人間都市クリチバ―環境・交通・福祉・土地利用を統合したまちづくり

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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761523398

作品紹介・あらすじ

総合性、戦略性、実行力に学ぶ。世界でもっとも都市計画が成功した人間を大切にする都市・クリチバ(ブラジル)の秘訣。

感想・レビュー・書評

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  • 都市開発に関してはまったくの素人ながら、
    実際にクリチバに一年住んだ身の感想としては、
    「褒めて褒めて褒めちぎりすぎ」である。
    しかし、そこまで褒めるのはどうかと思いつつも、大変細かい点まで調べ分析の材料としており、納得できる部分も多い。
    また、街は移り行くから、いつの時代の街のことを語っているのかも重要なのであろう。

    クリチバは、著者が言うとおり、完璧な街ではない。
    というか、この本より受ける印象よりもずっと多くの問題を抱えた街であると思う。
    日本の都市のほうが住みやすいと感じた点も数え切れない。

    しかし、日本の都市が見習う点も間違いなく数多くある。
    予算の少なさや環境に課題があってもアイディアでまかなう姿勢、
    人々の使いやすさ考えた街づくり、
    いつでもたくさんの自然と触れ合える街のビジョン、
    複数の課題を同時に改善するための効果的な取り組みのアイディア、
    伝統的建造物や景観への意識などである。

    確かにクリチバ市民には、市に誇りを持ち、
    市行政を信頼している人が多いと感じた。
    (もちろん様々な問題があるが、他の街と比べて)

    日本の公共交通機関は確かに素晴らしいが、
    文中にもあったとおり、緑もほとんどなく看板でごったがえすごちゃごちゃした東京の街並みを見るとうんざりすることもあるし、
    行政と信頼関係を築けている気もしない。

    世界中の都市が、互いの良いところをきちんと取り入れ、人々暮らしをよくしていけるよう、
    このような都市研究がさらに発展し、政策に反映されてほしいと感じた。

  • クリチバはサイコーである.

    ファスト風土化の関係などで,
    都市の「生」「死」などについて議論していた.

    都市をゼロから作るというのは,住環境が記号系として人間により漸増的に構築されていくという現実を考慮するとナンセンスだ.
    「都市計画にはロクなもんがない.」

    みたいな事を言っていると,

    都市計画の数少ない成功事例として,このクリチバが挙げられました.

    ヒューマンスケール,中心市街地の活性化,コミュニティの維持

    など,日本の都市が過去に持っていながら,その価値を明確に認識できなかったが為に,アメリカ志向,
    近視眼的な経済効果志向の中で失ってしまったものを,信念深く認識し続け,都市計画として「保全」するのではなく,「創造」していった都市,
    クリチバ.

    人間の活動に逆らって直接的に制御するのではなく,
    その活動に逆らわない有機的なルールを形成することで自己組織的な都市形成をすすめる周縁制御.

    いや,すばらしい.

    21世紀のシステム科学はこうあるべきだね.と思うのでした.

    ただし,近年はクリチバにも郊外店舗がどんどん出展しているらしく,そのへんは心配だと著者は言及しておりました.

    クリチバいってみたいです.
    ブラジルは遠いので,そうそう行けませんが・・・.

  • 先生も都市計画の分野に携わる人にとって非常に重要だとお話されていた。地球の裏側にあるブラジルの街の再生の成功事例の本。

  • ブラジルの都市クリチバは、環境政策、交通政策、土地利用政策などにおいて、世界でも有数の成功例として評価されている。それらの各施策が、どのような背景でどう行われてきたか、本書では詳細に論述されている。特筆すべきは、ジャイメ・レルネル元市長の強力なリーダーシップと、政策実行までのスピードの早さである。また、クリチバ市の独立行政法人である都市計画シンクタンク「イプキ」も重要な役割を果たしている。目からウロコが落ちるような施策も数多く紹介されているが、これらについては実際に本書を手に取って確認されたい。クリチバは必ずしも理想的な都市ではないが、都市計画の施策や実行力に関して、日本の各都市も参考にできる面が数多くあると感じる。都市計画について学んでいる、または興味のある学生の皆さんには、一読をぜひともお薦めしたい。
    (2012ラーニング・アドバイザー/シス情SATO)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1208131&lang=ja&charset=utf8

  • 環境都市として世界に名高いブラジル・パラナ州クリチーバ市。
    33歳で市長に就任したレルネル市長の強いリーダーシップのもと、成長を続けます。

    33歳で市長というのにも驚きですが、その施策の数々が圧巻です。

    これを読むと日本のまちづくりに対して一種の諦観のような気持ちを抱きます。
    人間都市とは車や建物より人間を大切にする、『都市の主役は人』だと断言するレルネル市長の強い信念の現れです。

    クリチーバの方がお金があるなんてことはありません。
    お金はない代わりに知恵を出しています。

  • 世界のなかでも特に良い都市計画、良いリーダー、良い結果を残しかつ現在進行形で維持するブラジルの都市クリチバについて取り上げた本。
    あくまで例でしかないんだけどねー。

  • 分類=都市計画(ブラジル)、まちづくり。04年4月。

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著者プロフィール

服部圭郎:龍谷大学政策学部教授。三菱総合研究所主任研究員、明治学院大学経済学部教授、ドルトムント工科大学客員教授などを歴任し、2018年4月より現職。専門は都市計画、都市政策、コミュニティ・デザイン、フィールドスタディ。著書に『若者のためのまちづくり』、『サステイナブルな未来をデザインする知恵』など。

「2018年 『BIOCITY ビオシティ 74号 エコロジカル・デモクラシーのデザイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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