未来からのモノづくり: 秘伝 ポスト空洞化時代の商品開発作法

著者 :
  • かんき出版
3.60
  • (1)
  • (1)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 9
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761255251

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ポスト空洞化時代の商品開発作法

    時代全体にそういう変化を状態とするような
    風が吹きはじめたように思う。
    これらの変化は、時代の多くの「際」(枠組み)
    が崩壊しつつあり、社会や産業を
    再編集しようという変化に見える。
     
    ほんとうのところ価値のあるもの、
    魅力あるモノとは一体何なのか、
    どうすれば生まれるのか

    編集商品

    デザインとは、商品のことでしかない。
    コーポレートデザインなしには
    モノだってつくれないし、売れないはずである。
    コーポレイトデザイン(CD)をつくるときに、
    コーポレイトアイデンティティ(CI)にいった。

    坂井直樹の強調する企業の「かたち」は、
    たとえば「走り去る車の後ろ姿に日産を感じる。」
    といったレベルのモノ。
    従来のコーポレイト・アイデンティティや
    ブランドマネジメントが重視したマークとは異なる。
    ロゴタイプやラベルのデザインなどを含むが、
    それらは一要素である。

    ヨ-ロッパでは、いわばルネッサンス以前からの
    「継承」資産というものを勘定できる。
    数百年の歴史を継承できている。
    企業のかたちって歴史によってデザインされている。

    デザインというモノにたいする価値判断力も
    準備されていない。
    営業成績とか、経常利益とか、
    数値化できる価値だけですべてを図ってきた。
    遊びが蓄積できない。文化がストックされない。

    「デザインマネジメント」(日刊工業新聞)

    技術進化のテーマ(よりはやく、よりうすく、極限まで)
    が変わってしまったのに、
    「安全」とか「地球にストレスを与えない」
    とか努力方向は出ているけれども「商品」とつながらない。
    ニーズとして、
    「エコロジー」「納得」「安心」
    「クリエティビティ」「ソフト」などが表面化してきた。
    商品の価値創造は、マルティプルな価値の複合だ。

    発想の創発性。組織の創発性。方法の創発性。
    「大量生産は企業も生活者も幸福にしない。」
    (85年くらい。)

    unlearning 既知の経験的学習による判断や、
    物事の進め方がうまく行かなくなったときに、
    それまでの学習や経験則をすべて廃棄すること。
    ものの見方、経験の仕方をかえることでもある。
    経済環境ほかの決定的な変化は、
    企業活動で当然のように行われてきたあらゆる方法や
    行動様式のアンラーニングを迫っている。

    グローバルとローカルをつなぐ梯子がかかっている。
    ローカルなものが、グローバルになる。

    パイク(先端の;とんがっているという意味)企業化
    文化の自覚化;これまでの発想の原点が自覚化である。
    文化というのは、「生き方の技術」といえる。
    「ここは譲れないぞ」「ここは変えないぞ」というもの。
    変えないでいるということが我慢できない。
    文化を学ぶというのは、むずかしいが、
    文化をつくることはもっとむずかしい。

    江戸の経済文化でいえば、「のれん」だね。
    沖縄でいえば、門中か?
    地域限定 伊万里焼きは年間出荷量 10億円である。
    窯元も30あまりである。ローカルに徹する。

    半世紀にわたってマーケットサイズを
    維持しているモノに着物産業がある。
    1兆円というマーケットサイズが殆ど変化していない。
    毎日着物を着てまちに出かけるような人は
    殆どいないのに売れ続けているという不思議な市場。

    「情報の同時性」がどんどん高まってきている。
    「人間の欲望というか、求めたいものというか、
    ニーズといったモノは、普遍的なモノであると
    考えて問題をスタートさせようというのが
    これからの方法のひとつです。」

    「多国籍同時創発型文化」

    NTTが、自動車をつくったらどうなるか?
    移動体通信では、情報をスキャンしながら走っている。
    そのスキャンした情報をどうするのかというテーマがある。
    もともと人間は、身体から五感からいろいろな情報を
    スキャンしながら動いている。
    「移動中の人間、つまり移動しつつある文化に
    入力された情報を、もう一度切り分け、区切り目をいれ、
    パッケージして編集する技術がいる。」

    「ちょっと飲みたい人」
    「ゆっくり飲みたい人」
    「よっぱらってしまいたい人」

    日本の製品は、魅力がない。なんて、ホワイトグッズなんだ。
    要するにデザインがつまらない。
    「中味とデザインと、どっちが大切だと思うか」

    技術を必至で導入してきた。
    なにか、とてももったいない。
    ありがたいモノとして取り入れてきた。
    使用価値よりも、所有価値できた。機能主義できた。
    使用することと、所有することと別のことではない。
    見た目に気持ちいい。ずーっと手にしていたい、
    というデザインにかかわることと機能は別のことではない。

