- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784761277222
感想・レビュー・書評
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営業に関する本は初めて読んだので、参考になるところも多かったです。ただ、ちょっと厳し目にレビューすれば、あまり内容が整理されておらず、体系的にまとまっているという印象は受けませんでした。タイトルから、営業の全体像がわかる本かと思いましたが、どちらかというと「お客様の本音を引き出すためのテクニック全集」といった感じです。また、想定している業界はよくわかりませんが、サービス寄りの内容な気がします。
本書では「お客様は購買行動における負担から逃れるために仮面をかぶっているので、真に受けて頑張るのではなく、それを外すように努力しましょう」という哲学が一貫して語られています。仮面をかぶっていることが膨大なアンケート結果を根拠として示されています。購買担当者も人間であり、彼らの「モノを買う」という目的を一緒に達成していく姿勢が大事ということがよくわかりました。
そこまでは良いのですが、その後は「はぐらかし」「忙しい」「いきなり」「とにかく安く」「検討します」の5つの仮面が紹介され、それぞれに対するテクニックがつらつらと述べられていて、あまり頭に入ってきません。
あまり整理されていない印象を受ける原因を考えてみましたが、どの仮面も結局は「お客様の負担をやわらげる質問力」とか「客に響く課題解決提案」とか「費用対効果を示す」とか「レスポンスを早くする」ということに帰着し、これらのキーワードがあちこちに出てくるためだと思います。違う仮面だったはずなのにやることが似たような内容になっており、さっきと同じページを読んでいるのか?と何度も読み返す羽目になりました。
このような内容であれば、質問力などの力を高めるとどのように役立つか、という視点で書いたほうがスッキリして良かったのではないでしょうか。
と思ったところで著者の前著「無敗営業」の目次を見ると、どうもそんな雰囲気の本に仕上がっている気がします。前著を読んでみたくなりました。
本書のウリは、切り口を変えて情報量を増やし、前著に対してアンケートの件数も増やして、データで「実は仮面をかぶっているんだよ」という根拠を示しているところでしょうか。
そもそも営業のプロセスを考えるなら、関係構築のステージでぶつかる「忙しい」の仮面を最初にしたほうが分かりやすいのでは。「いきなり」に至っては他の章との被りも多く、もはや不要ではないでしょうか。
また、分かりにくい命名も気になりました。特定質問とか核心質問、課題解決質問とかいうテクニックが書かれていますが、ピンときません。特定質問って何かを特定するための質問?と思いきや、どうも条件付き質問や選択肢付き質問のことをそう呼んでいるようです。核心質問は「困ってないですよね」という質問のことで、課題解決質問と呼んでいるのはSPINという有名なフレームワークのことらしいです。
内容を自分なりにまとめます。
・関係構築における「忙しい」の本音は「時間を無駄にしたくない」。アポイントにこぎつけるには、実力があって時間を割く価値のある営業だと思わせるべし。
そのために→客にちょうど刺さる課題を提示し、費用対効果をざっくりと示す。面談の準備ではレスポンスを重視し、商品紹介では「課題とその解決方法・客と共通点のある事例・他社品との比較」を盛り込む。フォローではレスポンスの速さとお役立ち情報が重要。問い合わせて課題を解決するまでに2日以内を期待されているので、チームで知見を共有できるチャットを用意し、レスポンスの速さを磨く。お客様も社内での調整に追われているので、こまめに状況をアップデートするためにコンタクトは週に1回以上が目安。10分TEL面談も有効。
・はぐらかしの本音は「リスクを避けたい」。BANTCH(Budget, Authorities, Needs, Timeframe, Competitors, Human Resources)に関して情報を取りたいときは、不安を和らげ、負担を軽減し、売り込み感の無い質問をするべし。
そのために→枕詞や深堀り、条件・選択肢付き質問、SPINフレームワーク、5W2Hを駆使する。
・「とにかく安く」の本音は「価格以外の判断基準がない」。高めの予算を取ってもらい、高くても買ってもらうようにするためには、価格以外の判断基準を作るべし。
そのために→要件整理をして顧客の要望(課題解決と費用対効果)に答えていることを示す。要件整理では網羅性、具体化、優先順位について質問してすり合わせる。価格を見せる前にしっかり価値を訴求しておくことが重要。売上アップ・コストダウンだけが費用対効果ではなく、会社の成長やミッションの達成、メンバーの負担軽減ができることも費用対効果として見てもらえる。ただし、予算よりプラス10%は要注意(無理かも)。
・「検討します」の本音は「面倒なので保留したい」。いつの間にかの失注を防いでプロジェクトを前に進めるには、待っていないで助け舟を出すべし。
そのために→商談終盤のクロージング段階では担当者レベルの「そもそもの目的→聞いた感触→進め方への意見」を聞き取り、乗り気だと感じたら「BANTCH→社内予定→ネック」と聞き取る情報を広げ、「会社としてのネクストステップ→こちらへのリクエスト→社内会議後の10分TEL面談のアポ」のように話を進める。決裁者を説得する(あるいは説得するお手伝いをする)ために、なぜこの価格なのかロジックを説明して予算化をガイドし、「課題とその解決方法・解決策の希少性・費用対効果」をアピールする。反応が来ないときにはただのリマインドではなく、お役立ちメールを出すようにする。
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客観的なお客さまのデータをもとに営業としての方法が網羅的に書かれている。
課題が出るたびに各項目を見返すと良さそう。ISというよりはFS向け。