タクティカル・アーバニズム: 小さなアクションから都市を大きく変える

  • 学芸出版社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761527693

作品紹介・あらすじ

個人が都市を変えるアクションを起こす時、何から始めればよいのか。都市にインパクトを与え変化が定着するには何が必要なのか。本書は、小さなアクションが拡散し、制度を変え、手法として普及し、社会に定着するアプローチを解説。アメリカと日本の都市の現実に介入し、アップデートしてきた「戦術」を解読、実装しよう。

感想・レビュー・書評

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  • 2023.05.21
    仕事で道路活用などの社会実験を企画することになり、早速読了。

    多くの事例が掲載されていることから、各事例の成功した点や改善点を学ぶことができた。
    また、タクティカルアーバニズムの出自がまとめられていて勉強になった。アメリカでは、タクティカルアーバニズムはニューアーバニズムの都市像の具現化のための手段であるのに対して、日本では大きな方向性やビジョンが支配的でないという状況。
    一方で、ビジョンを持たないタクティカルアーバニズムが住民に都市の自治意識を取り戻すきっかけになっている。

    最近は多くの都市で行われる公共空間活用の実験。都市の風景も同じようになってきているという危機感を抱く。他の地域と差別化するには、その地域らしさが滲み出る必要がある。そうなると、長期的なビジョンやエリアブランディングが必要であり、その手綱を握ることが専門家の役目かもしれない。

    今後、何度もこの本に立ち返るだろう。

  • これからのまちづくりは、日常に溶け込んだ住民の住民による住民のためのまちづくりだと思う。なんとなくしか読んでないが、それを実現可能にしていくのがタクティカルアーバニズムだと感じた。

    ただ、「社会的弱者を生み出す社会実験になっていないか?」ということがソーシャルワーカーを目指す者として気になる。自分はそういった視点からもっとまちづくりをみてみたい。

  • タクティカルアーバニズムに関する事例紹介など。

  • ・P16:タクティカル・アーバニズムとは[私見:要はITにおけるアジャイル]
    タクティカル・アーバニズムは「"意図的"に長期的な変化を触媒する、短期的で低コストかつ拡大可能なプロジェクトを用いたコミュニティ形成のアプローチ」と定義される。

    典型的な形としては、「長期的で大きな投資」(所用5〜10年)を行う前に、「短期的で費用のかからないイベント(あるいはデモンストレーション)」(1日〜1ヶ月)、「実験」(1ヶ月〜1年)、「暫定的デザイン」(1〜5年)と、段階的に次のスケールへと進んでいく。この反復的なアプローチが、タクティカル・アーバニズムの特徴である。

  • 自分のまちを自分たちで作っていく取り組みである「タクティカル・アーバニズム」に可能性を感じ、手にとった本。

    結果、やはり読者の違いによって読後感は異なるのだろうなと想像します。
    まず、これから都市に立ち向かっていこうという方に対しては、その基本的な考え方と、モチベーションを高めてくれるキラキラ事例を紹介してくれています。
    「タクティカル・アーバニズム」概念について知りたい研究者・学生に対しては、都市計画思想史における立ち位置や、日本における位相が紹介されています。

    ただ、この手の他の本も同様ですが、事例や取り組みのキラキラ感がやはり強調されるので、各取り組みの裏にある試行錯誤や泥臭い政治的駆け引き、個人的な葛藤などは当然触れれていません。
    多くが、「〜〜〜の背景から、〜〜のような取り組みを開始し、〜〜〜のような街の変化が起きた」という程度の表現にまとめられます。

    この書籍に勇気を得て、実際にまちに飛び込んでいこうとする方々のニーズからすると少しギャップがあるような気もします。
    まあそれでも、チャレンジなくしては何も変化はないのでしょうが。

  • 東2法経図・6F開架:518.8A/I99t//K

  • タクティカルアーバニズム

    定義
     意図的に長期的な変化を触媒にする
     短期的で低コストかつ拡大可能なプロジェクトを用いた
     コミュニティ形成のアプローチ

    効能
    ・実験で人を巻き込む
    ・失敗をたくさん経験できる
    ・経済と社会により早く便益をもたらす
    ・不動産価値の上昇、幸福度の向上、
    ・パブリックスペースにおけるアクティビティの増加

    トップダウンとボトムアップを往還する


    視点の整理

    視点1:ニューアーバニズム
    ・ニューアーバニズムはアメリカの過度な自動車依存に対する思潮・実践の運動
    ・主なものとしてTOD(公共交通志向型)TND(近隣住区型)がある
    ・日本は過度な自動車依存状況にはないこともあり、同様の目標増はあいまい
    ・デザインシャレットは絵を描きタクティカルアーバニズムは実装をアウトプット
    ・どちらもアメリカではニューアーバニズムの実践の一部
    ・日本では参加の多様な在り方によるワークショップが発達
    ・街路が中心の海外事例に対して、日本は空き家や空き地が変化の可能性を持つ
    ・地域が独自に実装する日本型タクティカルアーバニズムはビジョンとなるか
     
    視点2:プレイスメイキング
    ・定義
     コミュニティの中心として
     パブリックスペースを再考し、改革するために
     人々が集まって描く共通の理念
    ・戦略、戦術、クリエイティブを土台として
     空間形態、土地利用や機能、社会的機会を創造し
     質の高いプレイスを実現する
    ・プレイスメイキングの理念と
     タクティカルアーバニズムの手法が
     両輪で質の高いプレイスを実現する

    視点3:都市の物的環境のリデザイン
    ・成長時代の計画を成熟時代の社会・経済・環境に応答してリデザイン
    ・構想→計画→規制・誘導・事業の従来モデルでは間に合わない
    ・したがって街区単位の実験的なアプローチで都市の物的環境のリデザインが必要

    視点4:都市の手続き的計画論
    ・4つのプランニングモデル
     ・技術官僚モデル(合理的):行政部局
     ・政治的影響モデル(漸進的):首長・議員
     ・社会運動モデル(擁護的):市民団体
     ・協働モデル(対話型):上記を包含する多様なステークホルダー
    ・タクティカルアーバニズムはどのモデルに対しても手法として活用可能

    視点5:実験やアクション
    ・実験やアクションを行う際にはロングタームチェンジを意識し
     政策に対する接続でステークホルダーの共有価値を高める。

    視点6:建築家の考える都市
    ・建築をひらく(ビルディングタイプで用途限定しない)
    ・空間から時間へ、つくるから使うへ
    ・まちにいて、視覚以外の情報を取り込む

    視点7:建築家によるまちづくりの実践
    ・まちを使う小さな主体の動きをつくる
    ・DIY感覚でまちをカスタマイズする
    ・まちの風景を連続的にとらえる
     

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著者プロフィール

1984年、北海道札幌市生まれ。日本大学理工学部建築学科准教授、一般社団法人ソトノバ共同代表理事、一般社団法人エリアマネジメント・ラボ共同代表理事、PlacemakingX日本リーダー。専門は都市計画、都市デザイン、都市経営、エリアマネジメント、パブリックスペース、タクティカル・アーバニズム、プレイスメイキング、ウォーカブルシティなどの研究・教育・実践・情報発信に関わる。
編著=『タクティカル・アーバニズム: 小さなアクションから都市を大きく変える』、『エリアマネジメント・ケースメソッド: 官民連携による地域経営の教科書』(ともに学芸出版社、2021年)、『楽しい公共空間をつくるレシピ プロジェクトを成功に導く66の手法』(ユウブックス、2020年)など。プロフィール・詳細はこちら。http://ruiizumiyama.jp/

「2023年 『タクティカル・アーバニズム・ガイド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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