーティストといったプロフェッショナルが,次々とコールドケースを解決していく様子は,一級のミステリー小説のようでもあります。
一方で,本の中で取り上げられる事件の内容を見ると,人間というのはここまで残忍になれるのかと,愕然とさせられる本でもありました。