    <ハード技術が先行し、デザインは「文化らしさ」
    のお化粧のように、後からついてくるモノである
    と日本では、考えられてしまった。

    Be-1 1986年
    「カンファータブリスト=快適主義者」という奇妙な造語を提示。
    「デザインを退化させましょう。」
    エンジン機能だけでは、人間の欲望は喚起されない。
    車はエンジンと別のモノだ。エンジンは必要だが、
    それは必要条件にすぎない。
    「こんな車に乗ってみたい。」

    PAO 1989年
    「冒険を体験できる車を作りましょう。」
    冒険気分体験自動車 気分を体験できれば、
    別に実際の冒険なんてできなくてもいい。
    冒険は、だいたい映画や本を通して
    われわれは体験したいものなのだ。
    安全な範囲でその気分を味わいたい。

    RASEEN 1992年 レジャー・ビークル
    「アーバンコンバット」「サイレントワールド」
    ファッションにミリタリー感覚があるように
    車にそんなのがあってもいいよね。
    吹雪の荒々しい雪も、ひとつひとつを取り出すと
    美しい幾何学的な結晶の顔をもっている。

    「アーバンコンバット」がワイルドな自然との
    インターフェースをデザインテーマとしてとすれば、
    「サイレントワールド」はちょうどその裏返しなのだ。

    「ヒット商品というのは量ではなく情報の質なのだ。」
    60年代は、ある意味で情報編集の時代だった。
    90年代は、あの時代にコンセプトにとどまっていたものが、
    現実化し、産業化し、社会化し、広く経験されていく時代だ。

    90年代も後半を迎えて、60年代コンセプトの
    具体化ですまされない様相がでてきた。
    ひとつは、「価格破壊」という言葉に代表される
    価格訴求の傾向が強まったこと。

    そしてボーダーレス化の成り行き的進行。
    そんな中で国際価格への同調だけでいいのかという問題も
    あらためてとわれている。

    1995年時点で「ミュータント」という
    コンセプトでくくってみよう。
    この「ミュータント」は、マイノリティと読める。
    80年代は、デザインの枠組みを自由にした時代だった。
    それは、生物進化上のミュータントが、
    外部からの環境圧によって出現するのにくらべて、
    商品を含む文化の方は、環境変化に応じて変化するとは
    限らないということを明らかにした。

    文化や商品のメジャー性やマイノリティ性は、
    商品外的要因にも左右されるが、
    その外的要因にさほど惑わされることなく、
    デザインの実験装置が80年代には存在したということなのだ。

    「ミュータント」とは、そういう意味の新しい
    価値創造プログラムを実験的に発信しようとした
    不易流行デザインの1瞬の出現をとらえたモノ。
    それは、トレンドではなかった。
    年代論や、経済動向などつねに流れてやまないモノと、
    かわりにくいモノ、あるいはかえたくないモノとの
    デザインするという行為が実現したケースなのである。

    物理的な価値をどうつくるかというより、
    心理的な価値をどうつくるかということだけを考えてきた。

    人があるものを欲しいと感じ、
    そばに置きたいとおもい、
    使ってみようと決心してお金をだして
    購買に至るまでのプロセスはどうなっているのか?
    納得というこころのプロセスを組み込んだプロダクトデザイン

    あなたが欲しいモノは何ですか?
    「一緒につくってみましょう。」
    というプロポーザルのプログラム。

    ファッションブランド・マトリックス
    9つのマインドスタイル

    ファッションは、人間にとって意外と本質的である。
    とくに、目に見えにくい人間の欲望の動きを、
    目に見えるかたちにしてくれるという点で。
    事実、世の中にあるいろいろな製品の中で、
    ブランド数が一番多いのがファッションだ。
     
    マインドプロダクツは、集団でつくるモノである。

    「まるで近親相姦で産まれた子供」
    「いかに効率的に生産し、販売するか?」→プロダクトアウト

    EP
    1、こだわり、ユニークさなどの思想
    2、クオリティ、信頼性などの品質
    3、使いやすさなどの機能
    4、色、かたち、感触などの感性

    「願望年齢」が重要である。

    what is original?
    「その人にとって先に見たものがオリジナルである。」

    Fake&Real Original&Copy Natural&Artificial Stock&Flow

    「モノからこころへ」ということは、正しくない。
    「こころをモノへ」という時代に逆戻りしただけである。

  • 読了

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授、コンセプター。
京都市立芸術大学入学後、渡米。サンフランシスコでファッションビジネスを立ち上げる。帰国後はテキスタイルデザイナーとして活躍し、その後1987年に日産自動車から販売されたBe-1のコンセプト企画でヒットを出し、その後は国内外の製品開発に携わる。KDDIの移動体通信(携帯電話)ブランドであるauの外部デザインディレクター。2008年より現職。
主要作品に、KDDIおよび沖縄セルラー電話のau携帯電話(au design project)/東京ガス「ピピッとコンロ」/東レ「トレビーノアクアマイスター」ほか、多数の商品デザインを手がける。
主要著書に、『デザインのたくらみ』(トランスワールドジャパン、2005年)、『デザインの深読み』(トランスワールドジャパン、2007年)ほか多数。

「2013年 『x‐DESIGN 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

坂井直樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×